エンジニアからマーケ担当、インフルエンサー、そして売上80億円企業の取締役へ。異色の経歴を持つタイムマシン小川氏に聞くEC業界への挑戦
イヤホン・ヘッドホン専門店のタイムマシン・小川公造取締役は、ECのエンジニアやマーケターを経験した後、タイムマシンに入社。その後、独立してインフルエンサーとして活躍。ガジェット紹介のブロガーやYouTuberとして頭角を表した。在職時の実績を評価され、2023年に再びタイムマシンに参画。OMOを中心に、メディアミックスの顧客コミュニケーションを構築し、タイムマシンのDX化を担う。小川氏のキャリアの変遷をたどりながら、EC担当者のキャリアデザインのヒントになるような話を小川氏に聞いた。
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ECのコンテンツ作りに生きている異色の経歴とは?
OMO、CRMほか自社ECの運営を広く管掌
――タイムマシンが手がける事業や担当業務について教えてほしい。
タイムマシン 小川氏(以下、小川氏):イヤホン、ヘッドホンを中心としたオーディオ関連機器の販売・買取・中古販売がメイン事業。売上規模は、2024年3月期で前期比約10%増の77億円となっている。販売チャネルは全国5店の店舗とEC。ECでは、自社ECサイト、「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」「Amazon.co.jp」などのモールにも出店している。
売り上げに占めるECのシェアは60%ほど。「楽天市場」店が「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2023」の「TV・オーディオ・カメラ部門」でジャンル賞を獲得するなど、EC事業が事業の根幹を担う。
自分は自社ECの運営を管掌している。近年は毎年2ケタ増で売上高が推移している。業務で特に力を入れているのは、自社EC・モール各店・店舗を横串でつなぐOMO施策の推進。2023年4月から施策を始めており、現在、会員情報の一元化などシステム統合を進めているところだ。
CRMも重点施策として推進している。今後は自社ECの流入をさらに増やしていきたいと考えており、その施策の一環として、シナリオメールなどを通じたリピーターの育成を図っている。顧客を独自セグメントに分けてシナリオメールを実施したところ、特定層のLTVが前年比で15%アップした。
インフルエンサーからEC売上80億円企業の取締役に抜擢
――ユニークな小川氏の経歴を教えてほしい。
小川氏:大手ECのエンジニアを経験後、イマージュホールディングスに入社し、衣料品通販事業のWeb制作に従事していた。その後、広告担当者の退職に伴って任される業務の幅が広がり、マーケティング寄りのキャリアを築き始めた。
イマージュホールディングスは2013年9月、ディノス・セシール(現DINOS CORPORATION)にグループの衣料品通販事業を譲渡。自身もディノス・セシールに移った。ディノス・セシールではセシール事業に携わっており、エンジニアというよりマーケティグに近い業務を担当。広告制作と同時に広告運用も行っていた。
そんな時、タイムマシンから「メンバーの一員になってほしい」と誘いがあり、タイムマシンに2019年から2年間ほど在籍した。タイムマシンの販路は通販カタログ一本ではなく、店舗もECもあるため、さまざまなチャネルで顧客にアプローチできることに魅力を感じた。
2021年に独立し、ガジェット系アイテム紹介のブロガーやYouTuberとして活動していた。このとき、視聴者への「伝え方」「関心をひくような演出の仕方、見せ方」をとても考えるようになったし、ノウハウも蓄積できていったように思う。アップした動画のなかには、42万回再生されている人気動画もある。
このように、独立後、ガジェット系インフルエンサーとしても活動するなか、タイムマシンから「戻ってきてほしい」と声をかけてもらった。以前の在籍時の実績を評価いただき、取締役として2023年1月に再び参画することになった。
タイムマシンでの業務をメインとしつつ、現在もブロガーやYouTuberとしての活動は続けている。
メディアミックスの戦略が自社ECの勝ち筋
――タイムマシンに取締役として戻った後、自社EC事業の運営において重視していることは。
小川氏:量販店にはない独自戦略の推進だ。「e☆イヤホン」の自社ECにおいては、単なる商品紹介ではなく、メディアミックスのコンテンツ作りが自社の強みであり、勝ち筋であると考えている。
具体的には、スタッフ全員が顧客の目線でレビューを投稿している。こうしたスタッフの熱意が伝わったり、こだわりを持って商品を購入する方が多かったりするため、自社ECサイトの購入者レビューは大手レビューサイト以上に多い。
ヘッドホンは耐久消費財だが、実は、嗜好品としての側面も強い。コレクターや、次々に新しいものを買い求める人も多くいる。年間に何度も類似商品を購入する顧客もいるほどだ。
そのため、商品のお勧めの仕方や、顧客とのコミュニケーションの方法は工夫している。「いかにコアオーディオの沼に連れてくるか」という観点を持つことが施策の重要なポイントになっている。
「伝え方」を意識したコンテンツ作り
――コンテンツ作りや、顧客コミュニケーション設計では、小川氏ならではの経歴、経験が生きている。
小川氏:自分はもともとガジェット自体に興味がある。ガジェットの魅力を伝えたり特長を説明したりするという好きなことへ愚直に取り組んできた。
一番重視しているのは伝え方。誰に、何を、どのように伝えるのかを重視している。たとえば動画コンテンツの配信では、どのようなネタをどのような順序で伝えるか。見る前の視聴者の気持ち、見た後にどう思ってほしいか――をしっかり構成する。配信前から、これからアップする動画の視聴回数も予測している。
コンテンツを世の中に発信すると、良くも悪くもコメントやフィードバックを得られる。得られたフィードバックが、次の動画作りの糧になっている。
――今後の展開として計画していることは。
小川氏:2025年は、自社ECサイトのカートシステムをShopify社が提供する「Shopify」に移行し、サイトをリニューアルする予定だ。サービスやサイトの改善、特にリユース系のサービスを充実させようと考えている。
タイムマシンではすでに、リユース事業も展開している。顧客の手元で商品を循環させるようにしている。ユーザーは「e☆イヤホン」に商品を売却することで、次の商品を購入するときに購入の敷居が下がる。
この連載では、通販・EC業界の発展に貢献する「人」を顕彰する「ネットショップ担当者アワード」(2024年11月20日に第2回授賞式)受賞者にインタビューを実施しています。本記事でとりあげた小川氏がどのような賞を受賞するかは授賞式当日に発表します。授賞式にぜひご参加ください! 参加無料・事前登録制にて、あなたのお申し込みをお待ちしています。
「ネットショップ担当者アワード」第2回授賞式は11月20日、16:15から「虎ノ門ヒルズフォーラム」にて開催。聴講無料、事前登録制です。ふるってご参加ください!
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