日本企業の中国進出はなぜ失敗するのか。成功する越境ECに欠かせない条件とは?
越境ECが注目を集め、中国市場に興味を持つ企業は多い一方で、「中国との取引でこんな目に遭った」とか「中国に進出したけど失敗した」という話を聞くことも多い。そんな中、中国でB5M(バンウマイ)などを運営するiZeneが日本法人を設立した。「正しい流通とマーケティング戦略で日本の製品を中国市場に出したい」と言う。来日した創業者のイゴル・ユン氏に聞いた。
価格検索エンジンプラットフォームで海外商品を中国で販売
イゴル・ユン氏は中国、韓国、米国でベンチャー企業を次々と立ち上げてきた起業家。現在の主要事業は下記の通り。
B5M http://www.b5m.com/
B5M(帮5买/バンウマイ)は、中国国内の主要なネット通販会社やモールで販売されている商品「価格検索エンジンプラットフォーム」。サイトの会員は価格比較をした後、元の店舗に移動することなくB5Mから直接購入できる。韓国の大手広告代理店とアライアンスを組み、韓国のカルチャーやエンタメ情報の配信サービスなどからも集客している。
B5C http://www.b5cai.com/
B5C(帮5采/バウンチャイ)は卸問屋サイト。EC小売業者、問屋、または淘宝(タオバオ)に出品する個人商店主を主な対象にしたB2Bサイト。
BHB
BHB(バンハイベイ)は越境B2Cサイト。韓国の商品を中心に、B5Mが小売業者として販売を行っている。
iZeneの越境B2Bビジネスは2015年9月にスタートした。京東(ジンドン)や考拉(コアラ)などをビジネスパートナーに成長を続けている。
シリーズA〜C(シリーズとはベンチャーキャピタルなどが出資する段階のこと)で、総額6,500万ドルの調達を完了し、近くシリーズDで2億ドルを調達予定(米ドル換算)。
iZene創業者のイゴル・ユン氏に中国ECについて聞いた。
中国でECが伸びている理由
――いま、中国市場で人気なのは?
輸入元の1位が韓国、2位が日本、3位が台湾、4位がドイツで、おそらく5位が米国です。韓国からは半導体メモリーが多いので、コンシューマ向けの製品の1位は日本です。
買い物するのは女性が多いですが男性も増えており、消費のメインがEコマースに移ってきています。というのは中国では実店舗がそんなにないし、店舗に行くまでに時間もかかるし手間もかかる。そしてPM2.5など大気汚染があるから「あまり外に出たくない」と考えるのです。
日本ではウィンドウショッピングは楽しみですが、中国ではそうではありません。オンラインでショッピングをすることがメインになってきているのは事実です。
――ターゲットにしているジャンルは?
食品、衣類、化粧品などのジャンルにおいて、中国人は中国製品を信用していません。中国のそういう企業は倒産していっています。食品に関連するという意味では炊飯器などの調理家電も含まれます。
中国人は健康に気を遣っています。日本の商品も中国製が多いのですが、そこは気にしません。日本の企画なら人気があります。体や健康に直接関係がある商品については、今後も外国製品の人気は続くでしょう。
――海淘(ハイタオ)の流行は続くと?
今後も間違いなく続くでしょう。人々も裕福になっていますから。
なぜ日本企業の中国進出は失敗するのか
――なぜ日本企業の中国進出はうまくいかないのでしょうか。
中国でビジネスをする上でもっとも大切なポイントは「罰則」。紳士協定ではなく、お互いに罰則込みでビジネスを進めることが大切です。
日本人は信頼を大切にするのでありえないことですが、中国人は「罰則が与えられない」イコール「やってもいい」と考える。
海外企業がビジネスを進める上で、不履行による罰則を与えたくても方法がわからないことが多い。罰則がないと不利益を伴う取引がそのまま続いてしまいます。
iZeneの中国本部には強力な法務のチームがあります。契約の不履行に遭った場合、どういう罰則を相手に与えるべきかわかっており、すでに韓国のお客さまが抱えるトラブル解決のために動いています。今後は日本のお客さまにも同様に対応していきます。中国に法務のチームを置いて、リスクを最小限にするということは重要なポイントです。
また、弊社の場合は日本法人があるので、直接中国の企業と交渉する必要がないのもメリットです。直接中国の会社と交渉するのに比べてストレスがないでしょう。
――中国では送料無料が当たり前らしいですが、そういった競争は売り上げを圧迫しないのですか?
中国市場は巨大です。今後利益を生む可能性が高いのですから、たとえ今は利益が出なくてもシェアをとっていくということが重要です。ですから送料は重要ではない。最初は大金を失ってもトライしなければ成功できません。
日本の企業が中国で失敗する1つの要因は、そういうことを理解しないで最初に投資をしようとしないからです。中国のビジネスは最初に投資をして成功した企業がトップをとります。日本のように少しずつ投資をして徐々に成長させるという考え方はありません。
――中国でも口コミやレビューが重視されるようですね。
中国人は報道や広告に懐疑的なのです。買い物に関しては実際に買って試した人のことしか信じません。
もしネットに間違った書き込みをされることがあれば、その対応もしなければなりません。弊社なら中国のレベルの高いスタッフがサービスとして対応できます。そういう意味でも利益を与えることができます。
iZeneジャパンとは?
iZeneジャパンは中国や韓国に向けて販売したい日本企業の支援を行う。商品はiZeneジャパン指定の日本国内倉庫への納品なので、海外取引でよく起こる商品の紛失や汚破損などの心配がない。
また、支払いは日本円で日本国内決済のため為替リスクを回避できる。支払いサイトも日本の商習慣に対応可。また、販売に際してiZeneジャパンが責任をもって管理、運営を担当するという。
――中国進出を支援する企業はすでにありますが、既存のサービスとの違いは?
ビジネスには中国のやり方、日本のやり方、韓国のやり方があります。日本のやり方で中国でビジネスをしようと思っても上手くいきません。日本の常識ではありえないことが起こりますから。
我々はグローバルをベースにしています。日本には日本の商習慣を熟知している社員を、韓国には韓国の商習慣を熟知している社員を配置しています。それが既存のサービスとの違いです。
単に買って売って終わりというわけでなく、商品やブランドのマーケティングもお手伝いできますので、長いお付き合いをしたいと考えています。
――商品はどういう形で販売されるのですか?
B5Mでも販売しますし、京東や考拉でも販売します。中国本社に営業担当がいるので「この日本の商品がいかに良いかと」いうことをプレゼンします。中国人同士で言葉やカルチャーの違いがないので商談がしやすいと思います。
――日本の市場をどう見ていますか?
日本でのビジネスは2〜3か月前に始めましたが、日本では信頼を築くことがとても大切なので、ゆっくり伸びていくものだと考えています。初年度の目標は大体1億円を考えています。
韓国のビジネスも始めた当初はとても小さかったが、1年4か月前経った今は成長し、会社全体の8割が韓国から輸入された商品の売上になっています。日本での売上は韓国の倍は見込んでいます。
――日本でビジネスを展開するのは今回が2度目だそうですね。
日本にカムバックできて興奮しています。中国の一般消費者は日本の商品に絶大な信頼を持っています。障壁を取り除いて日本の企業と中国の消費者を結ぶチャネルを作りたい。
巨大なポテンシャルが日本市場にはあります。正しい流通とマーケティング戦略で日本の製品を中国市場に出していくとこに期待しています。それを正しく行うことでビジネスの可能性は大きいと見ています。
我々は単なる中国企業ではなくグローバルな企業です。それぞれの国の文化を知っています。それが大きな強みです。