Digital Commerce 360 2019/8/1 8:00

他の多くのオンライン小売事業者とは違い、アマゾンは視覚障害者でも欲しいものを見つけて購入できるようにWebサイトを設計しています。アマゾンが視覚障害者のオンラインショッピングをどのように促進しているかをご紹介します。

視覚障害者にとってのオンラインショッピング

最近、アマゾンで姪のためにTシャツを購入しました。購入は簡単ですが、私のような視覚障害者にとって、オンラインショッピングは難しいこともあります。利用したいWebサイトがアクセシビリティを考慮して作られていない限り、使うことはできません。

幸いなことにアマゾンでは、スクリーンリーダー(画面読み上げソフト)に頼っている視覚障害者が、検索、発見し、色やサイズを指定し、最終的には商品の注文を行うことができます

アメリカの他のオンライン小売事業者の多くは、サイトが使えないという理由だけで我々のような視覚障害者とのビジネスができていません。これらの小売事業者はWebサイト開発においてアクセシビリティを優先事項としていないため、年間69億ドルにも上る市場を失っているのです

スクリーンリーダーが理解できないサイトは使えない

視覚障害者がオンラインで買い物をする時の主な方法は、Webサイトを案内してくれるスクリーンリーダー・アプリケーションを使用することです。このテキスト読み上げ技術は、サイトのコンテンツを解釈して声で読み上げてくれるため、選択、タップ、またはスワイプするタイミングと場所がわかります。

ただし、ページレイアウトとマークアップ、画像、動画、およびその他の要素がアクセシブルな方法で設計または開発されていない場合、スクリーンリーダーはサイトを理解できず、ユーザーに正確に伝えることができません。

では、アマゾンはどのようにしてこの問題を解決しているのでしょうか? 私のようなユーザーが必要な商品やサービスを見つけて購入したり、他の商品やサービスに関心を持ったりするのに役立つ、3つの重要なアクセシビリティに焦点を当てます。視覚障害者のeコマース利用の際、なぜそれらが重要なのかを見てみましょう。

見出しと目印

どのWebページにも視覚的な手がかりがあり、ページをより理解しやすいように細かく区切られています。ページを見て検索機能に気付くかもしれません。もしくは商品、現在の売上、以前に購入したアイテム、または再購入が必要なアイテムをおすすめするセクションに目が行くこともあるでしょう。

画面を見ることができない人にも、スクリーンリーダーが同じ情報を提供できるように、埋め込まれた見出しと目印が必要です。

アマゾンは見出しや目印をうまく利用して、消費者にとって有益なページのセクションを強調しています。私がよく使用する検索機能の場所を、重要な目印がどこにあるか「示して」くれるのです。また、見出しを利用して、売上やおすすめアイテムなど、ページの重要なセクションを示してくれます

スクリーンリーダー「NVDA」が、このTシャツのサイズやフィット感、色の選択肢を読み上げくれる

見出しや目印がない場合、スクリーンリーダーを使用している人は、ページ上のすべての情報を読んで、そこに何があるのか、ページのどの部分を使用するべきか判断する必要があります。また、ページのコンテンツの大部分を覚えていないと、興味のあるセクションに戻ることができず、とても面倒です。

ページ全体の音声を聞いて、必要なものが途中のどこかにあることに気付き、必要な部分を見付けるためにその半分をもう一度聴く必要があることを想像してみてください。さらに、見出しと本文が同じ文章のように並んでいるところを想像してみてください。どこまで忍耐が持つでしょうか? 結局そのサイトを離れて、それらの機能を備えた他の小売店を探すことになるのです。

アクセス可能なコントロール

次に必要なのは、コントロール (リンク、ボタン、チェックボックス、ラジオボタンなどすべてのインタラクティブな要素) です。これらは多くの場合、画像で表示されています。目が見えていればこうした視覚的な手がかりは簡単に理解できます。たとえば、「今すぐ購入」ボタンを見れば、明らかに意味がわかるでしょう。

ただし、コードが正しく記述されておらず、「今すぐ購入」ボタンに「image.jpg」という要素しか埋め込まれていない場合、スクリーンリーダーが読み上げるのは「image.jpg」のみです。「今すぐ購入」という意味がわからなければ、ボタンとしての意味は失われます。代替テキストなしで画像が埋め込まれていたり、ボタンとして正しくマークアップされていない場合、「image.jpg」が購入機能に相当するかどうかを知る方法はないのです

アマゾンはこれらのコントロール画像にラベルを付けて、視覚的な手がかりを見られない人でもページを操作できるようにしています。一部の視覚障害者はマウスを使用できませんが、キーボードまたはキーボードに似た技術を使用できます。

アマゾンは、これらのコントロールがキーボードからもアクセスできるようにしています。たとえば、コントロールにはラベルが付けられており、スクリーンリーダーで読み上げられるため、画面をスキャンしたりマウスに触れたりしなくても製品を検索できます。

アマゾンで検索すると多くの商品が出てくるので、検索フィルターを使う必要があります。アマゾンは、視覚障害者が自分の好きなブランドを選んだり、平均的なレビューやその他の有益なパラメータによって結果をソートできたりするように、フィルターを利用可能にしています

スクリーンリーダー「NVDA」は、利用可能な検索フィルターとカテゴリー検索ボタンを読み上げてくれる

アクセス可能なプロセス

これは最も重要なアクセシビリティ機能です。なぜなら、購入を完了するために必要なすべての手順を網羅する必要があるからです。つまり、ショッピングカートに追加する、配送オプションと支払いオプションを指定する、最後に「購入」をクリックする、という手順を踏まないと、不満を抱えた消費者がサイトを離れ、別のサイトで買い物をすることになります。

最近、視覚障害者がオンライン取引の3分の2を破棄しているという調査を行いました(Nucleus Research社が実施)。アマゾンは、この重要性を正しく理解している少数派です。

姪のTシャツに話を戻しましょう。私はスクリーンリーダーと協力して、アマゾンのアクセス可能な検索機能を使い、商品を簡単に見付けることができました。キーボードとスクリーンリーダーを使用して、適切なサイズと色を選択することができました。

私はそれをショッピングカートに追加し、商品を発送したい場所と配達と支払いのオプションを選択する手続きをしました。このプロセスでは、見出し、目印、アクセス可能なコントロール、プロセスがすべて役割を果たしました

Tシャツのサイズ、フィット感、色について、読み上げられた選択肢から選択できる
◇◇◇

なぜ小売サイトでアクセシビリティが重要な役割を果たすのか、そして、なぜアマゾンがEコマースでこれほど支配的になっているのか、その理由が理解できたのではないでしょうか。

障害者者はコストや品質などにも関心を持っていますが、アクセシビリティの有無によって、どのような選択肢を選び、誰と取引するかが決まります。企業が障害者とのビジネスに関心があると示してくれれば、生涯にわたる顧客を手に入れられるかもしれません。アクセシビリティを優先事項とすることで、約70億ドルの市場シェアを獲得できるのです。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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