Digital Commerce 360 2022/1/20 8:00

企業やブランドは2022年以降、個人、人間関係、そして本物のナラティブ(編注:直訳すると「物語」「話術」などを意味する)をベースに、意味のあるストーリーとつながりを構築していく必要があるでしょう。

予測不可能なことをあえて予想するのは困難です。2021年のデジタルメディア業界は、予測不可能なことばかりでした。そんな環境下、デジタル広告のエコシステムは絶好調で、2025年までに2000億ドル以上まで収益が伸びると予測されています。

独立系プログラマティック・トレーディング企業であるAudienceXは、システム上を流れる数百テラバイトのデータを通して、デジタル広告について独自の知見を得ています。そのため、2022年に何が待ち受けているのか、かなり正確に把握することができます。

1. メタバースの拡大は誇大広告ではない

別の言い方をすれば、MR(Mixed Reality、複合現実)が主流になる準備が整っているということです。

5Gの登場は、リアルタイムでのデータ通信と、より速くよりリッチで驚異的なグラフィックスの配信を可能にします。2022年は、Z世代とミレニアル世代の消費者と、彼らにサービスを提供する先進的なブランドが成長する場として、仮想世界と没入型技術がより重視されるようになるでしょう。

世界の拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、複合現実(MR)市場は、2021年に307億ドルに達し、2024年には3000億ドル近くにまで上昇すると予測されます。

この傾向は特にAPACで顕著ですが、米国でもすでに定着しています。Gucci、Nike、Disney、Snapなどのブランドは、バーチャルコミュニティ、コンテンツ、アセット、ファッション、アート、体験などさまざまな世界を創造し、メタバースに備えつつあります。

Gucciはオンラインゲームのプラットフォーム「Roblox」上にバーチャルのグッチ ガーデンを期間限定でオープンした
Gucciはオンラインゲームのプラットフォーム「Roblox」上にバーチャルのグッチ ガーデンを期間限定でオープンした
Nikeは「Roblox」にメタバース空間「NIKELAND」を開設した(編集部が動画を追加)

Facebookは、ソーシャルプラットフォームではなく、メタバース企業であることを主張するために、Metaに社名を変更しました。また、eスポーツブームが、複合現実への移行をさらに加速させていくでしょう。

2. 10代の若者をネット上で見つけるのが難しくなる 

10代の若者はスマホやタブレットから離れるどころか、ますます多くのことをオンラインで行うようになっています。その一方で、10代の若者をターゲットにしたマーケティングに対する規制や制限が強化されており、有意義で的確な方法で10代の若者にリーチすることは、今後ますます難しくなっていくでしょう。

Meta(旧Facebook)は7月、18歳未満のユーザーに対しては、アフィニティ・ターゲティング広告を認めないことを発表。Metaは未成年者を含むオーディエンス・セグメントを自動的に削除しています。

この方針は、2022年には他のソーシャルプラットフォームも適用し、未成年者のデータ保護を強化。プラットフォームにとってコストのかかる訴訟や規制を先回りして回避することになると思われます。

革新的なブランドは、ソーシャルプラットフォームに依存するだけでなく、10代の若者を見つけるために、類似オーディエンスリストをターゲティングするルックアライクターゲティングのような新しい戦略を検討する必要があるでしょう。

3. TikTokはメインストリームの広告主にとって成熟した媒体に

TikTokは2021年、限定キーワードターゲティングを導入し、広告主はキーワードとハッシュタグの使用に基づいてオーディエンスにリーチすることができるようになりました。

これは現在、季節や祝日をテーマにしたキーワード(ハロウィン、冬休み、新年などのワード)に限定されていますが、2022年にはよりニュアンスの異なるオプションに拡大し、すべての広告主が一般的に利用できるようになると予想されます

賢いブランドは、この重要なグローバル・プラットフォームで、早くから実験する準備を整えておく必要があります

Cookieに代わるより革新的な手段はAIで

より多くの広告主がデジタル空間に参入するにつれ、それを突破して可視性を高めることがますます難しくなっていくでしょう。

そこでブランドにとって特効薬となるのが人工知能(AI)です。ブランドとマーケティング担当者は、AIを活用したオーディエンス・ソリューションに向かうはずです。

また、マーケティング担当者は、Cookieに代わるより革新的な手段を迅速に見つける必要があります。IDベースのソリューションが勢いを増している一方で、多くの企業は、行動データの使用における透明性の欠如を依然として問題視しています。

賢明なマーケターは、スピードと精度に優れたAIを使用し、可視性を保証するプラットフォームやプレースメントに投資すべきです。AIは、あらゆる雑音をかき分けてメッセージを届けるためのツールとして、ますます価値が高まることでしょう。

4. デジタル広告市場に不可欠なAIも、SNSのアルゴリズムが非難の対象に

米国の超党派の下院議員グループが「フィルターバブル透明化法案」を提出。ソーシャルメディアプラットフォームに、ユーザーが見るコンテンツにフィルターをかけたり優先順位をつけたりするアルゴリズムなしでサービスを利用できるよう、強制する可能性が出てきました。

この法律は、消費者にアプローチするためにアルゴリズムへ依存しているマーケティング担当者にとって、大きな変化を意味する可能性があります

これほど劇的な変化には、戦略の全面的な見直しと、それに対応するためのAIが必要となります。賢明なブランドは、この潜在的な未来に備えて、今すぐ広告エージェンシーと協力すべきです。

5. オーディエンス・モデリングはブレイクスルーを遂げようとしている

サードパーティCookieの廃止に伴う明るい兆しは、2022年に起こるであろうオーディエンス・モデリング(編注:オーディエンスを特定するためのデータ駆動型アプローチ)の飛躍的な進歩です。

AIを搭載したソリューションなど、はるかに有用なオーディエンス・モデリング・オプションがすでに存在しています。オプトインの消費者追跡パネル、場所、時間帯、コンテクスト・インサイトなどのデジタルシグナルを使用することで、AIをオーディエンスとパフォーマンスの予測に役立てることができるようになりました。ファーストパーティデータは今後、大きな役割を果たすでしょう。

マーケティング担当者がプラットフォームやデバイスを越えて個人にアプローチし、真に豊かなエンドツーエンドの顧客とブランドの信頼関係を実現するためには、カスタマージャーニーのすべての段階でデータを活用することが、これからの時代には不可欠になります

◇◇◇

誰が見ても、2021年は特別な年でした。しかし、2022年以降に目を向けると、顧客とブランドの双方に利益をもたらす、より有意義なカスタマージャーニーへの希望が見えてくるのです。ブランドが、個人、人間関係、そして本物のナラティブをベースに、意味のあるストーリーとつながりを構築するための環境が用意されています。新たな展開が本当に楽しみです。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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