杉崎 健史 2015/4/9 10:00

スマートフォンが台頭してから、生活者の消費行動が大きく変化してきています。それに伴い、ECのマーケティング手法も大きく変化する必要があります。スマートフォンアプリのユーザーに適切にリーチするためには、Apple社の「IDFA」、Google社の「Advertising ID」というターゲティングキーを有効活用することが重要な役割を担いますが(参照記事)、今回はこのIDをどのように管理し、活用していくかという「オーディエンスマネジメント」を紹介します。

よく使われるアプリは全アプリの内、0.0004%〜0.0008%

スマートフォンユーザーの数、アプリの数などを、定量的に見ていきます。

まず、スマートフォンを使う日本のユーザー数は、約5000万人に到達していますが、世界全体で見てみると、第4位です。

また、グローバルでiOS、Androidの両プラットフォーム上にあるスマートフォンアプリは、250万個超。1人あたりの平均アプリインストール数は40〜50個、よく使う平均アプリ数は10〜20個になります

ちなみに、スマートフォンを開いた際に表示されるファーストスクリーン(このファーストスクリーンに設置されるか否かは、アプリ起動率/利用率に大きなインパクトを与えます)に配置できるアプリは、数が決まっています(iPhone6では28個)

デフォルトで設置しているアプリ(ブラウザ、カレンダー、電話、連絡先など)を除くと約20個です。たとえるなら、ファーストスクリーン争奪は、選挙と同義であり、設置できるアプリ数は、国会議員の議席数ですね。デフォルトで設置してあるアプリは、当選確定議席で、その他の議席をユーザーに選んでもらい確保していく――このように置き換えられると思います。

また、いままでPCのユーザー行動は、ブラウザ経由(検索)で目的地であるWebサイトに到達する「一点集中型」でした。しかし、スマートフォン上のユーザー行動は、ブラウザアイコンも、他アプリのアイコンと横一列に並んでいるので、「分散型」となります。そのため、ますますブラウザの利用率が低下していくことが想定されます。

インストールしたユーザーの分類方法「RFM分析」

次は、インストールしたユーザーをどのように分類管理していくか。この方法を解説していきます。

まず、インストールしたユーザーの流入経路を分析する必要があります。流入経路には、オーガニックの自然流入と、広告流入の2つに大別されます。

それをもとに、全インストールされたアプリの流入経路別占有率や、どの流入経路で寸ストールしたユーザーのLTVが高いのか、などを測定します。これらは、トラッキングツールが世の中にいろいろありますので、それらを活用することになります。

しかし、これだけでは不十分で、インストール後のアプリのなかでのユーザー行動をしっかり計測、分析することが重要になります。いわゆる「オーディエンスマネジメント」です。

ここで必要になるのが、Apple社の「IDFA」や、Google社の「Advertising ID」です。そのIDをベースに、アプリ内のユーザー行動を分析します。ここでは、その分析手法の1例である「RFM分析」を紹介します。

イメージは、Recency(最近いつアプリに訪問したのか?)、Frequency(訪問の頻度は?)、Monetary(購入単価はいくらか?)の3軸の立体的な箱を作り、各軸を5分割すると、5×5×5の125個のセグメントに分解できます(5分割の指標に関しては、各企業さまざまですので、適切な指標に基づいての設定が必要です)。

そして、そのセグメントに、IDを振り分けます。そうすると、Recency、Frequency、Monetaryのすべてが高いユーザーが「優良顧客」、Recency、Frequency、Monetaryのすべてが低いユーザーが「非優良顧客」、Recencyが低く、Frequency、Monetaryのが高いユーザーが「離反、離反しそうな顧客」などと、分類することができます。

セグメント毎にパーソナライズしたソリューションを展開

その分類ができると、そのセグメント毎に課題、必要なソリューションが明確になります。そのセグメントのID抽出には、Apple社の「IDFA」、Google社の「Advertising ID」を活用。配信手段には、Facebook、Twitterなどのカスタムオーディエンス配信(アドネットワーク、DSP各社随時拡大中)、Push通知などを活用することになります。

具体的な例は、離反しそうなセグメントに対して、引き止めることを目的とした特別クーポンを提供したり、アクティブなセグメントに対して、アクティブユーザーをもっと増やすことを目的としたお友達紹介キャンペーンを展開したり、インストールした後に再訪問がないセグメントに対して、再訪を促すことを目的としたキャンペーンを展開したりと、広告予算も効率的に活用することができます

データ管理においての留意点

このオーディエンスマネジメントを実現することが、「ユーザーの資産化」、つまり経営安定化の第一歩となります。

さらにオーディエンスデータを蓄積し、システムに機会学習をさせていくことで、ある一定のパターンを認識することもでき、それを将来予測に生かし、データに基づいた意思決定をすることも可能です。

これらのデータは、企業にとって非常に重要なデータとなりますので、外部ツールを活用する際は、プライバシーポリシー、オプトアウト、データの別納、データ利用規約などに十分留意した企業を選定する必要があります。

次回は、EC各社のアプリ戦略の比較と外部データの活用を解説していこうと思います。

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