楽天の「送料込みライン」施策の任意スタート、楽天ユニオンの見解は?
楽天が「共通の送料込みライン」施策の延期措置を発表したことを受け楽天ユニオンは3月10日に会見を実施、措置内容について「出店者は『送料込みライン」施策対象外の申請を行う必要があり、対象外となる期限も決められていない。今回の発表は『送料込みライン』の撤回ではなく、事実上の強制導入である」と説明した。
導入が任意となった「送料込みライン」施策
楽天は3月6日、「全店舗対象予定だった送料込みラインの導入を、出店者が任意で設定できるようにする」と発表。「新型コロナウイルスの感染が拡大していることへの対応措置」という。「送料込みライン」導入を任意で設定できるようにする。期限は設けない。
専用フォームから申請を行い、RMS上で配送方法(送料)の設定を行った出店者を対象外とする。一方で、「送料込みライン」を導入した出店者には一定期間、支援金を提供する「安心サポートプログラム」を展開。サポートプログラムの提供には条件を設ける予定で、期間は数か月程度とのこと。
また、専用の「特設サーチ」を設け、該当する出店者の商品のみ表示する施策を行う。
措置に対する「楽天ユニオン」の見解は
楽天ユニオン代表の勝又勇輝氏は「申請がなければ新型コロナウイルスの影響がないと見なされ、自動的に『送料込みライン』が導入される。これは『送料込みライン』導入の撤回ではない、事実上、『送料込みライン』の強制実施である」と述べた。
楽天から提示された申請方法や送料設定について、楽天ユニオン副代表の坂井健一氏は、「店舗に通達されてから完了期限まで6営業日しかない。新型コロナウイルスの影響で人員不足になっている中で、設定に時間や知識を要する作業を期限までに完了することは大変厳しい」と説明した。
「送料込みライン」の任意設定期限が設けられておらず、5月ごろをメドに詳細を発表する点について、顧問弁護士の川上資人氏は下記のように述べた。
「送料込みライン」の任意設定期限が設けられていないということは、今後、期限が設定される可能性がある。また、「送料込みライン」導入に賛成できない店舗が、かなりの手間をかけて除外申請をしなければならないことは問題があるのではないだろうか。
全店舗導入は延期されたが、詳細を5月頃に発表するということは「送料込みラインの撤回ではない」ととれる。
緊急停止措置命令を撤回させたいのであれば、楽天がすべきことは「確約手続き」(独占禁止法違反の疑いについて、公取委と事業者間の合意により解決する仕組み)を行うことだ。公式な方法を行うことで、「楽天市場」に出店している店舗が安心してフェアに運営が行えるようにする。そうすれば、楽天も店舗もwin-winの関係で成長していけるようになる。
楽天ユニオンが三木谷氏に直接提言しない理由
3月5日に行われた「楽天市場出店者 友の会」の会見で、「友の会」は対話を求める訴えを「三木谷氏に直接提言した」と発言した。
直接三木谷氏に意見を述べない理由について、坂井氏は「常にECCや楽天の『RON会議室』で訴えている。RON会議室は三木谷氏も『見ている』と言っているため、直接伝える必要はないと考えている」と回答。「『直接トップに言わなければ動かない組織だ』と考えることは、楽天で働く社員や役員に対して失礼だと考えています」と続けた。
また、「実際に『RON会議室』で対談を申し込んだ出店者がいたが、断られてしまった」(坂井氏)事例があることや、「店舗を守るため」であることも理由としてあげた。
楽天ユニオンのゴールは?
楽天ユニオンは今後の活動などについて、次のように説明している。
「楽天ユニオン」がネガティブな報道をされてまで声をあげる理由は、「少しでも中小・零細企業を守らなければならない」と考えているから。楽天を叩きたいからではなく、「中小・零細企業が将来、『楽天市場』で安心して運営を行える、より公正な市場を守っていく」という気持ちで取り組んでいる。(川上氏)
今後、協同組合になる予定です。ヤフーなどを含めたEC全体をより良い商売ができる環境にしていくことを目標としている。(勝又氏)