吉野 巨人 2020/11/2 8:00

FacebookやInstagramなどでカスタマイズ可能なオンラインショップを無料で作成できる「Facebookショップ」、Instagram上のショッピング体験を充実させる新機能など、Eコマース関連のアップデートに注力した2020年のFacebook社。今後もライブショッピング機能などさまざまなEコマース関連の機能拡充を進めていくという。国内利用者の最新インサイト、Facebookショップ、「料理を注文機能」や「ギフトカード機能」など、withコロナ時代におけるビジネスでのInstagram活用を解説する。

【最新インサイト】3300万以上が利用するInstagram

日本では2015年に810万だったコミュニティ(月間アクティブアカウント数)が、2019年2月には3300万まで拡大。Instagramは女性利用者が多いと思われがちだが、「男性:43%」「女性:57%」と多くの男性も利用している。

Instagramのコミュニティの推移 日本では2015年に810万だったコミュニティ(月間アクティブアカウント数)が、2019年2月には3300万まで拡大
Instagramのコミュニティの推移

グローバルでは、「Instagram上で何らかのビジネスをフォローしている利用者の割合」は90%にのぼる

「withコロナ時代において、人と人の物理的な距離が必要とされる今だからこそ、Instagramは、生活者とビジネスをつなぐツールとして活用できる」。Instagramのビジネス活用についてこう話すのは、Facebook Japanの丸山祐子氏(コマース事業部 Industry Manager)。

Instagram利用者はビジネスとつながるケースが圧倒的に高い
Instagram利用者はビジネスとつながるケースが圧倒的に高い

そして、次のように丸山氏は続ける。「Instagramは“発見のメディア”だけではなく、商品やサービスを“購入検討するメディア”として購買行動を喚起するプラットフォームへと進化している」(丸山氏)

イプソスが実施した調査「Project Instagram」(Facebook社の委託調査)によると、利用者の83%がInstagram上で「新しい商品やサービスを発見する」と回答81%が「商品やサービスを検索」し、80%が「商品やサービスを購入するか決める」という用途で、Instagramを利用している

Instagramが購買行動に与える影響は大きい
Instagramが購買行動に与える影響は大きい

【最新の消費行動】新型コロナの影響でデジタルを通じた消費が拡大

2020年は新型コロナウイルス感染症の影響拡大で、ソーシャル・ディスタンシングが浸透。YouGovの「Facebook Seasonal Holidays Study」(Facebook社の委託によるオンライン調査)によると、回答者の49%が「ショッピングする時間、店舗に足を運ぶ頻度を減らしたりすることを検討」する意向を示している

YouGovの「Facebook Seasonal Holidays Study」(Facebook社の委託によるオンライン調査) 消費者は店頭での買い物を控える意向を示した
調査結果によると、消費者は店頭での買い物を控える意向を示した

コロナ禍では多くの小売業が実店舗の休業を余儀なくされた。こうした環境下、Kantar Profilesの調査「Industry Micro-Shifts Monthly Tracker」(Facebook社の委託によるオンライン調査。各調査回において日本に居住する18歳以上の一般集団2000人を対象に実施)によると、52%の回答者が「過去4週間にECサイトを利用」したと答え、38%が「パンデミックが始まってから、初めて新しいデジタルショッピングプラットフォームを1つ以上利用した」と回答した。

Kantar Profilesの調査「Industry Micro-Shifts Monthly Tracker」(Facebook社の委託によるオンライン調査) コロナ禍で多くの消費者が買い物習慣を見直した
コロナ禍で多くの消費者が買い物習慣を見直した

こうした状況を踏まえ、丸山氏は「店舗でのショッピングの魅力の1つは、人との交流ができること。SNSを使って、検討している商品を別の角度から見た画像や動画を見たり、実際に購入した人の体験談を検索したりといったオンラインコミュニティの活用が新たなショッピング体験として広がっている」と指摘。特に、18~34歳の若年層ではソーシャルメディア経由での商品購入率が、35歳以上と比較して2.1倍高いという調査結果を説明した。

18~34歳の若年層ではソーシャルメディア経由での商品購入率が、35歳以上と比較して2.1倍高い
若年層はソーシャルメディア経由で商品を購入する機会が多い

消費者とのコミュニケーションがデジタル化していく中で、Instagramを使ったコミュニケーションの重要性は非常に高まっている。新型コロナウイルス感染症の拡大で、やむにやまれぬ変化が新しいものを試すことへの受容を促している。店舗へ足を運べない代わりに、AR(拡張現実)で消費者が商品を試着できるようにする、実店舗で店員と話せない分、インフルエンサーによるブランドコンテンツなどを活用して商品の魅力を伝えるなど、Facebook社は消費者、ビジネスに対してデジタルでできる購入体験をよりリッチにする機能を追加している。(丸山氏)

Facebook Japanコマース事業部 Industry Manager丸山祐子氏
Facebook Japanコマース事業部 Industry Manager 丸山祐子氏

Instagram、Facebookなどでショップを作成できる「Facebookショップ」とは

外出自粛や新しい生活様式の影響でデジタル化が加速し、Eコマース事業に参入・注力する事業者が増えている。そこでFacebook社は、“誰でも簡単・無料”でInstagramやFacebookなどでオンラインショップを公開できる機能「Facebookショップ」を6月に国内で導入開始した

