朝比美帆 2021/10/5 9:00
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デジタルネイティブのZ世代はすでにM1/F1層となりつつあり、消費購買のメイン層として台頭してきている。情報収集だけでなく発信を自然に行うZ世代がマーケティングのターゲットになるなか、どのようにカスタマーエクスペリエンス(CX)を向上させるべきか――。

ZETAの山崎徳之社長は、「レビュー」とレビューの発展型とも言える「商品Q&A」が今後ますます重要になると指摘する。レビューと商品Q&Aの機能を拡充する上で押さえるべきポイントについて、レビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」の導入事例を交えて解説していく。

デジタルネイティブの「Z世代」が、すでに消費購買のメイン層

昨今の情勢の影響で、デジタルシフトやデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する動きがいっそう加速し、消費購買行動にも変化が起きている。だが、消費購買行動の変化は、こうした背景だけがすべての要因ではない。消費購買におけるメインの年齢層に、若い頃からデジタル環境やスマホの取り扱いに慣れ親しんだ「デジタルネイティブ」や「スマホネイティブ」の世代が増えてきていることも大きい。

山崎氏は、「ブランドやリテールに対する消費者からのリクエストや、消費者のスタンスも変わりゆくなかで、企業側もその変化に対応していかなければ取り残されてしまう」と指摘する。

すでにアパレルやデジタルコンテンツなど、若年層による消費購買の割合が高いジャンルでは対応が進んでいるが、その他のジャンルもこれに追随する傾向が強まると予測している。

オンラインとオフラインは“共存”し、補い合う関係であるべき

世代を分類すると、一般的に「X世代(1965~1980年頃の生まれ)」「Y世代(1980~1995年頃の生まれ)」「Z世代(1995年以降の生まれ)」と区分される。非常に若い世代と思われていたZ世代が、徐々にM1/ F1層に増えてきていることがわかる。つまり、Z世代がトレンドに敏感な消費購買のメイン層になってきているということだ。

実際に米国では、総消費に対するZ世代の占める割合はすでに約40%というデータもある。

ZETA ZETA VOICE Z世代:購買力と重視するCX
米国では総消費に対してZ世代が占める割合が約4割に到達。Z世代が消費購買のメイン層だと認識しなければならない

Z世代が消費購買のメイン層になってきている一方で、企業の経営者層は総体的に年配層が多い。若年層がメインターゲットになっているような業界の場合には感覚のギャップを認識し、それを埋めに行くことが必要だと考えられる。(山崎氏)

ZETA ZETA VOICE
ZETA 代表取締役社長の山崎徳之氏

Z世代のほとんどはスマホネイティブであるため、中高生頃から当たり前のように情報収集を日常的に行っている。若い時期からスマホという強力なデバイスを持っている世代の行動様式をマーケティングの観点で調査すると、「初めて購入する前にレビューを読む」「実店舗でのショッピングを楽しみたい。けれど、なるべくオンラインショッピングを利用したい」という意見が多いことがわかった。矛盾しているように見えるが、これは矛盾ではなく“共存”している状態だという。

Z世代の行動から考察すると、レビューの充実や、オンラインとオフラインの垣根を超えたOMOが、CXを向上するための鍵になるようだ

ZETA ZETA VOICE Z世代は実店舗とEC利用が共存した購買行動を取りたい傾向
Z世代は実店舗とECの利用が共存した購買行動をとりたいという傾向がわかる

売り上げ集計上の問題など企業の都合はあると思うが、これまでのように「オンライン対オフライン」「店舗対EC」のような背反的な見方ではなく、店舗とECは共存して補い合う関係と考えなければならない。(山崎氏)

レビューのある商品は、無い商品に比べて購買確率が2.7倍に

レビューや口コミは決して目新しいものではないが、消費購買のメイン層にZ世代が台頭してきたことにより、これまで以上にレビューがCXを支える要素として重要性を増してくることを認識していなければ、感覚のギャップは広がる一方だろう。

レビューのある商品はレビューのない商品と比べて購買確率が2.7倍も高まっており、特に高価格商品では3.8倍もの差が出たという調査結果がある。この調査では、5.0点満点のレビュー点数の場合、4.0~4.7点が最も購入の可能性が高まり、5.0点に近づくと減少し始めることも報告している。これは、以前問題となったステルスマーケティング(ステマ)への懸念が一要因として表れているのではないかと考えられるが、いずれにしても、Z世代に限らず幅広い世代で、レビューが購買を後押しする重要な役割を担っていることがよくわかる。

