【2020年消費まとめ】コロナ禍で消費はどう変わった? 「EC」と「コンテンツ配信」が大きく伸びた1年
ジェーシービー(JCB)とナウキャストは1月27日、JCBカードの取引データを活用した国内消費指数「JCB消費NOW」を用いて、2020年1月から12月までの消費動向の総括を発表した。
それによると、2020年の消費動向は大きく以下1~4の動きに特徴づけられるという。
- 3~5月:新型コロナウイルス感染症拡大(「第1波」)、それに伴う外出自粛の動きによるサービス消費の大幅な下落
- 5~6月:「第1波」で大きく落ち込んだサービス消費の大幅な回復
- 8~10月:「第2波」と天候不順による回復のもたつきを経たサービス消費の再回復
- 11月以降:「第3波」によるサービス消費の再下落
全体的な消費動向
「旅行」は4月と5月にそれぞれ前年同月比93.1%減と90.3%減を記録。その後は回復基調にあったが、11月からの「第3波」を受けて減速した。
「外食」も「第3波」を受けて11月から減速した。「娯楽」は「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の大ヒットなどもあり、10月に前年同月比4.1%減にまで回復したが、「第3波」を受けて11月からやや減速している。
「百貨店」は「第1波」時の落ち込みからは回復しているものの、マイナス圏内で足踏みが続く。「スーパー」は年間を通して堅調に推移した。「コンビニエンスストア」は、9月までは前年同月比でプラスを維持していたが、10月にマイナスに転じた。
「EC」と「コンテンツ配信」は「第1波」以降、「第3波」下でも好調を維持している。特に「コンテンツ配信」は5月以上に大きく伸長し、12月に前年同月比48.6%増を記録した。
業種別トピック
各種小売業態においてECが拡大した。「アパレル」「医療品・化粧品」は、対面消費の減少分を上回る伸びをEC売上で記録。「飲食料品」は対面売上の減少分をECでカバーした。
外食は「GoToイート」の効果が現れる前に「第3波」到来で減速。「GoToイート」が順次始まった10月は「居酒屋」が伸びた。11月からの減速傾向は主に「第3波」による自発的な自粛によるものと推測。11月末からの飲食店の時短要請が加わり、12月も減速傾向が続いた。
年齢別・男女別トピックス
ECの伸びは年齢層が低いほど目立っている。「EC」は全年齢層で伸びており、年齢層が低いほど伸びが顕著となる傾向。ほとんどの年齢層で5月に最大の伸び率を記録している。
女性は宅飲み傾向が高い。外出を伴う「居酒屋」は、男性に比べて女性の消費の伸び率が低い。一方「酒屋」は、1月後半以降ほぼ一貫して女性の消費伸び率が男性を上回っており、女性の方が宅飲み傾向が高いことがうかがえる。
有識者の分析と予測
野村證券 金融経済研究所 経済調査部 シニアエコノミスト 水門善之氏
今後のポイントとしては、①コロナ禍で進んだECの普及が、コロナ収束後の世界でどの程度定着を続けるか②コロナ収束後に期待される人々の消費行動の活発化(いわゆるリベンジ消費)のインパクト、に注目したい。
東京大学経済学部長、ナウキャスト 創業者・技術顧問 渡辺努氏
同じ商品・サービスではあるけれど、感染を回避するために、これまでとは異なるチャネルで購入する。消費の場面のいたるところでこうした代替が起きていることを「JCB消費NOW」は教えてくれる。
だが、起きていることが代替だけであれば、消費の総額は変わらないはずだ。実際には、「JCB消費NOWの」モノとサービスの支出の和は落ちている。これが第2の特徴だ。所得が減ったので消費総額が落ちているという面ももちろんあるが、所得が減っていない人でも消費総額は減っている。これは代替商品の値段が安いからだ。
この構図はステーキだけの話ではなく、ECなどオンライン絡みでも同じではないか。代替先の商品・サービスの質が低く、結果として安く上がり、貯蓄が増えるというのはコロナ収束まで続く。
「JCB 消費 NOW」は、プライバシーを保護した形で加工したJCBカードの取引データを活用してJCBとナウキャストが算出した、現金を含む国内の消費全体を捉えた消費動向指数。