カゴ落ちしたユーザーを効率的に呼び戻すリターゲティングメール術
ECサイトの「カゴ落ち」は多くの事業者が抱える課題だ。カゴ落ち対策はカート離脱率の抑制に加え、離脱したユーザーをいかに効率的にECサイトに呼び戻すかが重要となる。離脱したユーザーの再訪問を促し、売上アップを実現する「カゴ落ちメール」のノウハウについて、ナビプラスの井口 隆智 氏が解説した。 写真◎Lab
セミナーのポイント
- カート離脱者を呼び戻す「カゴ落ちメール」とは?
- 「カゴ落ちメール」の効果は通常のメルマガの3倍〜5倍
- カゴ落ちによる機会損失は深刻
- 「カゴ落ちメール」を効果的に実現する方法
カート離脱者を呼び戻す「カゴ落ちメール」とは?
カート離脱者をECサイトに呼び戻すための一般的な方法として、従来はリターゲティング広告やSNS、一斉配信メルマガ、ネット広告などが実施されてきた。しかし、事業者からの一方的なアプローチは効果が限定的な上、ユーザーに不快感を与えてしまうなど、課題も多い。
従来型のカゴ落ち対策の効果が頭打ちになる中、カゴ落ち対策として注目され始めているのがワン・トゥ・ワンのステップメールをカート離脱者に送る「カゴ落ちメール」だ。カゴ落ちメールには例えば次のような方法がある。
- カート離脱後1時間以内にユーザーにメールを送信する
- メールにショッピングカートに残っている商品の写真を表示する
- 「お買い忘れはありませんか?」「何かお困りですか?」などのメッセージとともに、補足情報として「カゴ内容保存中」「在庫あります」といった接客志向のメッセージを記載する
- 1回目のメールにレスポンスがなければ、24時間後に再度クーポン付きメールを送る
「カゴ落ちメール」の効果は通常のメルマガの3倍〜5倍
カゴ落ちメールの効果について検証した結果、売上アップに大きく貢献することが実証できた。3種類のECサイトで3か月間、一般的なメールマガジンとカゴ落ちメールの効果を比較したところ、開封率やクリック率、メール経由の売上などが、カゴ落ちメールの方が3倍〜5倍も高かった。
カゴ落ちメールで大きな費用対効果を上げているネットショップもある。製菓や製パンの材料などで月商2億円弱を売り上げている「cotta」は、次のようなステップメールを配信した結果、大きく売上を伸ばすことに成功した。
- カート離脱の30分後、カートの中身を知らせるメールを送信
- 1通目で購入に結びつかない場合には23時間後に2通目を送信。タイトルに「送料無料」と記載して購入を促す
- ECサイトを閲覧しただけで離脱したユーザーには「ブラウザ放棄メール」を最大2通送信する
特に、カート離脱後30分以内に配信しているカゴ落ちメール経由の売上は、メール配信費用の30倍〜50倍に達するなど高い費用対効果を上げている。
カゴ落ちによる機会損失は深刻
EC事業者にとってカゴ落ち対策の重要性は年々高まっている。米国の調査会社Baymard社などの調査結果によると、ECサイトのカート放棄率は70%~80%に達している。
ユーザーがカートから離脱する理由は、海外のリサーチ会社が公開している調査結果を踏まえると、次の5つに分類できる。
- 購入意欲や優先度の減衰
- 費用や配送面の問題
- ECサイトの使い勝手が悪い
- サポートの不備・不足
- ログインできないなどサイトの不具合
「費用や配送面の問題」とは、消費者は商品をカートに入れた後、「商品代に配送料を足したら予算をオーバーしてしまった」「現在の購入金額では配送料が無料にならない」といった理由が判明し、カートを離脱してしまうようなケースだ。商品をカゴに入れたものの、忙しさなどにより「購入は後でいい」と考える消費者も少なくない。
ではここで、カゴ落ちによる機会損失がどれほどの金額になるか試算してみたい。仮に、平均受注単価1万円、ECサイトの訪問数が月間100万人、カート到達率は10%、カート離脱率が70%のネットショップがあったとする。このショップの月間受注件数は3万件なので月商3億円、年商は36億円となる※1。このとき、カートを離脱した7万人全員がECサイトを再訪問すれば、カート到達率10%・カート離脱率70%の条件では、年間2億5200万円の売上が新たに生まれることになる※2。この数字を見ると、カゴ落ちしたユーザーを効率的にECサイトに呼び戻すことが、いかに重要であるかがわかる。
※1 100万件(訪問数)×0.1(カート到達率)×(1−0.7(カート離脱率))×10000円(受注単価)×12(12か月)=36億円
※2 7万件(カート離脱者の全員)×0.1(カート到達率)×(1−0.7(カート離脱率))×10000円(受注単価)×12(12か月)=2億5200万円
「カゴ落ちメール」を効果的に実現する方法
カゴ落ちメールを実際に運用するには、下記のような作業が必要となる。
- アクセスログを解析し、離脱したユーザーを探す
- 会員データとアクセスログをつなぐ
- その結果をメールシステムとつなぐ
複数のシステムの連携が必要となるため、導入費用や手間がかかりすぎるという理由でカゴ落ちメールの導入に二の足を踏む企業は少なくない。
そうした企業の課題を解決するため、ナビプラスでは低価格で迅速に、作業負担もなくカゴ落ちメールを始められる「NaviPlusリタゲメール」を開発した。
「NaviPlusリタゲメール」の特徴
- 初期費用と月額固定費が無料
- 利用料金はクリック数に応じた重量課金制
- 最短1週間程度で開始
- ネットショップはサイトにタグを埋め込むだけ
- カート離脱後、最短15分から配信可能
- コンバージョンの可能性が高いメール会員を見つけ出す行動分析機能
- ワン・トゥ・ワンメールを配信する機能
- メール配信の効果測定の機能
- EC-CUBE、FutureShop2、ecbeingなど、外部システムとも連携
米SalesForceが2014年末に実施した調査によると、米国の大手小売業者の90社中20社がカゴ落ちメールを採用していた。日本国内におけるカゴ落ちメールの普及率をナビプラスが独自に調査した結果、ネット通販を手掛ける主要500社のうち実施しているのは7%だった。
国内ではカゴ落ちメールの普及が始まったばかりだが、今後、着実に広がっていくだろう。カゴ落ちメールは、カート離脱率の高止まりに頭を悩ませているEC事業者の課題解決に役立つはずだ。
ナビプラスは当ネットショップ担当者フォーラムで「カゴ落ちメールが変えるECサイトの新しい“接客”のカタチ」を連載しているので、ぜひ参考にしていただきたい。
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