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新型コロナウイルス感染症拡大で消費意欲が急激に落ち込み、売れ筋商品も劇的に変化するなか、人と接することなく購入できる新しいニーズへの対応を迫られるなど、目まぐるしい1年だったのではないでしょうか。消費者にとっては人と接することなく物や体験を得る手段として、販売側にとっては貴重な消費者との接点としてECの重要性が高まり、私たちEC担当者のもとには、「これまで以上に個性を出しながらEC活動を行いたい」という相談が増えてきました。

コロナ禍で大きな影響を受けたのが海外向けの事業です。人の往来が止まったことでインバウンドを含む個人消費が急激に落ち込みました。今回は、そんな今だからこそお伝えしたい、海外向けECについて解説します。

海外向けビジネスを始めたい企業は微減

独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)のレポート※1によると、新型コロナウイルス感染症の影響で大きな変化を経験した2020年度は、すでに進出している海外の事業を拡大しようと検討する企業は前年度比で大幅に減少しています。

一方で、新しく海外向けのビジネスを始めたいと検討している企業は前年度比で微減にとどまっており、国内経済の打撃を海外進出に向けている可能性があります。新しいビジネスの可能性を求める企業や、リスクの分散を考え特定の市場への偏重を避けたいと考える企業にとっては、海外の新規市場への期待が大きいと言えるでしょう。

すでに海外向けの事業を展開している国や地域で人気が高いのは、何と言っても中国やアメリカです。ある程度の事業環境が整っており、現地のニーズに関する情報も比較的多いため、進出しやすい国と言えるようです。

新規展開では東南アジアが人気

新しく事業展開を検討している国や地域としては、東南アジアの名前があがっています。すでに法人として拠点を持っていたり、現地ディストリビューターとの取引が行われていたりするケースもあります。しかし、中国やアメリカと比べると比較的情報が少ないため、情報収集を行いながら新規進出の準備を進めている企業が多いようです。

各種経済レポートによる国や地域の商品需要を見ると、中国や東南アジアではパーソナルケア用品、メイキャップ製品、日用品、衣料品など、現地での販売実績がある商品の需要が高いと言えます。各カテゴリにおいて、日本ブランドの品質や人気が定着していると言えるでしょう。

また、製品の温度管理が容易なカテゴリでもあるため、海外向けECビジネスが初めてでも比較的チャレンジしやすいのかもしれません。特に、国境を越えた人の往来が規制されている現在、日本にいながら販売環境を整えられる越境ECについて、すでに始めている、もしくは興味を持っている企業は多いようです。

中国向け越境EC市場の現在

そんななか、引き続き多くの企業が注力しているのが中国向け越境ECビジネスです。2020年は春節の時期に新型コロナウイルス感染症が広まった影響で、中国内では年間を通じて消費購買行動の勢いが弱まり、経済的に厳しい状況となりました。

ECプラットフォーム各社では「KOL」(Key Opinion Leader)や「KOC」(Key Opinion Consumer)のような、中国内で人気のインフルエンサーを起用したライブコマースや、さまざまな販売イベントの強化、毎年11月11日に行われる「W11」(独身の日)などのセール期間を延長したり、イベント本数そのものを増やしたりといった工夫を凝らし、流通総額を伸ばす努力をしています。

越境ECに対応するECプラットフォームは、引き続きアリババグループの「天猫国際」の存在感が大きく、越境ECプラットフォーマー「考拉海購」を運営するKaolaをグループ化したことで、2つのプラットフォームを合わせて中国における越境EC市場の5割を超えるとも言われる高いシェアを持っています。

続いて、市場シェアでは2番手の「JD.com」を運営する京東集団は、微信(WeChat)を運営するテンセントの資本を受け、家電品や食品を中心に活気のある市場を運営しています。

一方、中国国内で人気が出ている「併多多」(ピンドゥオドゥオ)などは、越境ECサービスは開始したものの、後発であることやプラットフォームの性質もあり、まだ市場規模を確立できていません。越境ECプラットフォームの顔ぶれとしては、これまで通りと言えるでしょう。

