松原 沙甫[執筆] 11/13 7:00

企業を対象にアパレル、雑貨、食品まで幅広い商品を販売している総合卸問屋のエトワール海渡は、従来のショールーム型の商品提案から、BtoB-ECのビジネスモデルに大きく転換し、成果を上げている。その最前線でデジタルマーケティングをけん引し、デジタルを通じた新規顧客の獲得、獲得顧客のナーチャリング(顧客育成)を進めている営業開発部の桑原惇副部長に、社内外で注力してきた取り組みを聞いた。

株式会社エトワール海渡 営業開発部 副部長 桑原 惇 氏
株式会社エトワール海渡 営業開発部 副部長 桑原 惇 氏
2014年、エトワール海渡に入社。オリジナルタオルの営業としてキャリアをスタート。その後、レッグウェアやアパレルの営業を経験。2020年にEC化のプロジェクトメンバーを経て、法人営業に異動。2023年よりデジタルマーケティングを活用した新規営業も担当し、現在は法人営業と新規営業の業務全般、およびチームのマネジメントを担当。

2023年1月に刷新、BtoB-ECに本格的にかじを切る

売上比率はコロナ前の20%から90%に急拡大

――エトワール海渡の特長を教えてほしい。

エトワール海渡 桑原氏(以下、桑原氏)国内外多業種の小売店、約2万件と取引している総合卸問屋。取引している小売店は、エトワール海渡が運営するBtoB-ECサイトの会員となっている。2023年3月期の売上高は102億5700万円で、EC化率は約90%。取引サプライヤーは約2500社で、70万アイテムを展開している。

会員制のBtoB-ECサイト「ETONET(エトネット)」。ファッションを中心に多様なアイテムを取り扱う
会員制のBtoB-ECサイト「ETONET(エトネット)」。ファッションを中心に多様なアイテムを取り扱う

コロナ禍以前の2019年までは、売上高に占めるシェアは、ショールーム型の店舗が80%、ECが20%だったコロナ禍を契機に来店者が減少したことを背景に、ビジネスモデルをBtoB-ECに転換した。

BtoB-ECの取り組みは比較的早く、2006年に仕入専用のECサイトを開設。2012年に仕入専用オンラインストア「ETONET(エトネット)」をスタートした。「ETONET」は2023年1月にリニューアルオープン。ただの売り場ではなく、クライアントの利便性向上を図るため、特集企画、スタッフブログの掲載、SNSの連携などを進めている。

クライアントの商売に役立つさまざまなコンテンツを展開
クライアントの商売に役立つさまざまなコンテンツを展開

従前はショールーム型の店舗を都内に3つ構えており、店舗で在庫を保有。クライアントは商品をその場で直接購入、仕入れることができるビジネスモデルだった。現在、ショールームは1拠点のみで、在庫を置かないサンプル展示のみ。基本的にはECから注文、仕入れしてもらう形にしている。

「ETONET」の浸透、会員登録促進に注力

――EC事業における自身の役割や担当業務は。

桑原氏デジタルマーケティング全般を管掌している。特に、サイトを利用するユーザーとのコミュニケーション、デジタルマーケティング、デジタルを通じた新規顧客獲得、獲得顧客のナーチャリング、従前のショールーム型の販売に慣れていた既存顧客に「ETONET」の利用に慣れてもらうことに尽力している。また、「ETONET」会員登録の促進にも携わっている。

2014年に新卒で入社した後、2020年にBtoB-EC推進のプロジェクトメンバーとして選出され、EC化率アップや、クライアント企業のBtoB-EC利用の推進に取り組んできた。

自分を含め、社内では良くも悪くもデジタルマーケティングに関する知見や経験が少ないので、戦略の立案から実行までを現場で一気通貫に進められるところはやりやすい。

――ショールーム型の店舗で直接仕入れる従来の手法に慣れていた既存顧客に、BtoB-ECでの仕入れになじんでもらうためには苦労があったと思う。

桑原氏:当時はコロナ禍のため、対面でお伝えすることが難しかったので、オンラインでの説明に身骨を砕いた。「ETONET」をどのように使っていただくか、「ETONET」を通じた仕入れ作業をご負担なく業務のなかに組み込んでいただけるかを1件ずつ提案していった。

桑原氏は「ETONET」を使った仕入れの仕方の説明を重ねた
桑原氏は「ETONET」を使った仕入れの仕方の説明を重ねた

説明や提案に際しては、社内で大枠のフォーマットを作りつつ、クライアント企業によって提案内容や伝え方を調整し、改善を重ねた。

アフターコロナの現在も「ETONET」による仕入れはクライアントに定着しているが、一部の事業者からは「ショールームで直接仕入れをしたい」という声もいただいている。これを受けて、一部の商品についてはBtoB-ECチャネルにこだわらず、店舗で購入できる体制も整えている。

一部の商品はショールームからの直接仕入れに対応している
一部の商品はショールームからの直接仕入れに対応している

――従前のビジネスモデルからデジタル化が一気に進んだ。社外だけではなく、社内でもBtoB-ECのビジネスモデル浸透に苦心したときがあったのではないか。

桑原氏各部署で社内教育を行った。全社共通の教育動画コンテンツを作成し、動画を見れば日常業務が一通り行えるようにしたため、大きな問題は生じなかった。

EC専業企業とも取引開始。堅実に事業拡大

――EC事業における自身の実績やチャレンジについて教えてほしい。

桑原氏売り上げを伸ばし、EC化率を高めながらクライアントにECを使ってもらえるようになってきたことだ。従前は実店舗がある小売店としか取引していなかったが、2022年末からEC専業の事業者とも取引を始めた。口コミなどを見たクライアントが新しく申し込むことが多い。ネットを通じて認知を少しずつ拡大していることが、会社としても新たな取引先の開拓、ひいては事業拡大につながっている

認知拡大の一環として、2024年4月からはランディングページ(LP)を作成した。クローズドなECでは、せっかくEC専業の事業者との取引をスタートしていても新規会員が増えないと考えたからだ。LPは取扱商品の紹介や、取引することでどのような課題・悩み解決につながるかを表現した内容となっている。2024年6月からはリスティング広告なども活用し、認知拡大を図っている。

2023年上期と2024年上期を比べると、「ETONET」の新規登録数は約30%増となっており、LPの施策が効果として表れたと捉えている。

目標は新規会員獲得50%増

――BtoB-ECの今後の事業戦略や成長計画は。

桑原氏:LP、リスティング広告の運用を継続して、2024年下期は前年同期間比50%増の新規会員獲得を計画している。SEOとブログコンテンツで集客を並行して進めているので、そこからの流入も進めて新規獲得の最大化を図りたい。

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この連載では、通販・EC業界の発展に貢献する「人」を顕彰する「ネットショップ担当者アワード」(2024年11月20日に第2回授賞式)受賞者にインタビューを実施しています。本記事でとりあげた桑原氏がどのような賞を受賞するかは授賞式当日に発表します。授賞式にぜひご参加ください! 参加無料・事前登録制にて、あなたのお申し込みをお待ちしています。

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