健康食品や化粧品の広告について、法令違反で事業者が摘発されたという報道を目にすることが多くなりました。広告がNGとされないようにするには、「景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)」「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」「健康増進法」という、3つの法令を知っておく必要があります。法に触れることなく自社の商品を最大限にアピールするために、それぞれの法令が重視するポイントを押さえておきましょう。

ダイエット食品には大きく分けて「サプリメント型」と「置き換え食型」があります。「置き換え食」とは1日の食事のうち、1食または2食をドリンクタイプやスープタイプのダイエット食品に置き換えて、全体の摂取カロリーを抑えるものです。今回はこの「置き換え食型」に焦点を当て、広告文例を元に注意点を分析してみたいと思います。

はじめに、下記の広告文例をお読みください(もちろん架空のダイエット食品です)。

─広告文例─

この『らくらく置き換えダイエットミール』は、1日の食事のうちの1食分を置き換えるだけのダイエットで、とっても簡単!!

女性のキレイに嬉しい豆乳を主成分に、ダイエットに不足しがちなカルシウムやビタミンも配合。美味しく無理なく、ダイエットに取り組んでいただけます。

『らくらく置き換えダイエットミール』でダイエットを実践した方からお喜びの声を沢山いただいております。

だまされたと思って1か月試してみました。気がついたら体重が7キロ減っていたんです。毎日1食置き換えただけなのにビックリです。

美味しくて、無理なくダイエットを実践できました。

今までも何度もダイエットに挑戦してきました。でも、無理にダイエットすると肌がガサガサになっちゃいます。
この“らくらく置き換えミール”は美味しくて簡単なだけでなく、豆乳がふんだんに使われているせいなのでしょうか? お肌もツルツルで一石二鳥!
彼にも「キレイになったね」と言われて大満足です。

※個人の感想であり、実感を保証するものではありません。

①景品表示法的なポイント

景品表示法には不当な顧客誘引の禁止が定められており「不当な表示の禁止」が大前提です。最近の傾向としては、景品表示法による不当表示の嫌疑は、「1つ1つの言葉の意味だけでなく、広告全体の印象によっても決まる」ということを意識しておく必要があります。たとえ景品表示法に配慮した言葉を選択して広告が構成されていたとしても、それが繰り返されるのであれば不当表示の疑いが高まります。まさに「塵も積もれば山となる」のです。

広告文例の中で、景品表示法的に問題になるのは下記の点が事実かどうかです。

ダイエットを実践した方からお喜びの声を沢山いただいております。

  • 本当に当該商品を使用し、実践した方の声なのか(モデルなどを起用して、望ましい結果が得られるように操作していないか)
  • 本当に顧客からの反応が“沢山”届いているのか

だまされたと思って1か月試してみました。気がついたら体重が7Kg減っていたんです。毎日1食置き換えただけなのにビックリです。

  • 「体重が7Kg減っていた」は事実か
  • 1日の食事のうちの1食に置き換えただけなのか(他の食事制限や運動なども行っていながら、そうした努力をしなくても簡単に痩せられるような事を言っていないか)
  • 商品の摂取で全員が同じ結果を得られるのか

エビデンスを求められた際に提示できるよう、しっかりと準備しておきましょう。

②健康増進法的なポイント 

健康増進法の観点として「虚偽誇大表示」に当たるかどうかがポイントです。『健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について』(消費者庁)には、

健康食品の中には、痩身効果を標ぼうするものが多く見受けられる。しかし、消費エネルギーが摂取エネルギーを上回らない限り、人は痩せないのであって、特定の健康食品を摂取するだけで、特段の運動や食事制限をすることなく、短期間で容易に痩身効果が得られることはない。適切な運動や食事制限をしながら、人が痩せることができるのは、6か月間で4kg から5kg 程度までである 。したがって、このような表示は、虚偽誇大表示等に当たるおそれがある。

─P28から引用

と記載されています。このことから考えると、広告文例のように「1か月間、1食置き換えだけでマイナス7kg」を立証するのは難しいと考えるのが妥当でしょう。

③薬機法的なポイント

薬機法の観点では「医薬品的効能効果を標ぼうしない」ことが最大のポイントです。商品のアピールが医薬品的効能効果を暗示させないのであれば、OKと判断できます。言い換えれば、

  • 医薬品的効能効果に触れず、健康維持、美容、栄養補給、生体の構成成分(特定部位は不可)の説明に留まる表現
  • 生活シーンや気持ちをあらわす表現
  • 多義的な言葉を用いる場合

これらは薬機法に抵触するものではないと考えることができます。

また「ダイエット」という表現そのものについても、医薬品的な効能効果とは見なされていません。『痩身効果等を標ぼうするいわゆる健康食品の広告等について』(厚生省/昭和60年6月28日)でも、下記のように記載されています。

