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米国の小売事業者は、ビジネスにおける効果が実証されていないAR(拡張現実)やVR(仮想現実)といった派手な技術ではなく、コアビジネスに直結するテクノロジーに投資をしています。

重要なのは「ニーズを先取りし過ぎない」

調査会社のForrester Research社が発表した最新レポート「Hot or Hype-2017年 小売事業者にとって最も重要な技術」によると、小売事業者が2017年度に投じるテクノロジー向け予算は、ビジネスにおける効果が証明されていないARやVRといった技術ではなく、ビジネスに直結する基本的なテクノロジーに使われるようです。

次世代のデジタルソリューションを追求する販売会社が多い中、小売事業者たちは消費者のニーズを先取りし過ぎないように気を付けています

最新レポートの中には、こうした小売事業者による投資の傾向が記載されています。また、小売事業者のデジタルマーケティング担当者は新しい技術のケーススタディROI(投資対効果)を注視しているため、技術面での投資はオムニチャネルパーソナライゼーション分析デジタル店舗への投資がメインになるようです。

たとえば、グローバル展開している事業者の72%は、サイト内での消費体験の改善には「よりパーソナルな消費体験」が有効だと回答。同時に、消費体験をパーソナル化するにはテクノロジーが必要と説明しますが、54%のデジタル担当者はパーソナルな消費体験を実現するための技術が欠けていると答えています

レポート内ではさらに次のようなことが明らかになりました。

  • 68%の小売事業者が、パーソナルな消費体験の提供を最重要事項にあげている
  • 62%の小売事業者が、PCとモバイルの表示内容を消費者ごとにカスタマイズしている
  • 3社に1社がパーソナライゼーションの戦略で足並みがそろっていないと感じている

小売事業者は、デジタル関連のビジネスでどのようにパーソナライゼーションを進めているのか見てみると、75%がサイトのコンテンツを消費者ごとにカスタマイズ55%がプロモーションやお薦め商品をカスタマイズしています。そして、60%がパーソナライゼーションするためのコンテンツ管理ツールを導入53%がメールマーケティングを、51%がタグ管理ツールを使っています

実店舗からWeb、モバイルチャネルへと簡単に横断できること(編集部追記:いわゆるクロスデバイス)で買い物をする消費者が増える中、オンライン事業者はオムニチャネルへの投資も増やしています。

Forrester Research社のレポートでは、79%の成人が「オンラインで予約し、店舗での支払い・受け取り」を利用。「オンラインで購入し、店舗での受け取り」を利用している消費者の74%が、購入商品がいつ店舗で受け取れるのか2時間以内に通知が欲しいと答えています。

EC企業がパーソナライズ技術に投資する理由、ARやAIなどの先端技術に投資しない理由
米国のEC事業者は現段階において、AIやAR、チャットボット、AIへの投資は消極的という

チャットボットやAIへの投資を渋る理由は「効果が不透明」

新たに注目を浴びているチャットボットやAIといった技術の導入を検討する小売事業者が、大きな投資を行う可能性は少ないでしょう。AIに投資する予定がないと答えた事業者の42%は、AIへの投資がどのような効果をもたらすか不透明だと答えているからです。

多くの小売事業者は、カスタマーエクスペリエンスの向上に関してはチャットボットの有効性を認めています。ただ、チャットボットを実際に利用する消費者は少なく、まだまだ初期段階であるとレポートでは言及しています。2016年にチャットボットを利用した企業は、デジタル関連ビジネスでは4%にとどまっています。レポートでは次のようにまとめています。

多くの小売事業者は、消費者が自動化されたカスタマーサービスを将来求めるようになるのか疑問を持っています。ただ、いくつかの事業者は、チャットボットの可能性を確かめるため、来年度にテストを始めるようです。

ECのプロたちも、IoT、セルフレジ、VRやARが来年度の予算に大きく組み込まれることはないと考えています。

2016年、アメリカのネット通販利用者の1/5以上は、VRのヘッドセットを知らず、46%は生活の中でVRが役に立つとは思えないと答えました。Forrester Research社のレポートでは次のように指摘します。

ビジネスにつなげるためには、VRやARがより多くの消費者の生活に入り込む必要があります

しかし、小売事業者が熱心に注目している新技術が1つだけあります。それがAmazon(アマゾン)の「Alexa(アレクサ)」です。人工知能搭載のスピーカー「Amazon Echo(アマゾンエコー)」や他のデバイスにも搭載されている音声アシスト機能で、アレクサに話しかけるとアマゾンで商品注文・再注文ができるようになります。

EC企業がパーソナライズ技術に投資する理由、ARやAIなどの先端技術に投資しない理由 Amazon(アマゾン)の「Alexa(アレクサ)」は注目すべき新技術という
米国のEC事業者は、「Amazon Alexa」は注目すべき新技術と回答している

「アレクサがどのように小売業界を変えるのか、小売事業者は回答を拒否しています」。レポートではこう報告されています。

2017年1月に開催された小売業界の一大カンファレンス会場でForrester Research社が取材を行った業界関係者の1/3が、アレクサは注目に値すると答えました。アマゾンは、インターネットリテイラー社発行「全米EC事業 トップ500社 2016年版」第1位にランクインしています。

アマゾンのデジタルアシスト機能「アレクサ」が与える消費行動への影響については次のように触れています。

家の中で、どこでも、いつでも簡単にアレクサが使えれば、消費者とブランドのつながりはさらに自然になっていくでしょう。そうなれば、わざわざ電話をしたり、パソコンを開いたり、ましてやお店に足を運ぶ必要があるでしょうか? アマゾンと消費者の関係が強固になり、何から何までアマゾンを利用するようになっていくでしょう。

EC事業者の技術投資に関し、Forrester Research社は次のようなアドバイスをしています。

  • 消費者の購入体験において、どこが欠点になっているのか特定できる技術に注力すること
  • 消費者を第一に考え、「派手な技術」への投資を避けるよう上層部に助言すること
  • 消費者向けであり、明確で測定可能な価値に直接つながる技術に投資すること

などです。

高級ワインと酒類を販売しているZachys Wine and Liquor社のヴィクター・カストロ氏は、インターネットリテイラー社の取材で、今後1年間で投資する技術は明確なROIがあるものに限ると話しました。

オンライン小売業で成長している私たちは、投資に見合ったリターンをもたらす技術に投資しています。たとえば、メールは確実で直接的なリターンを生み出します。世界一素敵なWebサイトを作ったとしても、流入がなければ、高価なペーパーウェイト(重し)と同じで意味がありません。大きな小売事業者は、コンバージョン率の増加やマージン増加といった技術への投資などに注力できるかもしれませんが、私たちは確実で直接的なリターンのある技術に投資しているのです。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア「Internet RETAILER」の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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