尼口 友厚 2015/7/15 7:00

以前、ネットコンシェルジェのブログでは、プラスサイズのショップ「AbbeyPost」を紹介した。

今回は同じプラスサイズの洋服を取り扱っているサイトでも、サブスクリプション制を取り入れ、「プラスサイズファッションのNetflix」と呼ばれるサービス「Gwynnie Bee」を取り上げてみたいと思う。

「Gwynnie Bee」では、届いた洋服はサブスクリプションを更新している限り、好きなだけ着ることができるという仕組みを採っている。洋服に飽きたら、同封の返送用郵便袋に洋服を入れて返却し、次のサブスクリプションボックスと交換すればOKだ。

サブスクリプション制を取り入れたファッションECサイト「Gwynnie Bee」
「Gwynnie Bee」のサイトイメージ

このビジネスが立ち上がった背景には、できるだけ多くの衣服と接することで、衣服や体型に対するコンプレックスを和らげ、いろいろな衣服を着る楽しみを見付けて欲しい、という想いがあるようだ。

また友人を紹介し、友人が「Gwynnie Bee」のサブスクリプションに申し込むと、謝礼として25ドルがもらえるシステムなど、利用者を増やすための働きかけも積極的に行う。現在のfacebookの「いいね!」の数は26万人に達している

服を取っ換え引っ換えしてた幼少時代と服に悩む20代を経験して

【この記事のポイント】

  • “ぽっちゃり女子”のコンプレックスをECという販路で解決
  • ほとんどすべてのデザイナーズブランドにサイズチャートを付け、サイズの誤差で迷わせない環境を用意
サブスクリプション制を取り入れたファッションECサイト「Gwynnie Bee」の創設者Christine Hunsicker氏
「Gwynnie Bee」の創設者Christine Hunsicker氏

Gwynnie Beeの創設者はプリンストン大学卒のChristine Hunsicker(以下、ハンシッカー)氏。彼女は大学卒業後は「Right Media」でプロジェクトマネージャーを務め、業績を伸ばして社長になったという経歴を持っている。

なお、「Right Media」はその後、Yahoo! に売却することになり、新しいサービスを始めるのにあたって同氏が考えついたのが「Gwynnie Bee」だったそうだ。

「Gwynnie Bee」立ち上げの背景には、ハンシッカー氏の小さい頃の環境が関係していたという。本人いわく「人より牛の方が多い」ペンシルバニア州の田舎で育ったことが影響しているそうだ

その頃、彼女の家の向かいには叔母さんが住んでいて、裁縫が得意だったことから、ハンシッカー氏といとことの2人分の服を作ってくれていた。毎週月曜日になると叔母さんのうちから洋服の入った箱が届き、なかには奇抜なプリントの服や面白いシルエットの服などいろんな種類のものが、しかも彼女のサイズぴったりの服が入っていたそうだ。

ハンシッカー氏といとこは体型も同じぐらいだったので、互いに洋服を交換し、いろんな種類の服を取っ換え引っ換え着ることもできた。交換に飽きたら中古ショップの店に持っていき、お金に換えた。そしてそのお金で新しい布地を買っては叔母さんに新しい服を作ってもらうという生活を送っていた。

ところが、大学生になると事情が変わってきた。ハンシッカー氏はクラスメイトと同じように流行の服を着たいと思うようになったが、初めて試着室に入った彼女は、そこで致命的な事実に気付く。皆が着ている流行の服が、自分にはサイズが小さくて入らなかったのだ。

それからというもの、ハンシッカー氏は毎日同じようなTシャツにジーンズ、色も地味めの服ばかりを着るようになった。もはや彼女にとってファッションとは昔のように“ワクワクして楽しむ”ものではなくなってしまっていた

そんな悲しい20代を送ったハンシッカー氏は、自分のように太っている人が、「ショッピングをする時のストレスを感じずにファッションを楽しめるようにするにはどうしたらいいか」と考えた洋服を所有せずレンタルにしてみんなでシェアすることで、たくさんの種類を楽しむことができる――登録制プラスサイズの服レンタルサイトを思いついたのだった。

さまざまな体型に合わせたファッションの提案

サブスクリプション制を取り入れたファッションECサイト「Gwynnie Bee」

「プラスサイズファッションのNetflix」と呼ばれる「Gwynnie Bee」では、毎月定額の料金で、デザイナーズブランドの服をレンタルできる

届いた服は登録を更新している限り好きなだけ着用可能で、着ている服に飽きたら洗濯をしないで同封の無料返信用封筒に入れて返却。すると次の洋服がまた郵送されてくるという仕組みだ。

