コロナ禍でEC活用はどう変わった? EC利用率は33%、利用拡大の意向は44%、EC活用を検討している企業は約2割
新型コロナウィルス感染症拡大で日本企業のEC活用はどのように変わったのか? 日本貿易振興機構(ジェトロ)が、海外ビジネスに関心の高い日本企業約1万3000社を対象に行った「2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」から、日本企業のEC活用の現状、海外向け販売の取り組み状況を見ていく。
日本国内のEC販売
商品販売でECを活用している企業は33%
国内外での商品販売でECを利用したことがあると回答した企業は回答企業全体の33.3%。このうち中小企業の割合が前回調査(2018年度)と比べて4.1ポイント増の34.3%と増加した。
今後、ECの利用を拡大すると回答した割合は43.9%。企業規模別にみると、大企業が28.5%、中小企業が46.7%。中小企業のEC利用の拡大意欲が強い。
利用したことがないが、今後の利用を検討している割合は20.2%。中小企業で22.3%、大企業で8.5%。
EC利用率を業種別にみると、繊維・織物/アパレル、小売、医療品・化粧品、木材・木製品/家具・建材/紙パルプ、飲食料品でEC利用の割合が50%以上となっている。
今後の利用拡大が見込まれるのが建設業。ECを利用したことがある割合は1.3%にとどまるが、今後の利用検討が23.1%にのぼっている。
売上高に占めるEC販売額の比率は10%未満が最多
売上高に占めるECの割合(ECによる販売額/売上高)は「1~10%」が37.3%、「1%未満」が36.0%で、全体の7割強を占めた。
規模別では、大企業では「1%未満」が49.6%で最多、中小企業は「1~10%」(38.7%)が最も多かった。
EC利用の課題では、「販売先に関する情報不足」(38.5%)や「ECサイトや提携相手に関する情報不足」(31.2%)が多い。そのほかには、「インフラにかかるリスク」「必要な社内人材の不足」なども上位にあがっている。
海外向け販売
EC実施企業のうち65%が海外向け販売でECを活用
ECの活用実績がある企業のうち、海外販売でECを活用している企業は65.0%。海外販売のうち、日本国内から海外向けの越境ECを活用している企業の割合は45.5%。越境ECの利用率は、大企業の34.8%に比べ、中小企業が47.0%と10ポイント以上高い。
海外販売でECを利用する際の販売方法は、国内自社サイトでの販売が35.4%で最多。次いで多かったのが一般貿易型のEC販売。海外のECモールに出店(出品)し、海外の輸入者との間で貿易手続きを行い商品をあらかじめ輸送、受注後は海外の輸入者から商品を発送する方法だ。
国内ECモールなどへの出店は20.7%、海外ECモールなどへの出店は25.1%だった。
海外向けECでの販売先について、最も多いのは中国で47.6%。2位は米国(36.6%)、3位は台湾(28.8%)。いずれも前回調査から回答比率が上昇している。重視する販売先としては中国をあげる割合が最多だった。
今後の販売先としては、中国(46.3%)、米国(37.1%)、台湾(31.1%)をあげる企業が多かった。
最重要視する国・地域にベトナムをあげた企業の割合は6.2%で、3位に入った。若年人口割合の高さ、高いインターネット普及率、伸び続けるスマートフォンの普及率により、東南アジア地域でEC事業の将来性が最も高い市場と言われている。
EC売上に占める海外向け販売の割合は1%未満が最多
EC販売額のうち、海外向けが占める割合(ECによる海外向け販売額/ECによる販売額)は1%未満(48.1%)が最多。「1~10%未満」は23.1%。一方、海外ECが「91~100%」を占める企業は6.6%もあった。
海外向け販売でECを利用している企業では、「販売先に関する情報不足」(50.3%)に加え、「自社ブランド認知度向上の難しさ」(42.5%)、「商品の価格競争」(39.3%)を課題にあげる企業が多い。