「ブースター」のような、化粧品として標ぼう可能な範囲にない新しい商品の訴求方法の考え方
「ブースター」と言われてもピンとこない方は多いかもしれません。消費者の間では「導入液」とか「導入美容液」などとも呼ばれている商品で、洗顔の後に使用するスキンケア化粧品として数年前に登場したアイテムです。その後につける化粧水や乳液、クリームなどの浸透を高め、化粧品の効果をさらに引き出せるとされています。 そもそもこの目的(効果)である「導入」というワードは、化粧品として掲げられる効果効能に含まれていません。広告表現ではどんな配慮が必要なのでしょうか?
標ぼうできる項目はほぼ58年前のまま
化粧品で標ぼう可能な効能効果は、昭和36年(1961年)に公布された『薬事法の施行について』(薬発第44号薬務局長通知)の、第1の3の(3)がベースになっています。その後、平成13年(2001年)の『化粧品の効能の範囲の改正について』と、平成23年(2011年)の『化粧品の効能の範囲の改正について』で、「乾燥による小ジワを目立たなくする」という効能効果が追加されたものの、“乾燥小ジワ”以外で大きな変化はありません。
スキンケア用品で標ぼうできる項目一覧(2019年6月現在)
(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする/ (洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)/ 肌を整える/ 肌のキメを整える/ 皮膚をすこやかに保つ/ 肌荒れを防ぐ/ 肌をひきしめる/ 皮膚にうるおいを与える/ 皮膚の水分、油分を補い保つ/ 皮膚の柔軟性を保つ/ 皮膚を保護する/ 皮膚の乾燥を防ぐ/ 肌を柔らげる/ 肌にはりを与える/ 肌にツヤを与える/ 肌を滑らかにする/ 日やけを防ぐ/ ひげを剃りやすくする/ ひげそり後の肌を整える/ あせもを防ぐ(打粉)/ 日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ/ 乾燥による小ジワを目立たなくする
「乾燥による小ジワを目立たなくする」以外に、何も動きがなかったわけではありません。日本化粧品工業連合会では2007年に「紫外線による肌の光老化を防ぐ(但し、SPF15、PA+以上に限る)」という効能について、化粧品効能拡大の要望書を厚生労働省に提出し、2015年から紫外線専門部会でも実現に向けて活動しています。
現在は光老化についての試験法を検討しています。しかし、具体的な期限を設けているものではないため、今のところ効果効能として追加される目途は立っていないようです。
「導入」は標ぼう可能な範囲を逸脱するのか
公布からすでに半世紀以上が経ち、化粧品の技術が大きく進歩していると同時に、当時は想定し得なかった目的の商品が登場するのは当然ですが、原則として化粧品としての効能はこれまで通り、事実に基づき、現在の56個に限るというのがルールです。これに含まれないものは標ぼうできないか、医薬部外品以上のものとして承認を得るかのどちらかになります。
「ブースター」は消費者の間では「導入美容液」や「導入液」などと呼ばれていますが、「浸透を促進する」という使用目的をともなう「導入」という言葉は、そのままでは標ぼう可能な効果効能の範囲を逸脱すると判断される可能性があります。企業側でも表立って「導入」とズバリ言うことは以前に比べて減った印象で、「ブースター」あるいは「誘導」という表現用いるなど、工夫が見られます。
「導入」を「ブースター」や「誘導」と言い換えればまったく問題ないということでもないはずなのですが、行政(東京都薬務課)にヒアリングしても「商品を見ないことには……」という回答しかないのが現状です。 しかしポジティブに捉えれば、頭ごなしに「ダメ」という事ではなく、「その商品を見てから」というワンクッションがあるということですので、表現の仕方次第でOKとも言えます。
「ブースター」はどう訴求する?
NGとされる理由として考えられるのは、
- 化粧品の効能効果の逸脱
- 複数の化粧料の併用による相乗効果
- 浸透が明らかに角層を超える
これらの3つです。 広告ではこのあたりに配慮して表現を検討していくと良いでしょう。 代替の方法としては次のような方法があります。
- 「ブースター」「誘導」「導入」という言葉を使用しながらも、明瞭に「※浸透は角層まで」と打ち消し表現を付ける
- 「○○シリーズ独自のステップ」「新提案」といった"お手入れ方法"として提案する
- 直接的な相乗効果としてではなく、下記のような言葉を使用する
「次に使う化粧品がなじみやすく」
「次に使う化粧品の浸透をサポート※」(※浸透は角層まで)
「次に使う化粧品の道筋をサポート」
(ふきとりタイプなどで物理的に余分なものを取り除くことで) 「次に使う化粧品がなじみやすい環境にととのえる」