移動型店舗はEC事業者の新たな販路になるのか――。人口が集中する東京都内の商業施設、オフィス、マンション、公園などの公共施設の空きスペースで商売を手がける移動型店舗サービス。これを新たな販路として活用しようと試みたEC企業がある。北海道の海産物や農産品などをネット販売するノース物産だ。運営するECサイト「最北の海鮮市場」は2006年の立ち上げ。老舗ECサイトを運営するノース物産が挑戦した新たな試みを取材した。

リアル販売は未来の開拓、将来の投資

「最北の海鮮市場」は、カニ、海産物、農産物、ラム肉など北海道の“美味しい”食材を販売するECサイト。

2013年には、北の達人コーポレーションが立ち上げたことで知られる北海道の特産品を販売する通販サイト「北海道・しーおー・じぇいぴー」(北の達人コーポレーションは2011年、広告代理店へ売却済み)を買収。2015年には「最北の海鮮市場」と統合した。

ネット通販以外での商品販売は、北北海道の食のイベント「食べマルシェ」での催事販売のみ。移動型店舗サービスの取り組みはノース物産にとって新たな取り組みであった。ノース物産の鈴木洋一常務取締役は移動型店舗サービスへの挑戦についてこう話す。

リアルでの販売は興味あった。リアルでの販売は社員教育、新規開拓、既存顧客とのコミュニケーション深化などにもつながる未来を開拓する、将来への投資という観点から今回の取り組みにチャレンジした

ノース物産 鈴木洋一常務取締役
鈴木洋一常務取締役

ただ、地方企業が都内の人口が集まる場所でリアル販売を行うには、場所選定から確保、売り場作りなどさまざまなハードルがある。これらのハードルを一気に解決するインフラを活用した。住友商事が提供する移動型店舗サービス「ショップモビリティ」だ。

「ショップモビリティ」は小売りとモビリティの融合により、新たなシナジー効果の創出をめざす住友商事の新事業。人気商業施設、オフィス、マンション、公園などの公共施設の空きスペースに車両を用意し、場所の組み合わせで最適な店舗空間を構築する。

住友商事の「ショップモビリティ」について
「ショップモビリティ」について

リアル販売の1つの手法として代表的な催事とは何が異なるのか? 催事は多くの出店者が1つの場に集まるが、「ショップモビリティ」は「自分のお店が主役になる」(鈴木常務)

住友商事 「ショップモビリティ」の全体像
「ショップモビリティ」の全体像

「ショップモビリティ」で期待される効果

プロモーション効果

顧客が実際に商品を手に取ったり、展示物を見たりできる。そのため、ECサイトを中心に運営しているような顧客接点が少ない店舗にとって、ブランドの認知向上に効果的

オンラインの集客に加え、店舗ディスプレイなどの世界観を顧客が体験すること可能。ブランディング向上、プロモーション強化が期待できる。期間限定で出店するため話題性があり、SNSなどで店舗の写真や感想が発信、拡散されることでさらなる認知度向上が望める。

顧客との関係を構築

リアル店舗での販売では、販売スタッフと顧客とのコミュニケーションを取りやすく、対面接客を介して商品の特徴や使用方法を伝えやすいというメリットがある。来店した顧客に対し、その後オンラインでのコミュニケーションに展開することで、リピーター顧客の獲得にもつながる

実店舗出店に向けたテストマーケティング、効果測定が可能

期間限定という特徴を持つ「ショップモビリティ」は、常設店舗と比べて効果測定を行いやすいというメリットがある。来店数、SNSでの反響、店舗名の検索数などのデータを実施期間とそれ以外の期間で比較することで、実施による販売促進効果を測定できる。

住友商事 「ショップモビリティ」が提供する価値
「ショップモビリティ」が提供する価値

リアルでの販売は新たな発見がある

ノース物産が出店したのは東京・丸井吉祥寺店。自宅で簡単に楽しめる「最北の海鮮市場」専用のオリジナルスープカレー(冷凍食品)などを、7日間にわたって提供した。

丸井吉祥寺店のスペースに置いた車両では、オリジナルスープカレー「saihokまるごとチキンスープカレー」と共に、QRコードを掲載したチラシを配布。自宅に帰り食したユーザーからの「リピート購入が増えた。リアルからネットへの送客ができたと感じている」(鈴木常務)

ノース物産が販売するオリジナルスープカレー「saihokまるごとチキンスープカレー」
オリジナルスープカレー「saihokまるごとチキンスープカレー」(画像はイメージ)

今回の取り組みで新たな発見もあった。「リアルの場で『最北の海鮮市場』のECサイトを知り、再びECサイトで商品を購入した人はモチベーションが高い。そのためリピート率も高くなっている」(鈴木常務)

住友商事 ショップモビリティ 出店風景
出店風景

「ショップモビリティ」に参加したスタッフ、鈴木常務にとってリアルの重要性を痛感した場にもなった。普段はインターネットを通じてのみのコミュニケーションだった常連客が、ノース物産の車両を訪れた。

現地に足を運んでくれた常連客と関係性を深めることができたスタッフも感動していた。スタッフ教育という観点でも大きな効果があった。(鈴木常務)

住友商事 ショップモビリティ 社外スペース活用例
車外スペース活用例

7日にわたって行った「ショップモビリティ」で、約1000人近いユーザーが車両を訪れ、商品を購入した 。車両を置く場所を管轄する保健所の判断になるが、今回は試食なし。「試食なしでこれだけ商品が売れたので大きな成果だと思う」(鈴木常務)

ネット広告市場は現在、レッドオーシャンの状態。今までリーチできなかったリアルの場で新規顧客を開拓してみたい」と話していた鈴木常務。新規顧客獲得単価というKPIだけを見ると採算は取れていないが、社員教育、顧客とのコミュニケーションなどを含めると、「ショップモビリティ」の費用対効果は高かったと感じているようだ。

リアルでの販売を経験すると世界観がかわる。五感を使ってコミュニケーションをとり、商品を販売するのでスタッフの成長につながる。お店の良いところ、悪いところを肌で感じることができる。どんなイベントでもいいが、リアルでの販売を経験すると新たな発見がある。(鈴木常務)

住友商事 ショップモビリティ 既存サービスとの違い
既存サービスとの違い

ノース物産の今回のチャレンジは、SaaS型ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」を提供するフューチャーショップが、住友商事の「ショップモビリティ」実証実験に参加したことで実現した。

「ショップモビリティ」は現在、まだ実証実験という位置づけだが、EC事業者に新たな販売の場を提供するという価値に、住友商事は手応えを感じているようだ。

販売員の手配、装飾など、「ショップモビリティ」を活用したEC事業者からさまざまな要望・改善点があがっている。ただ、車両を使った販売、低コストで新たな消費者にアプローチできる点などは評価をいただいている。EC事業者のペインを検証して、より価値のあるサービスにしていきたい。(住友商事の森田 杏花氏)

キャプション>住友商事の森田 杏花氏
キャプション>住友商事の森田 杏花氏
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