Digital Commerce 360[転載元] 2023/4/13 8:00

大手コンサルティングのDeloitte Touche Tohmatsu(デロイト・トウシュ・トーマツ)は、小売事業者の収益は「2012年から2019年にかけてオンラインやオムニチャネル販売に関連するコスト増により減少したが、コロナ禍で回復した」と説明します。

小売事業者が利益率を維持するためには、送料無料の制限、返品処理の効率化など、Eコマースに関連するコストの削減が不可欠です。コスト削減のポイント、小売業態における利益率などの変化を解説します。

記事のポイント
  • デロイトの分析によると、上場小売企業のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の中央値は、2012年の9.7%から2019年は6.7%に低下。その後2022年には8.6%に回復した
  • 送料無料、返品対応といったEコマースに関連するコストの増加が利益率低下の要因となった
  • 小売事業者は、Eコマースでの送料無料キャンペーンの開催を制限し、返品処理を迅速に行い、後払いなどの新機能の利点を綿密に分析することによってコストを抑制できる

オンラインはコスト負担が大きく、収益を上げにくい?

小売業で利益を伸ばすのは決して簡単なことではありません。昨今はオンライン販売への投資額が大きくなり、利益の拡大はさらに厳しくなっています

デロイトによると、Webサイト、モバイルアプリ、店頭受け取りなどのオムニチャネルサービスに関連するコストが、小売業の利益率悪化に影響。2012年には9.7%だったEBITDAの中央値は、2019年には6.7%に減少しました。

2022年にEBITDAの中央値は8.6%に回復しましたが、それは、コロナ禍による商品需要や政府の景気回復施策のおかげです。

デロイトの小売・卸売・流通リサーチリーダー ルパン・スケリー氏
デロイトの小売・卸売・流通リサーチリーダー ルパン・スケリー氏

EBITDAの中央値は、食料品、ドラッグストア、会員制大型ディスカウントショップといったカテゴリーの小売企業で最も低くなっています。

一方で、アパレル、家庭用品、百貨店、専門店などのカテゴリーでは、最も高い値を示しました。オンライン販売やその他のダイレクトマーケティング企業は、その中間に位置しています。

業種・業態別小売業のEBITDA中央値(出典:デロイトによる上場小売企業の分析結果)
業種・業態別小売業のEBITDA中央値(出典:デロイトによる上場小売企業の分析結果)

オンラインは超高収益の業態とは言えません。小売事業者にとって、オンラインはまだコストのかかるビジネスモデルなのです。(スケリー氏)

コストの抑制は不可欠!

デロイトのロドニー・R・サイズ氏(米国リサーチリーダー)とスケリー氏は、2021年発行の『MITスローンマネジメントレビュー』(編注:米国のマサチューセッツ工科大学スローン経営大学院が発行するマネジメント誌)のなかで、「デロイトの上場小売企業99社の分析によると、2012年から2019年にかけての小売事業者の収益低下はコストの上昇が大きな要因だった」と説明しています。

いくつかの企業の倒産によって調査対象企業の数は減少しましたが、最近の上場小売企業86社を分析したデータによると、スケリー氏は「コロナ禍の間に利益が回復したことが示されました」と『Digital Commerce 360』に語っています。

しかし、スケリー氏によると、デロイトが最近インタビューした小売事業者の幹部は懸念を示したそうです。「インフレによるコスト増加と、高い商品価格を支払うことに対する消費者の抵抗感によって、2023年に再び利益が圧迫される可能性がある」――。

そのため、スケリー氏は「小売事業者はオンライン販売に関連するコストを含め、コストの抑制に注力することが不可欠」だと警鐘を鳴らしています。

コスト削減に成功し、利益を上げるコツとは?

