メガネスーパーが「EC関与売上」をKPIに設定し、決算短信で公開した理由
メガネスーパーは「EC関与売上」をKPI(業績評価指標)として取り入れ、2017年5~7月期(第1四半期)連結業績の決算短信から「EC関与売上」の記載を始めた。
「EC関与売上」は実店舗に対するデジタルの貢献度を示す指標
メガネスーパーは、自社ECサイトの「メガネスーパー公式通販サイト」、「楽天市場」、「Amazon」、「Yahoo!ショッピング」、「LOHACO(ロハコ)」のほか、グループ全店で過去に購入したコンタクトレンズ用品を2タップで注文できるアプリ「コンタクトかんたん注文アプリ」などを展開。
現在、実店舗とECサイトなどのデジタルと店舗のチャネル特徴を生かしたオムニチャネル戦略を推進している。
「EC関与売上」は実店舗の顧客化を促すアプリを通じた小売事業における売上貢献額とEC事業売上高を合算した数値。実店舗運営に与えるデジタル施策などの貢献度度を数値化したもので、店舗とデジタル施策の相乗効果や、デジタル施策による店舗への“見えない効果”を見える化する方法とされている。
「EC関与売上」の数値化をいち早く取り入れていたのがカメラのキタムラだ。キタムラのEC事業では「宅配売上」(EC売上)、「店頭売取売上」を合算した数値を「EC関与売上」と、決算説明会資料などで公表している。
メガネスーパーのEC事業、オムニチャネル推進を統括する責任者・川添隆氏(店舗営業本部 デジタル・コマースグループ ジェネラルマネジャー)は、「EC関与売上」を新設した目的を次のように説明する。
アプリにおけるオムニチャネル施策の売り上げは、実店舗のP/Lに計上している。これは、小売りにおけるオムニチャネル戦略の両輪である「評価×利益が増える仕組み」を実現するためであり、お客さまの利便性を高め、実店舗が儲かる座組みを設計していきたいと考えている。一方、デジタルチャネルの成長性は別途、示していきたいと考えた。そのためにEC関与売上を新設した。
一方で、消費者の買い物行動が実店舗や複数のECサイトといったチャネル横断型になるなど、「単純にEC化率の向上を追っていくことがナンセンスになってきた」(川添氏)ことも背景にあるという。
当社のEC事業は約9割が自社ECサイトの売り上げだが、アパレルなどはモールの依存度が高い。私個人としてはこれまで、「自社EC化率こそ企業やブランドの信頼を表す指標だ」と言ってきた。
だが、EC売上≒自社EC売上になっている当社の場合、実店舗への貢献度を含めた「EC関与売上」が、今後はその信頼を示す指標に変わっていくと考えている。IRで発表しなくても、こういったKPIを取り入れる企業が増えていくだろう。私もカメラのキタムラやコメ兵の事例から影響を受けてきた。(川添氏)。
店舗部門とデジタル部門という組織の壁を取っ払ったり、デジタル施策が店舗運営に与える影響度を示すKPIとしての「EC関与売上」を取り入れる企業はまだまだ少ない。こうしたことを踏まえて、川添氏は次のように抱負などを語った。
将来的には、デジタルが関わるオムニチャネル施策の部分、つまり「EC関与売上」が増えることで、利益の絶対額が増える、もしくはより経営効率が良くなることを小売業界の一員として示していきたい。
メガネスーパーは、店舗・デジタルチャネルの双方の利用による「LTV向上 → 利益向上」、実店舗スタッフがアイケアサービスに集中できる企業観点でのオムニチャネルをめざしている。