単にカロリーの少ないものを摂取することにより、摂取する総カロリーが減少して結果的に痩せることは医薬品的な効能効果といえない

─P63から引用

したがって今回の例にあるような「1日の食事のうちの1食分を置き換える」ことも医薬品的な用法用量には該当しないため、「1日の食事のうちの1食分を置き換えるだけのダイエット」自体は、薬機法的にクリアと言えます。ただし、7kg減量できたのはあくまで効能効果によるものではなく、摂取カロリーが少ないなどの理由であればOKということであり、「商品そのものや成分の効果によりダイエットできる」といった内容にならないよう、注意が必要です。

体験談については「体験談の中で医薬品的効能効果に言及していなければ可」です。ただし、体験談そのものが本当にお客様の声であるという事実が必要になります。また、もし並行して運動などを行っているのであれば、「運動しないと結果が得られない」という事になるので、運動をしている旨を表現する必要があります

さらに、

無理にダイエットすると肌がガサガサになっちゃいます。
この“らくらく置き換えミール”は美味しくて簡単なだけでなく、豆乳がふんだんに使われているせいなのでしょうか? お肌もツルツルで一石二鳥!

この体験談は、肌への効果について言及しており、医薬品的効能効果に該当するため使用不可です。

体験談に関する「打ち消し表現」の注意点

※個人の感想であり、実感を保証するものではありません。

このような体験談に対するいわゆる「打消し表現」については、『打消し表示に関する実態調査報告書』(消費者庁/平成29年7月)に、

広告物で商品の効果、性能等を標ぼうしているにもかかわらず、「効果、効能を表すものではありません」等と、あたかも体験談が効果、性能等を示すものではないかのように記載する表示は、商品の効果、性能等を標ぼうしていることと矛盾しており、意味をなしていないと考えられる。

─P84から引用

と明言されています。広告の中で商品の効果や性能等に触れているのであれば、打消し表現を付け加えることで矛盾が生じ、かえって悪印象を与えることもあります。少なくとも免罪符にならないということは、肝に銘じておいた方が良いでしょう。

体験談に求められる表示方法については、同じく『打消し表示に関する実態調査報告書』(消費者庁/平成29年7月)の中で、

体験談により一般消費者の誤認を招かないようにするためには、当該商品・サービスの効果、性能等に適切に対応したものを用いることが必要であり、商品の効果、性能等に関して事業者が行った調査における(i)被験者の数及びその属性、(ii)そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた者が占める割合、(iii)体験談と同じような効果、性能等が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示すべきである。

─P85から引用

とされています。こうした条件をすべてクリアすることは不可能に近いかもしれませんが、「それほどシビアな見方をされているんだな」ということは覚えておいた方が良いでしょう。

◇◇◇

リライトで対処できていた薬機法重視の時代から、合理的根拠を示せるかどうかを厳しく問われる時代に変わりました。今回例に上げた広告文例は、もともとそれほど過剰な表現をしていたわけではありませんが、それでも気を付けなければならない点は複数ありました。

広告というものは、お客さまに対する訴求が目的であり、買っていただかなくてはその目的が果たせません。となると、少なからず誇大広告と解釈されてしまう可能性は常にあります。落としどころは非常に難しいですが、気を付けるべき点をしっかりと把握しておきましょう。

薬事法広告研究所主催セミナー

景品表示法の現在を知る“2019年上半期”

今、最も注意が必要な景表法—。2017年、2018年の2年間で措置命令を出された企業は消費者庁だけで104社にも上ります。また、最近では消費者庁だけではなく、都道府県レベルでの指導も相次いでおり、3月には初めて過大景品類での措置命令が出されました。

そこで、今景品表示法でどのような対策が必要なのか、行政の動向や、表現のリスク、エビデンスの考え方から知っておかなければならない景表法のルールを2講座にわたりたっぷり解説いたします。

 日時:2019年6月19日(水)
    14:00〜15:30 ≪第一部≫ 現在のリスクから対策を考える
    16:00〜17:30 ≪第二部≫ 景品・二重価格のルールを知る

 定員:各講座70名

 会場:同志社大学東京サテライト・キャンパス
    〒104-0031 東京都中央区京橋2丁目7番19号 京橋イーストビル3階(地図) 

 講師:稲留万希子(薬事法広告研究所 代表)

 受講料:≪第一部≫ 15,000円(税込) ≪第二部≫ 15,000円(税込)

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稲留 万希子

薬事法広告研究所 代表

東京理科大学卒業後、大手医薬品卸会社にて医療従事者向けポータルサイトの企画運営に従事。東洋医学に興味を抱いたことをきっかけに、中医学専門学校にて3年間薬膳料理や漢方について学ぶ。その間、ヘルスケア分野でのビジネス展開には薬事法を避けて通れない事から、薬事法と広告についても並行して学び、その後、国際中医専門員、漢方薬膳療術師、反射療法士、薬事法管理者、コスメ薬事法管理者の資格を取得し独立。2008年3月、薬事法広告研究所の設立に参画、副代表を経て代表へ就任。現在、一般社団法人 通販エキスパート協会 代表理事を兼任。

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