竹内 謙礼[執筆] 7:00

「楽天市場」の店舗をはじめ、約5000社以上のネットショップを支援する日本ECサービスの清水将平氏との共著『楽天市場 最強攻略ガイド~売れるネットショップの新常識、ECの達人が教えます~』(技術評論社)を2025年4月23日に出版した。冒頭から裏話になって恐縮だが、本書の完成まで1年6か月かかった。執筆が早い方ではあるが、この本には通常の6倍以上の時間と労力を費やした。

書籍が完成するまでに日数を要した理由とは

時間がかかった理由は、元ネットショップ運営者の私と「楽天市場」の元ECCの清水氏で、考え方に大きな乖離があったからだ。

ネットショップ側の人間は、取り扱っている商品と「楽天市場」のルールのなかでしか動いた経験がない。必然的に「できること」しか模索しなくなり、その影響で自分の常識の枠から飛び出したマーケティングには否定的になってしまうところがあった。

一方、数多くの「楽天市場」出店店舗を支援してきた清水氏は、「やれること」の提案の幅が圧倒的に広い。「楽天市場」の“中の人”を経験した人は、売り上げを伸ばすロジックを俯瞰で見られる強みがある

しかし、そのアドバイスはネットショップ側からみれば「それって本当に実現可能なんですか?」と思うことが多く、本書の執筆の際はお互いの意見が度々ぶつかることがあった。

「やれること」すべてに挑戦することが必要

結論から先にいえば、清水氏の考え方のほうがネットショップ運営においては正しかった。「できること」の延長線上に、未来と成長はない。不可能でもいいから、まずはすべての「やれること」に挑戦し、そこからネットショップ運営の正解を見つけ出していかなければ、今の「楽天市場」で勝ち抜くことはできない

元ECCの清水氏と共著で本が書けたことは、元ネットショップ運営者の私にとって大きなスキルアップとなった。Eコマースのノウハウをすべてマスターしていたと思っていたのは大きな誤解であり、ゼロベースで「楽天市場」における売り上げの伸ばし方を学べたことは、コンサルタントとしての視野を広げる良い機会にもなった。

本書は「楽天市場」内のSEOや広告運用、「楽天スーパーセール」の対策のほか、LINEやクーポンの活用法など、「楽天市場」のあらゆるマーケティング戦略を1冊にまとめたものである。これから「楽天市場」に出店するネットショップ運営の初心者から20年以上のベテラン店長まで、「必ず新しい学びがある本にしよう」と、2人で渾身の1冊を書き上げた。

「楽天市場」攻略の新しい3つのノウハウとは

今回、本書の執筆を通じて学びになった点を3つ抜粋し、「楽天市場」の新しい攻略ノウハウについて解説したいと思う。

商品ページは"売る"のではなく"育てる"もの

1つは「商品ページは育てるもの」という考え方である。今まで「楽天市場」の商品ページを制作する際は「検索や広告からいかに集客し、お客にどうやって売るか」しか考えていなかった。しかし本書の執筆を通じて、商品ページは“売る”のではなく“育てる”ものだという新しい視点を学んだ。

自店のカテゴリで売れている商品ページを徹底的に考察し、「RMS(Rakuten Merchant Server:店舗運営システム)」で流入キーワードを継続的に検証する。レビューをコツコツと集めてお客の信頼を勝ち取る商品ページを作り、「楽天市場」内のSEOやランキングで少しずつ露出を高めていく。これらの地道な作業を積み重ねて、競合のネットショップよりも確実に売れる商品ページに育て上げることが、「楽天市場」のネットショップ運営には必要不可欠なのである。

楽天市場 最強攻略ガイド 商品ページは売るものではなく育てるもの
時間と手間をかけて確実に売れる商品ページに育てていくことが大事

「楽天市場」のネットショップ運営について、清水氏は「商品ページの育成ゲームである」とユニークな言葉で表現している。今の「楽天市場」の攻略に裏ワザは存在しておらず、“最強”の商品ページを作るために、地道な作業を続けられる持続力が求められるのである。

商品を絞り込んで極めることが重要

2つ目の気づきは、ネットショップ運営はマーケティング戦略よりも「商品力」が圧倒的に大事だという点である。

「楽天市場」には広告、セール、クーポンなど、売り上げを伸ばすためのツールが多数存在している。しかし、これらの販促手段をすべて使い切るためには、莫大なコストと時間がかかる。

数年前のように、店長とスタッフ数人で回せるような仕事量ではない。セールの度に広告やクーポンなどを仕込み、見込み客にLINEでメッセージを送り、競合店舗の動きをチェックしながら、物流などにも目を配らせなくてはいけない。