中国向け越境EC市場のプラットフォーム別シェア
中国向け越境ECのプラットフォーム別シェア(2019年実績)
出典:アリババ

中国では相変わらずメイク関連商品が好調

中国市場で特筆すべきは、コロナ禍においても引き続き日本製を含むメイキャップ製品の売れ行きが好調な時期だったことです。日本国内の化粧品業界においては、ステイホームやマスク生活で特にメイキャップ製品が大打撃を受けるなか、中国国内では引き続き日本製化粧品が人気でした。

現地では数か月にわたり新規感染者が出なかったことで、マスクを付けない時期が長期化、メイキャップ製品が引き続き売れていたようです。とはいえ、また新規感染者数が増えればマスク生活となり、売れ行きに影響が出ると思われます。

さらに、日本以外の国の越境ECが活性化していることも現在の特徴です。これまで中国において越境ECの国別売上高では、圧倒的に日本製品が強かったのですが、中国で人気の高い欧米系のブランドが中国への進出を加速しているため、相対的に今後、日本製品の売り上げが下がっていくと言われています。中国市場においては引き続きニーズはあるものの、これまで以上に競争が激化する見通しです。

このように中国向け越境EC市場においては、現地のリアルな情報をいかに素早くキャッチできるかが成功のカギになると思われます。

東南アジア市場の魅力とは

一方で新規進出の検討が多かったのが東南アジア地域です。東南アジア地域は人口が右肩上がりで増えており、スマートフォンの普及率が高く、インターネット環境も整っており、ECとの親和性が高い地域です。特に期待が高まっているのがインドネシアやマレーシア、シンガポール。2019年頃から越境ECのサービスがスタートして現地の販売環境が整っていることや、日本製品の知名度が高いこともあり、市場が急激に成長しています。

主な越境ECプラットフォーマーとしては、アリババグループ傘下でシンガポール拠点の「LAZADA」や、同じくシンガポール拠点でSeaグループ傘下の「Shopee」などがあり、今後ますます活性化していくと言われています。

LAZADAのスクリーンショット
「LAZADA」より編集部でキャプチャ
Shopeeのスクリーンショット
「Shopee」より編集部でキャプチャ

東南アジア市場の課題

EC市場が急成長中の東南アジアですが、中国の越境EC市場と比較すると、

  1. そもそもの市場規模が小さい 
  2. 距離的な問題から輸送日数がかかるため注文されづらい 
  3. 中国ほど越境ECの優遇制度が整っていない 
  4. 中国と比べると多種多様な文化が国と地域ごとに存在する

など、まだ課題も多いのが現状です。「インドネシアはスマートフォン経由のEC購入率が高い」「シンガポールはWeb上で情報収集が行われるがオフライン購入率もまだまだ高い」など、国や地域の文化や特性に合わせた販売を行っていく必要があります。東南アジア地域においては、よりローカライズされた情報発信と、商品の個性が伝わるような販売活動が必要であるため、SNSと組み合わせた施策などが有効でしょう。

ECのあり方が見直される時

コロナ禍のニューノーマルにおいて、人との接し方や働き方など、これまでの生活スタイルや価値観が大きく変わりました。ビジネスの場においては、市場環境や消費者のニーズが変わったことで、売り手側の活動、特に国内ECや越境ECへの取り組みが見直されています。

すでにECや越境ECに取り組んでいる企業でも、売り上げを伸ばすために、また、消費者との距離をバーチャルで近づけつつ、より良い関係性を構築し、自社のブランドや思いを伝えていくために、多くの企業がデジタル戦略・EC戦略を見直し、強化していくでしょう。

急激なEC推進やDXニーズの高まりにより、環境の整備や人材の確保といった多くの課題もありますが、国内外でのECビジネスの強化は、ニューノーマルに対応するための大きなチャンスに違いありません。今回はそのなかで越境ECについてご紹介しましたが、これまでは越境ECを行っていなかった方も、気軽で身近な取り組みから始めてみてはいかがでしょうか。

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辻 麻衣子

株式会社電通デジタル コマースプロデュース事業部 コンサルタント

EC市場の成長期に、大手ECプラットフォームのコンサルタントとして8年半勤務。のち、中国系越境EC企業にて、越境ECプラットフォームのバイヤー/コンサルタントとして3年間、日本のメーカー企業各社と二人三脚で越境ECに取組む。電通デジタルでは、入社当初より、国内外のECにおけるビジネススキームの改善や売上の拡大に対するコンサルティング活動に取り組んでいる。

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