石居 岳 2021/11/26 8:00

TSIホールディングスは、オンラインの顧客行動データと店舗在庫データを組み合わせた新たな顧客体験価値の開発に着手する。

子会社のTSIが展開するアパレルブランド「ナノ・ユニバース」の3店舗(ラゾーナ川崎プラザ店・ららぽーとTOKYO-BAY店・ららぽーと横浜店)で「顧客の“タッチ”から始まる店舗体験」の実証実験を始める。

「顧客の“タッチ”から始まる店舗体験」のイメージ動画

「顧客の“タッチ”から始まる店舗体験」は、店頭に設置した筐体(きょうたい)に顧客が自身のスマートフォンをタッチすることでチェックイン。タッチした来店者には、「ナノ・ユニバースオンラインストア」およびアプリでの閲覧履歴、お気に入り登録のデータを基に、店頭在庫のあるお気に入り商品の表示、店頭購入できる商品のレコメンドを提供する。

TSIが展開するアパレルブランド「ナノ・ユニバース」の3店舗で「顧客の“タッチ”から始まる店舗体験」の実証実験を行う
店頭に設置した筐体

実店舗でも来店者1人ひとりがパーソナライズ体験を受けることができるようにする。

実証実験では、以下の内容を実現する。

  • ECでお気に入り登録している商品で、チェックインした店舗に在庫がある商品の表示
  • 過去にECで閲覧していた商品をベースにした、店舗に在庫がある商品のレコメンド
  • チェックインした店舗のベストセラー商品の表示

チェックイン機能は、今後の実証実験および顧客からのフィードバックでアップデートを行い、新たな機能も実装していく予定。現段階では、実証実験に活用する店舗での顧客行動データは「チェックインしたかどうか」のみとなる。

実証実験においては、顧客が事前に本実証実験の内容を理解した上でチェックインを行うことができるよう、実証実験を実施する店舗での説明掲示、店舗スタッフから顧客に対する説明を行う。

TSIが展開するアパレルブランド「ナノ・ユニバース」の3店舗で「顧客の“タッチ”から始まる店舗体験」の実証実験を行う
実証実験の発想は「オンラインとオフラインのデータをつなぎ「個」を捉える。タッチで店舗での主導権を顧客に」

今後は、チェックインした顧客のデータを店舗スタッフが見て接客に活用、接客自体の履歴を蓄積・活用することも視野に入れる。また、チェックインによって享受できる体験向上施策や機能もアップデートしていく。「どのようなデータの解析と活用が、顧客体験の向上に還元され得るのか」という観点から、実証実験を進める。

実証実験の成果を踏まえ、ナノ・ユニバースの他店舗、TSIグループの他ブランドの店舗にも本システムを展開していく予定だ。

なお、実証実験はCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE(カルテ)」を提供するプレイドと協業する。

「顧客の“タッチ”から始まる店舗体験」実証実験の概要
「顧客の“タッチ”から始まる店舗体験」実証実験の概要

実証実験の狙い

EC化率は約50%とTSIグループが展開するブランドのなかで高い水準を誇る「ナノ・ユニバース」。実証実験の狙いは、「点ではなく線で顧客体験を捉え、顧客視点で店舗の価値を再定義する」。

「ナノ・ユニバース」のEC利用者を対象に実施した調査によると、回答者の59%が店舗へ行くきっかけに「Webサイトで見た商品の実物が見たい」をあげている。それを踏まえ、次のように説明する。

顧客を「個」として、点ではなく顧客接点をつないだ線として捉えられれば、1人ひとりの体験の把握に時間軸をもたらすことが可能。これにより、ある接点のみのコンバージョンの最大化ではなく、ECと店舗をつないで時間軸をもって体験向上を図ることができ、結果として、ロイヤリティとLTV向上をめざすことができる。

店舗のあり方、その価値が改めて見直されたコロナ禍。商品を手に取り、専門知識をもつスタッフとコミュニケーションできる店舗が重要な顧客接点であることも再認識された。

本実証実験によって、ショールーミングなどオンラインとオフラインを行き来しながら買い物を楽しむ顧客との関係構築における店舗の価値を再評価し、商品・スタッフ・データというアセットを生かしながら、顧客視点で店舗体験を設計することが可能になる。

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