ZETA ZETA VOICE レビューのある商品はない商品より購買確率が高まる
レビューのある商品は、ない商品に比べて購買確率が圧倒的に高まる

ZETAはレビューの重要性が高まると予見し、約5年前からレビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」の開発・提供に積極的に取り組んできた。レビューの有効性が年々顕著に表れ始め、ここ2年間で導入が加速度的に進んでいるという。そのなかで新しい発見となったのが、「Q&Aはレビューの延長線上にあり、“拡張型レビュー”と言える存在」ということだった。

たとえば、Amazonではレビューの上にQ&A機能が付いており、商品についての質問と回答がやり取りされている。質問に対してブランドやリテールが回答するだけでなく、実際に購入した消費者が回答している場合も多くあることから、今やQ&Aはレビューの延長線上にあるということだ。

かつてはほかの消費者が投稿したレビューを参照するだけだったのが、双方向のコミュニケーションの形になってきていると言える。

コマース以外を見ても、Appleがサポートコミュニティを開設して、製品の動作や使い方などに不明点があったユーザーが質問を投稿し、Appleのスタッフやほかのユーザーが回答する仕組みを取り入れている事例も見られる。

このような流れから、今後ますます消費者同士のコミュニケーションがインターネット上のコンテンツの大部分を占めてくると予測している。

ZETA ZETA VOICE レビュー発展型Q&AによるECのインタラクティブ化
Q&Aはインタラクティブなコミュニケーションになってきており、ユーザーも質問がしやすいサイトを好む傾向になってきている

Z世代に限らず、消費者は買う前に“消費者目線の情報”を求めている

「Z世代が消費購買のメイン層になるとレビューがより重要になる」という背景には、レビューがコミュニケーション型になってきていることにヒントがある。デジタルネイティブ/スマホネイティブの世代は、自らが情報を発信することに自然体でいられるからだ。

インターネットの歴史を遡ると、「Windows95」のヒットに伴い一般消費者の間でもパソコンとインターネットが普及し始め、より速い回線のADSLの登場により、2003年頃には個人も情報を発信できるブログが広く認知されるようになった。

インターネットが普及して以降、情報の双方向化が発展し、さらにブログやTwitter、Facebookなども登場したことで、それぞれのユーザーが情報を発信してコミュニケーションを取ることが当たり前になった。

そうした時代に一番感受性の強い中高生時期を過ごしたZ世代は、情報を受け取るだけでなく発信する行動を取るのは当然で、TwitterやFacebookだけでなく、Q&Aやレビューという形でも情報を発信しているというだけの話なのだ。

また、Z世代に限らず、何かを買おうとするときに企業が公式に発表したスペックなどの情報や、セミプロユーザーからの商品情報を参考にしつつも、「もっと自分のような消費者目線で見た場合の商品はどうなのか」「さまざまな人の意見を聞きたい」と思う気持ちは広く一般的になってきているだろう。

米国で出されたある統計に「消費者は企業が発信する情報の3倍、ほかの消費者が発信する情報を信頼する」とあった。企業が発信する情報は、サイズや素材、スペックなどの正確性において、今後も信頼できるものとして捉えられるだろう。

一方で、「それが実際どうなのか?」という消費者目線の情報は、企業が発信する情報や広告よりも、ほかの消費者の意見の方が信ぴょう性の高い情報として捉えられている。(山崎氏)

満足のいく買い物をした消費者は良質なマーケターになるからこそ、CXが重要

レビューを重視すべき理由として、もう1つ忘れてはならないのが「満足のいく買い物をした消費者は良質なマーケターになる」ということだ。インフルエンサーやYouTuberのお勧めは、「企業案件のプロモーションではないか?」という疑問が持たれかねないが、一般消費者のレビューは率直な意見として捉えられやすいため、良いレビュー評価は良質なマーケティング要素になっていく

ただ、レビュー評価は企業側がコントロールできるものではないため、CXを追求して高い評価につなげていく取り組みが重要だ。

ZETA ZETA VOICE ファン・リピート顧客への転換
満足のいく買い物をした消費者が発信する情報は、ネガティブ面の払拭とポジティブ面を伸長させる良質なマーケティング要素となる

