
Amazonが他社ECサイトでの商品購入を支援! 生成AIを活用した新たな機能「Buy for Me」とは?
Amazonは、新たな生成AI活用ツール「Buy for Me」の試験運用を開始しました。それは、AIエージェントによって消費者がAmazonのサイト内で他社のECサイトから直接商品を購入できるようにするツールです。現在、一部の顧客に限定してこのツールを提供していますが、今後拡大していく予定です。
他社ECの商品もAmazonから購入できる新機能
Amazonは、ECの利用をさらに促進するために人工知能の活用を推進。「Buy for Me」と呼ぶ新しいAI搭載機能の試験導入を開始しました。
Amazonは「この機能を使えば、Amazonの販売サイト内で他のブランドのECサイトから直接商品を購入できる」とニュースリリースで公表。Amazonショッピング担当ディレクターのオリバー・メッセンジャー氏はこう説明します。
Amazonは常に、お客さまにとってより便利なショッピング方法を提供するために模索しています。現在Amazonのストアで販売していない商品を、お客さまが他社のECサイトで素早く簡単に見つけて購入できるように「Buy for Me」を開発しました。(メッセンジャー氏)
Amazonによると、iOSまたはAndroidアプリを使うユーザーは、検索結果に表示されるサードパーティブランドの商品一覧をチェックできるようになります。「Buy for Me」は消費者をサードパーティのECサイトに誘導するのではなく、顧客の代わりに外部のECサイトから購入します。
この仕組みはAIエージェントによって実現しています。AIエージェントは、最小限の情報入力で消費者が求めるアクションをする生成AIの一種です。

「Buy for Me」は米国の一部ユーザーを対象に試験運用していますが、今後は提供を拡大する計画です。現段階では、限られた数のブランドストアと商品で試験をしています。
Amazon内のリンクから購入可能な「Buy for Me」の仕組み
「Buy for Me」の導入で、Amazonは自社の販売サイトで取り扱っていない商品購入をサポートする取り組みを広げようとしています。
お客さまにとって使い慣れたAmazonのショッピング環境内で、他のブランドからも買い物できるようにすることを目標としています。同時に、「Buy for Me」は、Amazonに出品していないブランドに露出とコンバージョンアップの機会をもたらします。(メッセンジャー氏)
Buy for Meの仕組みは次の通りです。
ユーザーがAmazonのアプリを使用すると、検索結果に「ブランドサイトから直接購入」というセクションを表示。このエリアには、厳選されたサードパーティブランドのECサイトの商品を表示します。Amazonのニュースリリースによると、一部の商品に「Buy for Me」リンクを表示しています。
ユーザーが「Buy for Me」と表示された商品をタップすると、Amazonアプリ内の商品詳細ページに移動。Amazonによると、このページはAmazonの通常の商品ページと同様に、画像、価格、説明などの要素を含んでいます。「Buy for Me」ボタンをタップすると、チェックアウトページに移動し、配送の詳細、税金、および支払い方法を確認できます。

ここから先は、AmazonのAIエージェントが購入完了までのアクションを引き継ぎます。AIエージェントが、名前、住所、支払い詳細など暗号化した顧客データを使用して取引を完了させるます。Amazonはニュースリリースで次のように説明しています。
お客さまは、自分に代わって行動するAIエージェントをコントロールできます。ただし、お客さまが他社のECサイトで買い物した、Amazonに無関係な注文や過去の注文を確認することはできません。
ブランド側は、ブランドの認知度、顧客エンゲージメント、および売上高の増加が見込める「Buy for Me」に自社ブランドが参加するかどうかを選択できます。
Amazonによると、「Buy for Me」を通じた購入が完了すると、顧客にはブランドから直接、確認メールが送られます。顧客はAmazonアプリ内の「Buy for Me」注文タブで注文した商品の状況を追跡できるそうです。
外部のECサイトで注文した商品について、フルフィルメント、配送、返品、カスタマーサービスなどはすべて、Amazonではなくブランド側のECサイトで処理されます。
また、Amazonは「Buy for Me」ボタンを通じて行われた購入について、ブランド側から手数料は受け取っていないと発表しています。
Amazon独自開発のAIモデルが新機能に貢献
「Buy for Me機能」は、Amazonや他のAI企業が提供する基盤モデル(人工知能モデル)を開発者が使えるようにするマネージドサービス「Amazon Bedrock」上で稼働しています。
基盤モデルのうち、Amazonが開発した「Amazon Nova」、Anthropicが開発した対話型生成AI「Claude」という2つのモデルが、「Buy for Me」のサービスの根幹となるAIエージェント機能を実現しています。
Amazonのアンディ・ジャシーCEOは、2025年2月に実施した第4四半期(2024年10-12月期)の決算説明会で、Amazon独自の生成AIモデル「Amazon Nova」を開発したと発表しました。
ジャシー氏は「『Amazon Nova』は、他社のAIモデルと性能で競い合いながら、より速い処理速度と低コストを実現するように設計しました。また、『Amazon Nova』の価格は、『Amazon Bedrock』を通じて利用できる他の生成AI機能と比べて、およそ75%安い」と説明しています。
ジャシー氏によると、Amazonのクラウドサービス「AWS」を利用している顧客のうち、何千もの顧客がすでに「Amazon Nova」を使用。たとえば、次の企業が『Amazon Nova』を導入しています。
- Deloitte(米国の大手コンサルティング企業)
- 電通
- Fortinet(米国のサイバーセキュリティサービス企業)
- Palantir(米国のデータ分析企業)
- Robinhood(証券取引アプリを提供する米国フィンテック企業)
- SAP(ドイツの大手ソフトウェア開発企業)
- Trellix(米国のセキュリティベンダー)
同時に、「Amazon Bedrock」自体も勢いを増し続けています。「このプラットフォームは急速に成長しており、お客さまに強く響いています」(ジャシー氏)
AmazonによるAI活用推進の最新状況
Amazonは、Webブラウザ内でアクションを実行するように設計できるAIエージェントモデル「Amazon Nova Act」を発表しています。「Amazon Nova Act」は、ECおよび他のサイト全体で、商品を検索したり、ショッピングカートに入れたり、チェックアウトを完了したり、商品の支払いに関する請求情報を更新したりできます。
「Amazon Nova Act」は現在、「Buy for Me」には適用されていませんが、AIに対するAmazonの取り組みの1つです。
このほか、3月には消費者の好みに基づいて商品をお薦めする商品発見ツール「Amazon Interests」をローンチしました。
また、消費者向けに商品の情報や比較検討などをサポートする生成AIアシスタント「Amazon Rufus」、Amazonマーケットプレイスの販売事業者がビジネスを管理・拡大するのを支援するように設計した生成AIアシスタント「Project Amelia」も公表しています。

Amazonはまた、生成AIを組み込んだ音声アシスタントのアップグレード版である「Alexa+」を展開。これには、EC機能が搭載されています。
