今回紹介する「Daily Jocks」は、ソーシャルメディアやブログで強固なコミュニティを築き、集まったファンに向けて商品販売を行うことで成功したECサイトの1つだ。

Daily Jocks」で販売しているのは男性用下着。高級ブランドの製品を、安く、しかもこれまで他の競合も扱っていない新製品を入手できるのが魅力だという。

私のブログでは積極的なFacebookなどのソーシャルメディアの運用によって成功した例として、レギンスを販売するECサイト「Black Milk」、スポーツウェアを販売するECサイト「Lorna Jane」などを紹介してきた。

ECサイトを運営するブランドにとってソーシャルメディアはフォロワーとのコミュニケーションをより密に取ることができ、自社ブランドを支持してくれる強固なコミュニティを築き上げることができるため、重宝するツールだ。

下着のECサイト「Daily Jocks」
下着のECサイト「Daily Jocks」はコミュニティの活用がうまい

「Daily Jocks」は2008年、オーストラリアで設立。当初はファンのための交流サイトだった。しかしコミュニティでの利用者たちの声を受ける形で2012年より小売り事業も開始。現在のFacebookの「いいね!」の数は65万、毎月送付する下着の総量は1トンにものぼるという超人気サイトだ。

創業のきっかけは、輸入物のパンツが高かったこと

【この記事のポイント】

  • 他の小売店に先駆けてリリースされた新商品をいち早く顧客に届けている
  • 拠点を構えるオーストラリア以外からでも送料無料で購入できるようにすることで、海外ユーザーから支持を得る
  • Facebookで初期のファンを獲得、継続的な関係を築く手法としてメールマガジンを活用している
  • 読者のニーズに“ずばり”合った「男性下着のお得な定期購入サービス」を提供し始めたというビジネスモデル
「Daily Jocks」の創業者Nicholas Egonidis氏
「Daily Jocks」の創業者Nicholas Egonidis氏

「Daily Jocks」の創業者はNicholas Egonidis(以下、エゴニディズ)氏。大学卒業後は一貫してオーストラリアでマーケティングに関わってきた人物だ。

エゴニディズ氏はオーストラリアで輸入物の男性用下着を購入したときに、かなり料金が高くなってしまうことに驚いた。同時に「これはビジネスチャンスだ」と感じた同氏は、2009年からメンズ下着に関するお得情報を発信するブログを始め、その広告費でマネタイズを行うようになる。

「どんな仕入れ業者であれば安く下着を買うことができるのか」など、流行っている下着を着ている有名人などの情報を見つけ出して公開。ほぼ毎日Facebookとブログに情報をアップデートすることで、下着に強い興味を持つ利用者を大勢獲得することに成功した。

3年後の2012年にはFacebookで10万以上の「いいね!」を獲得すると、男性用下着を愛好するファンがより深く交流できる場所として「Daily Jocks」のサイトを起ち上げた。また、このサイトのファンに向けてメールマガジンを配信することで、継続的な関係を築く。

こうしてファンとのつながりを深めていったエゴディニズ氏は、コミュニティでのフィードバックもあり、より収益をアップさせるために「Daily Jocks」にて下着の販売を始めることを決意する。

これはサブスクリプションサービスで毎月新しい下着が格安で受け取れるというものだった。

エゴディニズ氏が情報発信していた相手はもともと男性用下着に強い興味を持つファンばかりだったため、「毎月新しい下着が受け取れる」サービスは大いに受け、最初の月から2000もの注文があったという。

グローバルに展開するための工夫とメーリングリストの構築

「Daily Jocks」は決済を米ドルに統一し海外ユーザーの支持を集めた
「Daily Jocks」は決済を米ドルに統一し海外ユーザーの支持を集めた

それでは現在のサービス内容を見てみよう。「Daily Jocks」では通常の価格で買えば最大40ドルに相当する下着を月額21.95ドル(約2700円)で購入することができる。その他、下着や水着、スポーツウェアなどを単品で購入することも可能だ。