種類もブレザー、カクテルドレス、レザージャケット、タンクトップなど150以上のブランドの豊富なコレクションから選ぶことができる。最初の1か月は無料でキャンセル可能で、いつでもすぐにできる。

利用者はまず無料でアカウントを作り、6つのプランのなかから自分に合ったものを選ぶ。それぞれのプランの違いは一度に何着の服をレンタルできるかにあり、一番人気は、1か月79ドル(約9700円)の会費で一度に3着の服がレンタルできるプランだ。

その他のプランを見てみると、35ドル(約4300円)のプランで1着、59ドル(約7300円)で2着、99ドル(約1万2000円)で5着、129ドル(約1万6000円)で7着、159ドル(約2万円)で10着までレンタル可能となっている。

交換の頻度には限度がないため、気に入った時にずっと手元に置くこともでき、逆に何着も着回すことができる。かなり気に入った洋服であれば、メール連絡すればディスカウント価格で購入することも可能だ。

服を選ぶときに困る原因として、デザイナーやブランドによって若干サイズが異なる点があげられる。しかし「Gwynnie Bee」では、ほとんどすべてのデザイナーズブランドにサイズチャートが付いているため、サイズの誤差に戸惑うこともない

ファッションECサイト「Gwynnie Bee」ではそれぞれの体型に合った服の着こなし方のレクチャーなどを行う
それぞれの体型に合った服の着こなし方のレクチャーなどを行う

また、「Gwynnie Bee」では体型を6つのスタイルに分け、それぞれの体型に合った服の着こなし方のレクチャーなども行っている。バスト、ウェスト、ヒップの大きさがほぼ同じ大きさの「円柱型」、ウェスト部分の細い「砂時計型」、5.3フィート(約162cm)以下の「ショート」、5.9フィート(約180cm)以上の「トール」、肩幅が広く腰の狭い「逆三角形」、逆にお尻が大きく肩幅が小さめの「三角形」など。

たとえば、卵形の体型の場合はVネックの服を用いることで体の真ん中が膨らんでいるという印象を打ち消すし、セクシーさを加味。垂直線の入ったパターンなど、縦に長く見せる効果のある服を着るといったレクチャーだ。

ファッションECサイト「Gwynnie Bee」ではそれぞれの体型に合った服の着こなし方のレクチャーなどを行う

同サイトではただ体型を分類するのみでなく、体型別に衣服を選べるページも設けている。プラスサイズといっても体型によって似合う服、コンプレックスを解消できる服は変わってくる。そこで、できるだけそれぞれの悩みに合致するファッションを提案しているのだ。

ファッションECサイト「Gwynnie Bee」ではそれぞれの悩みに合致するファッションを提案する
それぞれの悩みに合致するファッションを提案する

コンプレックスがあるからこそ気軽に服を試せる環境を

「Gwynnie Bee」のもう1つの魅力は、サブスクリプションという仕組みにあるだろう。プラスサイズの女性は普通の体格の女性と比べ、3倍もオンライショップを利用している、という調査結果があるそうだ。

その背景にはお店では品ぞろえが少なく、試着室で悲しい思いをすることを避ける心理もあるのだろう。

ところが、オンラインでの購入では、メーカーによって少しずつ基準が異なるために発生するサイズのズレ、着てみたら思ったよりも自分に合わない、などの問題もある。

サイズに不安のあるワンサイズプラスの女性にとっては状況はもっと深刻だろう。しかし、それがレンタルで、気軽にさまざまなデザイン、サイズが試せるというこのシステムなら、そんな悩みも解消されやすいからだ。

シェアリング・サービスの利点は2つあるわ。1つは感情面、そしてもう1つは利便性の面。世のなかにはたくさん着てみたいものがある。でもそれら全部を買うことはできない。いや、買えることができたとしてももったいない。それが、シェアしあえば安い金額でよりたくさんのワードローブを持つことができるのよ。

買わなくちゃダメと考えると、慎重にならざるを得なくなる。「これは私に完璧に似合ってる? これを買う余裕がわたしにある? これはわたしが持っている他の服にあう? ワンシーズンでこれをどれぐらい着ることができる?」ってね。でもレンタルなら私が子どもの頃に体験したように、たくさんの服を取っ換え引っ換え楽しむことができるのよ。

ハンシッカー氏は子どもの頃に洋服を取っ換え引っ換え着れたことで、気軽に試せる喜びを知っていた。同時にファッションの楽しみを諦めなければならない悲しみも知った。この2つの体験があったからこそ、同氏はこのようなサービスを実現することができたのだろう。

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