スケリー氏は、小売事業者がオンライン関連のコストを抑えることができる3つのポイントをあげています。

①「送料無料」の乱発はNG

送料無料を打ち出す施策は長く続けられない。限界にきています。(スケリー氏)

スケリー氏は、小売事業者に対して、優良顧客やロイヤルティプログラムの一環としてのみ、送料を無料にすることを勧めています。

②新しいオンライン機能は手数料負担に注意

スケリー氏は、小売事業者は、新しいオンラインサービスを追加することに、厳しい目を向けるべきだと指摘。その理由は、機能を提供するプロバイダーへの手数料を伴うことが多いからです。

その例としてあげたのが、BNPL(Buy Now, Pay Later)、いわゆる「後払い」の人気の高まりです。BNPLサービスには通常、1回の取引につき最大50セントと販売額の10%がかかるようです。スケリー氏は「これは、かなり早い段階で小売企業の負担になっていきます」と話しています。

③迅速な返品処理がコスト減のカギ

返品に伴う手数料は販売額の15%から30%に上り、一般的に売上1ドルに対して約5セントの純利益しか得られない計算になる。オンラインショップにとっては破滅的です。(スケリー氏)

この対策として、ネット上で商品を視覚化し買い物を支援するツールを導入すると、返品を40%削減できると言います。

また、多くのオンラインショップの返品を請け負う業者が運営する「リターン・バー」を利用すれば、20%のコスト削減が可能だそうです。

このほか、スケリー氏は、小売事業者は消費者の返品を迅速に処理するようアドバイスしています。消費者から「いつ返金されるのか」という質問があった場合、1回の問い合わせに通常5ドルほどのコストがかかるためです。

オンラインやダイレクトマーケティングは資本利益率が低い傾向?

オンライン販売に関連するコストは、デロイトのROA(総資産利益率)分析に表れています。

総資産に対する利益の割合は、他の小売カテゴリーでは回復しているにもかかわらず、オンライン小売事業者とダイレクトマーケティング事業者では、コロナ禍の間、減少し続けました

業種・業態別小売業の総資産利益率(出典:デロイトによる上場小売企業の分析結果)
業種・業態別小売業の総資産利益率(出典:デロイトによる上場小売企業の分析結果)

Eコマースは販管費が多くなりやすい

また、オンラインショップや直営店では、売上高に占める販売費・一般管理費の割合が最も高くなっています。これは、ECサイトの運営、オンラインマーケティング、カタログ印刷などのコストを反映していると思われます。

売上高に対する販売費および一般管理費の比率(出典:デロイトによる上場小売企業の分析結果)
売上高に対する販売費および一般管理費の比率(出典:デロイトによる上場小売企業の分析結果)

消費者直結型の小売事業者は、売上高に占める商品原価の割合は平均して低い傾向にあります。

業種・業態別小売業の商品原価率(出典:Deloitteによる上場小売企業の分析結果)
業種・業態別小売業の商品原価率(出典:Deloitteによる上場小売企業の分析結果)

ほとんどの小売事業者において、売上高に占める商品原価の割合は過去、一時的に2019年から上昇したものの、2022年には低下しました。

例外は、食料品とドラッグストアのカテゴリーの小売事業者。近年、食料品の価格が高止まりしていることが影響しており、原価率は高騰しています。

オンラインの小売事業者やダイレクトマーケッターの場合、販管費と商品原価の合計が売上高の90.5%(営業利益率は9.5%)に達します。

これは、食料品店やドラッグストアなど、競争が激しく利益率の低いカテゴリーの93.9%よりも低い数字です。しかし、アパレルや家庭用品のような利益率の高いカテゴリーの88.6%を上回っています。

すべての小売業において、利益をアップさせることは厳しく、まずはコストを抑えることが最優先事項です。

デロイトの分析は、規模の大きい上場小売業を対象としていますが、スケリー氏によると「中小規模の小売業はコスト削減を可能にする技術リソースがないため、コストの上昇によってさらに利益が圧迫されている」と考えられます。

小規模の企業は、おそらくもっと利益の圧迫に直面していると推測されます。(スケリー氏)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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