同サイトのサブスクリプションサービスの特色は、「C-in2」「Baskit」「GoSoftwear」「PUMP」「Oskar Franks」「Obviously」「Jac5」「Ristefsky Macheda」「Supawear」「Teamm8」など、世界のトップメンズ下着ブランドを安く取り扱っていること。それと、他の小売店に先駆けてリリースされた新商品をいち早く顧客に届けていることがある。

商品そのものにも大きな強みがあるのだが、「Daily Jocks」はより多くの顧客を惹き付けるために、大きく分けて2つの工夫を行っている。

1つは創業者のエゴディニズ氏が「住んでいる場所を問わず利用可能な、グローバルなサービス」をコンセプトとしていることだ。

同氏は当初から地理的な条件で購入できないケースをなるべく避けたいと思っており、サブスクリプションサービスの商品を、拠点を構えるオーストラリア以外からでも送料無料で購入できるようにした

多くの場合、発送にかかる送料などの「商品代金とは別に発生する手数料」は、その額がさほど大きくなくとも注文を躊躇させる要因になりやすい。こうした考えで始めた施策は世界のファンから支持を集めた

また注文の大半が米国からだったため、オーストラリアのサイトにもかかわらず、通貨を米ドルに統一したという。ちなみに現在は地元オーストラリアのユーザーに向けたサイトの運営も行っているそうだ。

もう1つの工夫はメールマガジン。ECサイトを始める前の段階からメールマガジンで情報を発信し、ファンとの継続的な関係を築くことに骨を折った

また、今でも単品購入者には積極的にメールを送信し、サイトの各ページに「メールマガジンの利用者には10ドル割引」などと書いたポップアップを設け、多くの利用者にメールマガジンを読んでもらうための工夫をしている

「Daily Jocks」はサイトの各ページに「メールマガジンの利用者には10ドル割引」などと書いたポップアップを設けている
「Daily Jocks」はサイトの各ページに「メールマガジンの利用者には10ドル割引」など記載したポップアップを設置

その甲斐があり、現在メールマガジンを購読している利用者の数は27万人にものぼる。また、メールを通じたコミュニケーションが奏功し、サブスクリプションサービスの解約率は2%という低い数値をキープしているようだ。

ファン作りや関係性構築のお手本になる事例

「Daily Jocks」の面白い点は、まずFacebookやブログで「男性用下着のお得情報サイト」を構築し、その後に読者のニーズに“ずばり”合った「男性下着のお得な定期購入サービス」を提供し始めた点だろう。

また市場を国外に定め、通貨を米ドルにしたり、海外への送料も無料にする仕組みを作り上げたところもユニークだ。

ファンとの交流場所を徐々にメールマガジンへ移動していく点も注目したい。僕自身痛い目にあっているのだが、ソーシャルメディアでの作れる接点は実はかなり“もろい”のだ。

メディア側の都合で情報の到達率が調整されてしまうため、「先月はもっとリーチしたはずなのに、今月はさっぱりリーチしない」ということが起きる。一方、メールマガジンは顧客との接点を妨げるものはないので、突然効果が下がったりすることはない。

「Daily Jocks」のように、各種SNSはお店の認知など初期の関係構築用として利用し、その後の持続的にファンとのつながりを構築する手段はメールマガジン、というのはかなり有効な手立てだ。

「ネットショップを最近始めた」という人に話を聞くと、意外とメールマガジンを疎かにしていることがある。まだまだ非常に強力な手段であるから、活用をおすすめしたい

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尼口 友厚

株式会社ネットコンシェルジェ

尼口 友厚(あまぐち・ともあつ)

株式会社ネットコンシェルジェ CEO プロダクト・マーケティング責任者

明治大学経営学部卒。米国留学からの帰国後、デザイナー/エンジニアとしての活動を経て、2002年に国内有数のウェブコンサルティング会社「キノトロープ」に入社。

2003年同社関連会社としてネットコンシェルジェを設立。eコマースとブランディングを専門領域とし、100億規模の巨大ECサイトからスタートアップまで150を超えるクライアントを抱える。現在は、ショッピングSNSサービス「Cart」を運営する。趣味はブラックミュージック鑑賞。

著書に『なぜあなたのECサイトは価格で勝負するのか?』(日経BP)
訳監に『ハックプルーフィングLinux』(秀和システム)

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