岡田 風早 2018/9/26 6:00

ソーシャルログイン機能を実装したWebサイトにおいて、LINEログインの利用率が大きく伸びています。2016年末までは、Yahoo! JAPAN、FacebookやTwitterが主流でしたが、今後さらにLINEログイン機能やID連携の重要性が増していくことが予想されます。

ソーシャルログイン機能「ソーシャルPLUS」を導入し、5種類のログイン機能を実装する国内サイトのソーシャルログイン利用アカウントの割合(期間2017年12月~2018年1月)。
https://socialplus.jp/report/2018

さらなる需要が予想されるLINEログイン機能を実装することで、通販サイトにどのようなメリットがあるのか? Messaging APIを活用している事例とあわせて解説します。

LINEログイン導入後の効果

LINEログインは、UX向上に加えて企業の公式LINEアカウントへの貢献度合いが非常に高いです。具体的には下記の3点が同時に実現できます。順番に解説します。

  1. インセンティブなしで友だちが自然に増える
  2. ブロックされにくくなる
  3. ID連携率が上がる

1. インセンティブなしで友だちが自然に増える

「友だち数の増加」は、LINEの公式アカウントを作成して、一番悩むことでしょう。

従来、友だち追加を促すための代表的な施策の1つは、スタンプ配信やクーポンなどのインセンティブの提供でしたが、継続的に施策を考える必要があり、運用・コスト面がネックとなるケースも多くありました。

そこで注目を集めているのがLINEログインと連動する「自動友だち追加機能」です。「自動友だち追加機能」とは、ユーザーがLINEログインを利用してサイトに会員登録やログインをすると同時に、企業が運営するLINEアカウントへ自動で友だち追加できる機能です。

LINEログインと連携し、自社サイトに興味があるユーザーを会員登録フローに沿って、自然な流れのなかで友だちに追加できるため、特別な施策を考えることなく企業アカウントの友だちが増えていきます。

インセンティブによる登録ではなく、サイトに興味があって会員登録・ログインしているユーザーが友だちとして登録されるので、友だち登録後にLINEのメッセージ経由で購入・申込などコンバージョンする確率が高いのも特徴です。

実際にLINEログイン導入の前後で友だち数がどのように変化したのか、あるサービスサイトでの推移をグラフにしました(図1)。グラフを見てわかるとおり、LINEログイン導入後は、緩やかだった友だち数の伸び率が大きく向上していることがわかります。

図1 友だち数とブロック数の推移グラフ

また、LINEログインはLINE Ads Platform(LAP)とも好相性です。

LAPは、LINEのタイムラインやLINE NEWSなど、LINEのプラットフォームに配信できる運用型広告で、LINEユーザーに直接アプローチできます。広告誘導先のWebサイトにLINEログインがあれば、ユーザーはLINEアカウントを利用して簡単に会員登録できるため、新規会員数と友だち数を効率的に増やすことができます。

次のグラフ(図2)は、実際にLAPとLINEログインを併用して会員登録を促した広告配信の事例です。友だち数の推移を見ると、会員数の増加にともなうブロック率を上回る形で友だち数が大きく伸びています。自社サービスへの関心が高いユーザーをしっかり友だちにできていることがわかります。

図2 広告施策後の友だち数とブロック数の推移グラフ

2. ブロックされにくくなる

LINEアカウントの運用において、「友だち数の増加」と同じく、多くの企業が課題にあげているのが「ブロック率」です。ブロック率は、メッセージ配信の運用内容から大きな影響を受けるため、LINEログインを実装している場合でも、ブロック率10%を維持しているケースから50%超に上るケースまで、幅広い実績があります。

ブロックされにくい企業のLINEアカウント運用のコツは、次の5つです。上から順に実現しやすい施策になっています。

  1. 友だち追加したユーザー全員へのメッセージ一斉配信を避ける
  2. メッセージ配信数は週1回までにする
  3. LINE限定のセール案内や時限式クーポン配信を実施する
  4. カスタマーサポートでもLINEを活用している
  5. 発送完了や再入荷通知などの情報をLINEで受け取れる

ブロックをされる理由で多いのは、「自分がほしい情報が送られてこない」「配信の頻度が高すぎる」などです。つまり、メッセージの内容とタイミングが適切であるかがブロック率を左右します。

特に一斉配信よりもユーザー1人ひとりの属性や行動に合わせてセグメント分けしたメッセージ配信を活用した方が、「必要な情報が適切なタイミングで届く」というメリットをユーザーに感じてもらいやすく、ブロック率が下がる傾向があります。簡単な属性分けでも実施するに越したことはありません。

また、クーポンも単純な「○○円OFF」といったものより、商品を限定したり、先着順で利用できるクーポンにしたりするなど、「特別感」のある配信を行い、毎回同じ配信内容にならないよう工夫すると効果的です。