CXで大事な“情報の透明性”。デジタル上で情報を得やすくする施策を

そもそも、CXとは何か――。

多くの企業がCXの向上に向けて試行錯誤しているなか、どの企業にも当てはまる形で詳細に説明することはまだまだ難しいと言える。ただ、「1つ言えるのは、情報の透明性に重きを置いていることは間違いない。消費者の目をくらますようなマーケティングはそっぽを向かれるようになる」と、山崎氏は断言する。

1980年代頃は、万人受けする1つの良い製品を作ることに集中し、それをテレビCMなどのマスマーケティングで大々的に打ち出してたくさんの人に買ってもらう手法が主流だった。そうした手法は認知を得るためには良い一方で、購入後に想像と違っていた消費者からは「CMでは良く言い過ぎていたのでは?」といった不満が生まれてしまう。現在は不満の声もあっという間に情報発信されてしまうため、逆効果になりかねない。

まさに「ステルスマーケティング」が、その端境期にあった。著名人に消費者目線で商品を褒めてもらうように促しても、消費者が真相を知るとすぐに情報が拡散されていく。ステルスマーケティングはCXの真逆を行くようなアプローチと言え、何かを曲解して受け取られるような情報を発信するマーケティングは一瞬で見抜かれるようになってきているのだ。

大昔は作り手が良い商品を作り、消費者は目の前の商品から自分が納得するものを買うしかなかったが、マスマーケティングの登場によって売り方が変わった。今はまた「良いものを作って、誤解なく情報発信して、納得の上で買ってもらう」という商売の本質に引き戻されてきている。(山崎氏)

「買って良かった」と思う買い物をしたい消費者心理があるからこそ、「実物も見たいし、ネットでほかの人の口コミも見たい」と考えるのは当然だ。

消費者が店舗で商品を見たときに、スマホで商品の口コミや他店舗の販売価格などを調べる行動は自然に行われている。こうした消費者の行動に積極的に協力する姿勢が企業側に求められているということであり、デジタル上でいかに情報を得やすいようにするかを重視しなければならない。

特にデジタルコンテンツでは、レビューや口コミ文化が早々に普及した。デジタルネイティブな消費者が映画を見る前に口コミサイトを閲覧するという動きがいち早く一般化したためである。この文化を、今はデジタルコンテンツ以外の商品が追いかけている状況となっている。

「ZETA VOICE」の機能をもとに、マーケティングに役立つレビューの活用方法を解説

ZETAが提供するレビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」に搭載している機能をもとに、それらの機能がマーケティングにどう役立つのかを解説する。

サイトにレビュー機能を導入していても、総合評価しか表示していないサイトは少なくない。ただ、これでは何を評価してその点数になっているのかが不明だ。ゴルフ用品のECサイトを例に挙げると、評価ポイントを多軸にすべき理由がわかりやすい。

ゴルフクラブのドライバーの場合、飛距離、寛容性、操作性、構えやすさ、価格など、人によって重視するポイントが異なるため、総合評価だけでは選びにくい。各項目の評価点をレーダーチャートなどを用いて提示することで、選ぶ側にとって参考になりやすい情報となる。

ZETA ZETA VOICEの機能 レーダーチャートなど複数の軸の評価を提示
人によって商品の重視するポイントは異なる。レーダーチャートなどを用いて複数の軸の評価を提示してわかりやすくする必要がある

どんな人が言っているのか。レビュアーのデータも参考情報になる

ドライバーで例えると、ゴルフ歴が長くアスリートのような30代男性が飛距離を高く評価するドライバーと、ゴルフを始めたばかりの20代女性が寛容性を高く評価するドライバーではまったくの別物だ。

評価ポイントを多軸にして「何について評価しているのか」を明確し、「どういう人が評価しているのか」もわかるようにすることで、レビューが持つ情報の質と量は圧倒的に向上していく。

ZETA ZETA VOICEの機能 何について評価しているのか どういう人が評価しているのか
「何について評価しているのか」「どういう人が評価しているのか」がわかればレビューの情報量が爆発的に増加する

ECにおける商品Q&Aの活用で、店舗のメリットを補完

メルカリが広く利用されている背景には、中古品の流通に需要があることに加え、消費者目線で撮った画像にリアリティーと信ぴょう性が感じられることも関係していると考えられる。

