アダストリアとサンリオが語るファン作りを促進するための“メタ施策”+メタバースの可能性とは?
メタバース上で関連アイテムの販売、リアルの人間とメタバース上のアバターを組み合わせたライブコマースの配信などを手がけるアダストリアと、メタバース上でファンイベントを精力的に展開し、バーチャル空間での期間限定イベントなども手がけるサンリオが対談。アダストリアの担当者が、サンリオのメタバース空間での取り組みを聞いた。
サンリオはなぜメタバースに進出?
アダストリア 島田淳史氏(以下、島田氏):サンリオさんのメタバースの取り組みについて教えてください。
サンリオ 町田雄史氏(以下、町田氏):サンリオは2021年から、VRメタバースイベント「SANRIO Virtual Festival in Sanrio Puroland (サンリオバーチャルフェスティバル イン サンリオピューロランド)」を開催しています。バーチャル上に出現させたサンリオピューロランド内にアーティストやサンリオのキャラクターが出演し、音楽ライブパフォーマンスを行うイベントです。参加者はVR上のアバターでログインし、観覧することができます。
島田氏:参加者同士のコミュニケーションの場にもなっているそうですね。
町田氏:その通りです。クリエイターやキャラクターに出会う機会になるのはもちろん、サンリオファン同士の交流、コミュニティ形成のきっかけにもなっています。「SANRIO Virtual Festival in Sanrio Puroland の」の発起人となりましたが、立ち上げ当時の自分はVR初心者。手探りで挑戦してきました。
島田氏:サンリオさんはリアルの場で多くのファンを形成してきました。なぜバーチャル空間への参入を決めたのでしょうか。
町田氏:「新たな出会いやファンコミュニティ形成」のほか、ファンの皆さまに「圧倒的VR体験」を提供するためです。音楽フェスティバルで「バーチャルならでは」の強みを生かすという視点の時、ファンに一番驚いてもらえることはどのようなことだと思いますか? 私は「目の前にアーティストがいること」だと思いました。その思いで、目の前に憧れのアーティストが現れるという感動をファンに味わってもらうことに挑戦しました。
サンリオのVRメタバースイベント実施実績+次回開催
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サンリオがめざすメタバースの世界観とは
島田氏:アダストリアのメタバース事業は、仮想空間における①ブランドアイテムのメタバース化 ②イベントの開催 ③メタバースにおける制作受託 ④企業アライアンス――の4軸で収益化を図っています。サンリオさんはいかがでしょうか。
町田氏:仮想空間にワールドを作り、ユーザーに訪れてもらう「訪問型」ではなく、仮想空間でイベントやライブなどを実施する「コンテンツ集約型」をめざしています。コンテンツは、クリエイターとファン、ファン同士……というように、いずれもコミュニケーションが土壌にあります。メタバース上なら、日本中、いや、世界中どこにいても遠くから参加できて、コミュニケーションがとれるという体験ができることは大きな強みです。
たとえば、メタバース上での交流イベントなどマネタイズにつなげることができるコンテンツはいろいろと考えられます。メタバース空間とアバター同士のコミュニケーションは相性が良いので、今後はいろいろな文脈で新たな体験価値をユーザーに届けることができると思っています。
“リアルの補完、代替”ではない、メタバースならでの価値提供にこだわり
島田氏:バーチャルはもはや“リアルの場の代替品”ではなく、バーチャルならではの価値提供をできる場ですよね。アダストリアもメタバースに参入する際、従来のEC事業と同じようにメタバース空間で商品を販売するだけではなく、体験価値を提供することにも重きを置いてきました。
町田氏:バーチャルならではの可能性、良さと言えるのは、
- 「バーチャルならでは」「リアルならでは」の良さがあること
- クリエイターたちとの出会いを創出できること
- ファン同士がコミュニケーションできる場を提供できること
だと感じています。リアルとバーチャルが両方あることで、新しい付加価値を作ることができるのです。
たとえば、サンリオピューロランドのステージをメタバース上のステージにつないだショー「Nakayoku Connect(ナカヨクコネクト)」では、リアルとメタバースでショーを同時開催し、一つのショーとしてお届けしました。キャラクターたちがリアルとバーチャルのどちらでもパフォーマンスを実施し、ハローキティたちがリアルのサンリオピューロランドで歌唱パフォーマンスをしている様子をバーチャルの世界からも見られる――といった仕組みです。
島田氏:メタバースとリアルが別々ではなく、地続きの流れを表現できるというのは本当にすごいです。
「SANRIO Virtual Festival」で実施した音楽ライブは、私もユーザーの1人として参加しました。VRならではの映像表現に圧倒されました。鳥肌が立ったのを覚えています。
町田氏:バーチャルでの表現は、リアルよりもダイナミックさ、派手さを追求できます。それもバーチャルならではと言えるかもしれません。
VRならではの演出でファンを楽しませる
リアルとメタバースを地続きに楽しむ仕掛け
島田氏:メタバースとリアルをつなぎこみ、双方を楽しんでもらうという考え方にはとても賛成です。アダストリアでは、メタバースのアバターとリアルの自分と同じ洋服でファッションを楽しむユーザーが増えています。「自分の3DCGアバターに着せた洋服がかわいくて気に入ったので、同じデザインの服をリアルでも買ってみた」という嬉しい投稿をSNSで見かけています。2023年9月には、メタバース上のアバターを組み合わせたライブコマースの取り組みに挑戦しました。
アダストリアによる、バーとリアルと垣根をつなぐライブコマースの取り組みはこちらからチェック! |
メタバース世界からファンを“逆輸入”――。新たなファン作りの形とは
島田氏:サンリオさんでも同じように、「VRメタバースイベントに参加したことをきっかけにファンになり、サンリオピューロランドを初めて訪れた」という方が増えているのではないかと想像しています。いかがでしょうか。
町田氏:メタバースをきっかけにリアルでもサンリオピューロランドに足を運んだ方もいます。今までは関心がなかったキャラクターグッズを購入したなど、良い波及効果も感じています。
また、すでにサンリオピューロランドを訪れたことがあるファンの間では、メタバース上に再現したピューロランドの再現性の高さに驚いたという声もあがっています。
島田氏:「ナカヨクコネクト」のように、リアルとバーチャルがコネクトする演出は、今後多くのクリエイターや事業者が取り組むようになるのではないでしょうか。その礎をサンリオさんが築いている印象です。
町田氏:「リアルの自分の世界ではない、アバターの自分だからこそ、周囲の目を気にすることなくステージ上の出演者やキャラクターに声援を送れる」という方もいます。リアルとバーチャルを別々と捉えるのではなく、楽しむ場所をファンが選べる環境を提供していきたいです。
2024年2月19日~3月17日に開催予定のメタバースイベント