3. ID連携率が上がる

「ID連携率」は、あまり馴染みのない言葉だと思います。

LINEの企業アカウントの友だち数のうち、自社サイトの「会員ID」と「LINEのID」がひも付いている割合がID連携率と呼ばれています。このIDのひも付け、つまりID連携はLINEログインで行えます。

なぜ、ID連携率を上げることがLINEアカウント運用のメリットになるのか。それは、ID連携によってユーザーの会員情報を活用したセグメントメッセージが配信可能だからです。1人ひとりにパーソナライズされたメッセージ配信によって、効果を最大限に高めることができます。

LINEの企業アカウントから、一斉配信ではなく特定のユーザーへメッセージを配信する場合の条件として、次の2点が必要です。

  • 友だち追加されている(ブロックされていない)
  • ID連携が完了している

この条件を満たすことで、ユーザーの会員属性やサイト訪問履歴、購入履歴に応じたメッセージをLINEで配信できるようになります。ユーザーにとって最適な情報を、最適なタイミングで届けられるため、LINEのメッセージ経由の購入数やCVR向上、売り上げの増加にも貢献しやすくなります。

どれだけ友だち数が多くても、ID連携率が低くては、一番効果が高い、1人ひとりのユーザーへのセグメント配信数が少なくなってしまい、LINEのメッセージを生かしきれません。

一斉配信と比較して、属性分けしたセグメント配信のCTRが約7倍に達した実績もあります。

図3

LINEのID連携で成果を上げる企業たち

ここからは、弊社のソーシャルログインサービスを利用する企業のなかから、LINEのID連携率が高く、成果を上げている事例を紹介します。

ID連携率が高い企業として、「ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)」と「NTTぷらら」の取り組みを紹介します。どちらもID連携率が9割と、非常に高い連携率を達成しています。

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)

ゴルフポータルサイトを運営するGDOは、GDOクラブ会員の情報とLINEアカウントをID連携すると応募できるキャンペーンを実施しています。

LAPを活用してキャンペーンのランディングページに誘導する広告を配信し、キャンペーン応募をフックに友だち数とID連携数を増やすことに成功しました。

このようなID連携を条件にしたキャンペーンは、新規ユーザーだけでなく、既存ユーザーのID連携も促せます。

GDOの場合、LINEでID連携したユーザーは、他のユーザーと比べてサイト内での購入や予約などのアクティブ率が高かったという実績がありました。新規および既存ユーザー向けのキャンペーン案内を積極的に行い、LINEのID連携を促す施策を継続しています。

図4 GDOのLINE ID連携キャンペーン(現在は終了)

GDOはLINE連携したユーザーに対して、LINEのメッセージを配信しています。ユーザーは、重要な通知を手元のLINEアプリですぐ確認できるためわかりやすく、メリットとなっているようです。

NTTぷらら「ひかりTVショッピング」

家具家電・雑貨類などを取り扱うECサイト「ひかりTVショッピング」を運営するNTTぷららでは、LINEアカウントとID連携したユーザー限定のお得な情報やクーポンを、LINEのメッセージで配信しています。

「LINE限定クーポン利用でポイント50倍」や「LINE限定のタイムセール案内」など、ID連携から商品購入へ直結しやすい施策を打っています。

ひかりTVショッピングのLINEは、メッセージ配信頻度が比較的高いのですが、クーポンを利用できる商品が毎回異なる点や、ポイント50倍というインパクト、さらに先着順という点が、ユーザーを飽きさせないお得感のある配信内容となっています。

図5 ひかりTVショッピングのLINE ID連携キャンペーン(画像は2018年8月時点のもの)

配信するメッセージの内容を、ユーザーを飽きさせず、お得感を感じられるものにすることで、ユーザーに「ID連携した方がいい」「ブロックせずに継続して情報を受け取りたい」と感じてもらえている良い事例だといえます。

オンラインだけじゃない、実店舗のLINEログイン連携

LINEログインをWebサイト上の施策だけではなく、実店舗と連携させて有効活用する企業も増えてきています。

特に最近注目を集め、導入事例が増えてきているのが、LINEログインを活用したポイントカード・会員カードの発行です。

具体的には、次のような流れでLINEと連携したポイントカードの発行が可能です。

  1. 店舗にあるPOPのQRコードを読み取り、会員登録フォームを表示
  2. LINEログインで会員登録を行い、自動でLINEアカウントに友だち追加
  3. 会員登録完了後、会員バーコードが表示されたマイページ(ポイントカード画面)を表示