高機能な受注管理ソフトやマーケティングツールを導入したとしても、人手と予算に余裕がある大規模運営のネットショップに、中小規模の店舗がマーケティング戦略で勝つことは不可能に近い。

「楽天市場」で勝ち抜くためには、商品を徹底的に絞り込んで、1つひとつを極めることである。小規模のネットショップがロングテールでたくさんの商品を取り扱っても、人的リソースが足りないので各商品ページのクオリティを上げることができない。それよりも、絶対に売れる一撃必殺の商品に絞り込んで、集中して広告やSEOを施したほうが、一点突破の勝ち筋が見えてくる

楽天市場 最強攻略ガイド 売れる商品を絞り込んで集中して広告やSEOを行った方が勝ち筋が見えてくる
コロナ禍以降は、商品力を重視したマーケティング戦略の方が売りやすくなった

清水氏は、商品力の目安として「何もしなくても、月に100万円売れる商品」と語っている。月に5万円しか売れないような商品にポイントを還元したりセールで安く売ったりしたとしても、それは「安くしたから『売れた』」だけであって「売れる」商品に昇華したわけではない

お客が自然検索だけで商品を見つけてくれて、ライバル店舗も不在で価格にも納得し、放っておいても勝手に売れてくれるような商品でなければ、その後に広告やクーポンを使っても、加速をかけて売り上げを伸ばすことはできないのである。

「楽天市場」はSNS、動画と相性が悪い

3つ目の気づきのポイントは、「SNSと動画は『楽天市場』と相性が悪い」という点である。実はこの「動画とSNSの活用法」に関しては、当初10ページほどを割いて解説する予定だった。しかし、書けば書くほど「楽天市場」と相性が悪い売り方だということがわかり、編集者と話し合った末、まるまる削除することにした。

相性の悪い理由は、動画とSNSを活用した販売方法には非常に時間と手間がかかるからだ。InstagramやYouTubeのなかから自社のコンテンツを見つけてもらい、それを見続けてもらうことで商品の理解を深め、さらに「欲しい」タイミングに合わせて買ってもらえるまでには、最低でも2~3年の月日がかかる。

それまでの間、コンテンツを制作する手間、時間、外注費、スタッフのスキルアップなどに莫大なリソースをかけることは、中小規模のネットショップにとって現実的な売り方とは言い難い。

一方「楽天市場」は、お客が「買いたい」と思った瞬間に商品ページに飛び込んできてくれるので、見つけてから買ってもらえるまで、最短の手間と時間で対応することができる。つまり、お客に「買いたい」と思わせなければいけないSNSや動画よりも、お客が最初から「買いたい」と思って飛び込んできてくれる「楽天市場」の施策のほうが、圧倒的に有利な売り方になるのである。

楽天市場 最強攻略ガイド お客が「欲しい」タイミングで「楽天市場」の商品ページにアクセスするので効率良く販売できる
お客が「欲しい」タイミングで「楽天市場」の商品ページにアクセスするので、効率良く販売できる

もちろん、SNSや動画を活用して商品を売っているネットショップもある。InstagramやYouTubeに検索キーワードを入力し、買う気満々で流入してくるお客も存在している。しかし、これらの成功事例の店舗は、集客やコンテンツ作りに莫大な時間とコストをかけており、決して「楽天市場」の広告費やセールでの安売りよりもコスパの良い売り方をしているわけではない

SNSや動画を活用した売り方は、多くのネットショップ運営者が興味を持つマーケティング手法である。しかし、本書でその点に多くを触れなかったということは、それだけ今の「楽天市場」のネットショップ運営では、相性の良い売り方ではないということを理解してほしい。

ネットショップ運営初心者もベテランも学びが得られる一冊に

今回、共著という形で「楽天市場」の本を執筆したのは、自分自身が持っている「楽天市場」のノウハウの総点検という意味合いもあった。

Eコマース業界ではそれなりに最前線を突っ走っているつもりだったが、清水氏と意見を戦わせたことで、自分の思い込みだったり勘違いしていたりすることが多々あることに気づかされた。

そういう意味では、売り上げの伸び悩みに頭を抱えているベテランのネットショップ運営者にとって、新しい発見のあるビジネス書になるのではないだろうか。

楽天市場 最強攻略ガイド ~売れるネットショップの新常識、ECの達人が教えます~

楽天市場 最強攻略ガイド ~売れるネットショップの新常識、ECの達人が教えます~

竹内謙礼 /清水将平 著
技術評論社 刊
価格 2,400円+税

「楽天市場に出店したいけど、売れるかどうか不安だ」「楽天市場にお店を出したけど、思うように売れない」「何年も楽天市場に出店しているけど、売上が少しずつ落ちている」といった悩み・課題を解消するプロの知識・ノウハウを解説。EC運営初心者、ベテラン運営者も新たな発見につながる一冊となっている。

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