まさにそういった消費者の意向が、今後ますますレビューという形の情報の必要性と需要を高めていくという。そして、その情報交換の輪の中にメーカーやリテールが入っていくQ&Aの形もいっそう活発化すると予測できるため、商品単位で質問でき、購入者や店舗・企業から回答を得られる機能も有効性を増していくと見込まれる。

また、「行列ができる店=人気の店=良い店」と推測する心理が働くように、オンライン上で“にぎわい”を表現することも、実店舗を含めた購買を後押しする上で重要だという。

実店舗でもスマホで商品について調べられる今、「その商品を実際にどれくらいの人が見たり気にしたりしているのか、“にぎわい”が伝わるデジタルマーケティングに力を入れることが実店舗での購買にもつながっていく」と山崎氏は力説する。

ZETA ZETA VOICEの機能 商品単位でQ&Aができる機能 にぎわいを表現する機能
商品単位でQ&Aのやり取りができる機能と、ネット上で“にぎわい”を表現する機能が今後ますます重要になる

「ZETA VOICE」導入社の事例

「ZETA VOICE」の導入社から、2社の事例と効果を紹介する。

アダストリア「.ST」、アプリのQ&A機能で情報交換が活発化

アダストリアは、公式ECサイト「.ST」のアプリに「ZETA VOICE」を導入し、2020年12月に新サービスとしてQ&A機能を開始した。商品やファッションに関する質問と回答のやり取りをユーザー同士で行えるようになったことで、購入した衣類の手入れの方法や、質問者の体型に似た人から具体的なスカート丈のアドバイスが得られるなど、「参考になる」という意見が多数寄せられている。

開始からわずか3か月で、質問数は約7000件、回答数は約3万7500件に達し、回答のスピードがまったく落ちないままユーザー同士の情報交換が活発に行われているという。

サンエー・ビーディー、レビュー投稿後の商品のスマホCVRが約2倍に

TSIホールディングスのグループ会社、サンエー・ビーディーの「サンエービーディーオンラインストア」は、2018年2月のサイト開設当初から、「スタッフによる写真付きレビュー投稿」などさまざまな機能を構想していた。このため、レビューエンジンを導入する際は、デフォルトで備えていない機能でもスピーディーに対応できる点を最重視して検討していたという。

「ZETA VOICE」の導入により、評価点・コメント・レビュアー情報・画像アップロードなどの機能を実装。一部商品でレビュー投稿前後1週間のスマホ経由のコンバージョン率を計測すると、1.8~2.5倍の伸び率となっていた。

また、レビュー情報が拡充することにより返品率の低減も期待されている。「こういう色があればもう1着欲しい」といった、商品企画やマーケティングに役立つレビューも多く投稿されている。

リアルとネットの垣根を超えた、シームレスな買い物体験を支援

実店舗で商品を見ながらスマホで検索する行動が一般化しているなかでは、レビューなどデジタル上のコンテンツを充実させることが、オンラインとオフラインの垣根を超えてCXを高める上で有効に働くことがわかった。ZETAはレビューエンジンのほか、OMO・DXソリューション「ZETA CLICK」も提供し、店舗とECのシームレスな買い物体験を支援している。

ZETAは「ZETA CX シリーズ」として、以下の6製品を展開している。

  1. EC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」
  2. レビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」
  3. OMO・DXソリューション「ZETA CLICK」
  4. レコメンドエンジン「ZETA RECOMMEND」
  5. 広告最適化エンジン「ZETA AD」
  6. 予測・パーソナライズエンジン「ZETA DMP」

ここ数年は特に、「ZETA VOICE」と「ZETA CLICK」の導入が急速に進んでいるという。「ZETA VOICE」の導入社数は2020年からの1年間で約2倍に増加し、口コミ数も年間で200万件近く投稿されている。日々5000件の投稿が発生しているということになる。

ZETA ZETA CXシリーズの実績の一部
「ZETA CX シリーズ」の実績の一部

「ZETA CX シリーズ」の導入企業は、中堅~大手企業が多い。アパレルをはじめ、家具、家電、食品、ゴルフ用品など、幅広いジャンルで実績を重ねている。

ZETA ZETA CXの主な導入企業
「ZETA CX シリーズ」の主な導入企業
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