内山 美枝子 2016/7/25 8:00
この記事は『スマホ白書 2016』(インプレスR&D 刊)の一部を特別に公開しているものです

動画広告とネイティブ広告が主流化し、ターゲット層への絞り込みもシビアに。今後はIoT、位置情報、ビッグデータなども広告手法に取り入れられていく方向。

菅原 健一(Supership株式会社 CMO)

スマートフォン広告市場の成長予測

 株式会社CyberZが株式会社シード・プランニングのデジタル領域の市場・サービス調査機関であるデジタルインファクトと共同で行った調査によると2015年のスマートフォン広告市場は3717億円であったと発表されている。これは2014年の3008億円に比べて123%と急成長を遂げた。2016年の市場予測は4542億円となっており、引き続き大きな成長をすると予測されている(資料2-4-1)。

資料2-4-1 スマートフォン広告市場規模予測2014-2020年
出典:CyberZ

スマートフォン広告の商品別成長予測

 同様に商品別の成長予測を見ていくと2013年に850億円と同程度だった検索連動型広告とディスプレイ広告の広告市場規模が2014年にはディスプレイ広告が大きく成長している。2016年には検索連動型広告が1559億円、ディスプレイ広告が2893億円と予測されている。ディスプレイ広告市場が検索連動型広告のおよそ2倍の規模となり、今後さらにその差は開くと予想されている(資料2-4-2)。

資料2-4-1 スマートフォン広告市場規模予測2014-2020年
出典:CyberZ

スマートフォン広告がデジタル広告のメインに

 企業のデジタルシフトとデータを重視したマーケティングの流れにそって、スマートフォン広告が重視されるようになってきた。PCや他メディアに比べてスマートフォンは個人一人一人が所有するパーソナルデバイスで、常に自分の1m以内にあり24時間365日そばにあるデバイスである。また、このデバイスはプッシュ通知でいつでもユーザーへ情報を通知できる。

 ゲーム機のリッチなコンテンツがスマートフォン専用のゲームに置き換わったのもこの常に近くにあるデバイスでゲームを「やり続ける」ことができるのが大きな要因であるし、ソーシャルメディアのFacebookやTwitterなども日常の出来事や写真などを投稿し、友人の投稿にコメントを返す行為を「やり続ける」ことでユーザーは多くの時間を消費し、サービスに大きく依存している。

 企業もこのように生活者のスマートフォン上での時間利用の長さを十分に理解し、この熱心に活動を行っている場所に広告を出すようになってきている。PCに比べてパーソナルなデバイスであるため、より個人に特化した広告を出すことが可能になり、広告商品もネイティブ広告(詳細は以下で解説)やテレビの代わりになる動画広告、位置情報を活用したものなどが今後本格化すると予想されている。

広告商品のトレンド――ネイティブ広告

 Facebook、Twitter、スマートニュースなどで情報が流れて掲載される箇所をタイムラインやフィードと呼び、それらの間に出す広告をネイティブ広告と呼ぶ。

 ユーザーは情報取得に没頭し、これらアプリのタイムラインをいつも眺めている。この間に自然な形で広告を提供できるようになったのがネイティブ広告である。従来の画像1枚のバナー広告に比べてネイティブ広告はFacebookならFacebookに、スマートニュースならスマートニュースに合わせた形で広告を掲載できるので、ユーザーは情報を取得している最中に同じ形式で広告を情報として読めるようになった。

 もちろん事前にその情報が広告として提供されたものなのか、そうでないかは明示されているのでユーザーはその情報に興味があればクリックをし、より詳細な情報を得られるのである。このようなコンセプトの広告(情報として読める広告)をネイティブ広告と呼ぶ。

 特にフィードの中に入る広告はネイティブ広告の中でもインフィード型ネイティブ広告と分別されて呼ばれる。ネイティブ広告の考え方では、広告をコンテンツとして出すのではなく、コンテンツを広告の領域で出すことを可能としている。そのため、広告主は今までよりも生活者にとって重要なコンテンツを作り、生活者に役立つ情報として認められるようになることで初めて商品を購入してもらえる活動が可能となった。

 大量に広告を見せれば売れるといった従来の量的な取り組みが質的に転換し、役に立つコンテンツ制作に取り組み、それを広告として出すことができるようになったのである。

 従来のバナー広告の課題も、このネイティブ広告への流れを促している。バナー広告の調査で2009年にComScoreが発表したNatural Born Clickers(「生まれつきクリックする人たち」といった意味)では、「84%のユーザーは、1か月の間に一度もバナー広告をクリックしない」「4%のヘビークリッカー(1か月に4回以上バナーをクリックするユーザー)が、バナー広告の全クリックの67%を占めている」といった結果が出ている。

 さらにはグーグルも「各種広告ネットワークのモバイル広告において、意図しないクリックはクリック全体の 50% にも上ると推定されています。広告主様にとってこうした状況は、不自然なクリック率の上昇や広告費用の増加にもつながります。」と述べている 。

 バナー広告はこのようにクリック後の体験が不安で(広告主の主眼も情報提供ではなく、何らかのアクションの強要であったため)、媒体社も目に留める箇所ではなく、クリックしやすい場所への広告掲載を進めた結果、誤ったクリックが過剰に誘発されていた。

 このようなバナー広告の課題を受け、ネイティブ広告はユーザーの情報利用体験を阻害しない広告になっている。

(Supership株式会社 CMO 菅原 健一)

この続きは『スマホ白書2016』

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