次回来店時にポイントカードを提示する際は、友だち追加した店舗のLINEアカウントのトーク画面にある「リッチメニュー」をタップするだけで簡単に提示できます。

リッチメニューからポイントカードを開くと同時に、LINEアプリ内ブラウザで自動的にLINEログイン(オートログイン)が行われます。いちいちID/パスワードを入力してログインする手間がなくて便利です。

このように店舗側は、店頭での会員登録手続き用紙による会員登録やポイントカード発行をオンラインに置き換えることで、オペレーションを効率化できます。

また、ユーザー側は手持ちの物理カードを増やさず、登録用紙に記入する手間を省いてポイントカードを発行できます。しかも、店頭でのお買い物時には、手元のLINEアプリで簡単に会員カードを提示してポイントを貯められます。

店舗とユーザー双方にとってメリットのある施策です。

図6 実店舗のLINE ID連携イメージ

会員登録率を上げる有効な施策の1つは、可能な限り入力項目を少なくすることです。情報入力の量によって、ユーザーの会員登録のしやすさが大きく変わります。

LINEログインと連携した会員登録であれば、メールアドレス(契約条件と審査を経て電話番号が取得できる場合もあります)が取得できるので、登録フォームにメールアドレスが自動入力(フィルイン)される実装も可能です。

また、実店舗だけでなくオンラインショップもある場合は、会員カード発行とオンラインショップの会員登録も兼ねることで、ユーザーはオンラインショップも同時に利用可能になります。ポイントシステムがあれば、実店舗で貯めたポイントをオンラインショップで使うなど、ユーザーの利便性向上につながります。

店舗側としては、ポイントカード発行と同時にLINEとID連携した自動友だち追加ができれば、DMやチラシを電子化してLINEで発行できるため、コスト削減も期待できます。

ただし、ポイントシステムやPOSが関わると開発規模が大きくなります。

オンラインショップとの融合だけでなく、ビーコンの活用、QRコード決済など、実店舗のデジタル化の可能性は広がる一方なので、できるだけ早い段階で基盤を整えておくことは、今後新たな施策を行ううえで大きな差を生むことになるでしょう。

LINEアカウントのID連携でユーザーサポートを向上

LINEを活用した施策として、LINE@の1:1トークをカスタマーサポートとして活用する事例や、LINEのカスタマーコネクト※1によるAPIとチャットボットを活用した大規模カスタマーサポートの事例が増えてきています。

※1 LINE カスタマーコネクト:LINEが提供する法人向けカスタマーサポートサービス。コンタクトセンターがLINEを介して、AIや有人によるチャット対応や音声通話対応などをシームレスに行い、状況やニーズに応じた適切なカスタマーコミュニケーションを実現できる。

モバイル向けアパレルECサイト「dazzystore」を運営するdazzyは、カスタマーサポートにLINEを導入し、電話・メールとあわせて活用しています。

ECサイトの会員IDとLINEアカウントのID連携を実現したことで、従来よりも問い合わせ対応がスムーズになり、解決までの時間を短縮するなどの効果を上げています。

たとえば、LINEで問い合わせを受けたときに会員IDと連携していれば、注文状況や契約内容の確認など、本人確認が必要な問い合わせについて、会員IDをキーにして本人確認フローを省略できます。電話やメールでは、どうしても1件あたりの問い合わせ内容が長くなりがちでしたが、スムーズなコミュニケーションが可能になり、サポートの効率化につながっています。

商品の色やサイズの問い合わせであればチャットだけでも十分ですが、LINEアカウントとID連携していれば、ユーザーを特定した本人確認済みの状態で回答できます。

LINEをカスタマーサポートで活用する懸念点として、サポートチャネルの増加による学習コストと運用コストがあげられます。しかし、それを上回るメリットがあります。

  • メールと比較してユーザーの返信が早く、即日クローズ率が高い
  • 電話やメールよりも気軽に問い合わせできる
  • 電話やメールと比較して1件あたりのサポートコストが低い
  • 本人確認フローが必要ない(LINEアカウントとID連携している場合)

また、LINEでセグメント配信したメッセージに対してLINEで問い合わせできると、ユーザーは企業とのコミュニケーションをLINEで完結できるため、満足度が高まる傾向にあります。

導入に踏み切るまでハードルはいくつかありますが、大きなメリットもあるのため、中小規模のカスタマサポートでも導入する企業が増えていくといいと思っています。

◇◇◇

LINEの国内月間アクティブユーザーは7,500万人とされ、いまやLINEはインフラと言っても過言ではないサービスになっています(LINE2018年7月~9月媒体資料)。

これからも新しい施策が次々と生まれてくるでしょう。企業としては、売り上げ向上だけでなく、ユーザーの利便性や体験価値、中長期的なカスタマーエクスペリエンスの向上なども考慮すると、ユーザーと良い関係が築けるでしょう。

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