「Facebookショップ」を通じてFacebook社がめざすこと
Facebook社がめざすこと

「Facebookショップ」は、FacebookやInstagramなどのファミリーアプリでショップを開設し、ブランドイメージに適した雰囲気などにカスタマイズしたり、販売する商品情報を掲載したりできる機能。日本では現在、購入はアプリ外の自社ECサイトなどに利用者を誘導し、決済してもらう仕組みとなる。

将来的には、「Messenger」「Instagramダイレクト」「WhatsApp」のチャット内でショップを確認し、商品を購入できるようにするという。

「Facebookショップ」の主な特徴は2つある。

特徴① プラットフォームで共通のショップを提供

Facebook、Instagramといったプラットフォームを横断し、利用者は共通のショップにアクセスできる

前身である「Facebookページショップ」「Instagramショッピング機能」では、プラットフォームごとに別々の運用になっていた。それぞれユーザーインターフェイス(UI)が異なるため、同じ事業者のページでもそれぞれ別ページに見えるといったケースがあった。

また、事業者は「コマースマネージャ」でショップを一括管理できるため、運用上の負担を軽減できるようになる。

「Facebookショップ機能」の特徴
「Facebookショップ機能」の特徴

特徴② フルスクリーン表示&カスタマイズ可能

ショッピングタグを付けた投稿をすると、フィードやビジネスプロフィール上の画像の左下にショッピングバッグのアイコンが表示される機能のほか、新たに「コレクション」という機能を追加した。

「コレクション」はテーマに合わせて自社の商品をまとめることができる機能(下画像の真ん中)。UIの色を変更するなどカスタマイズできるため、事業者の世界観を表現しやすくなった。

「Facebookショップ機能」の特徴
「Facebookショップ機能」の特徴
「Facebookショップ機能」 「コレクション」の利用者からの見え方
「コレクション」の利用者からの見え方(写真右)

「コレクション」作成のヒント

何を訴求しているのかわかりやすい画像を選択する

「Facebookショップ機能」の「コレクション」作成のヒントについて
「コレクション」作成のヒントについて①

商品にしっかりとフォーカスを当てる

「Facebookショップ機能」の「コレクション」作成のヒントについて
「コレクション」作成のヒントについて②

Instagramの新しいショッピング関連機能【最新情報】

「Instagramショップ」とは

発見タブ(虫眼鏡アイコンのタブ)の画面上部にある「ショップ」を選ぶとアクセスできる、Instagramにおけるショッピング体験をさらに充実させるための新機能「Instagramショップ」をリリースしたのは2020年7月。ショッピングタグを使っている投稿やブランド、「ショップ機能」で作った「コレクション」が利用者ごとにパーソナライズされ、利用者の好みに合ったビジネスやブランド、商品を見ることができる機能だ。

利用者の興味・関心に合わせて自社のコンテンツが「Instagramショップ」に表示されるため、新たな顧客にリーチできる利点がある。(丸山氏)

「Instagramショップ」について
「Instagramショップ」について

ライブショッピング機能をテスト中

米国では、Instagramでライブ配信時に「ショップ機能」のカタログ上から商品をタグ付けし、視聴中に商品の詳細を確認したり、購入したりできるライブショッピング機能をテスト運用している。日本での導入は現在のところ、未定となっている。

Instagramはライブショッピング機能をテスト中
ライブショッピング機能をテスト中

withコロナ時代の事業者をサポートする新機能

料理を注文機能

料理のデリバリーやテイクアウトを提供している飲食店向けに、Instagramから注文ができるようにする機能を公開。お気に入りの飲食店によるストーリーズのスタンプやプロフィール上のアクションボタンをタップすると、出前館やUber EatsなどInstagramが連携する外部プラットフォームに遷移してデリバリー・テイクアウトの注文をできるようにした。

プロフィール画面に料理を注文するというボタンを設置したり、また「Instagramストーリーズ(投稿した写真や動画が24時間で消える機能)」内でスタンプを利用したりすることで、飲食店が設定したプラットフォームのページが表示され、注文できるようになっている。(丸山氏)

Instagramから料理のデリバリーやテイクアウトを注文できる機能
Instagramから料理のデリバリーやテイクアウトを注文できる「料理を注文機能」

ギフトカード機能

飲食店などの事業者がストーリーズの投稿などを通じ、提携するサービス上で販売するクーポン券、優待券などのギフトカードをInstagram上でも販売できる「ギフトカード機能」も提供している。

たとえば、新型コロナの影響で撮影ができない写真館は、期間中に割安な価格で記念写真を行えるサービスをギフトカードで販売。先払いを済ませてもらい、撮影自体はコロナ収束後に行うといったことができるようになる。

現在、Uber Eatsなど国内19のサービスと連携。テイクアウトやデリバリーという選択肢が定着しつつある今、これまでと同じような営業ができないビジネスのサポートに力を入れていく。(丸山氏)

Instagramのギフトカード機能
Instagramでギフトカードを購入できる「ギフトカード機能」

今後のFacebook社のコマースへの取り組み

事業者の立場からは、Instagramをオーガニックで活用していても、自社のフォロワー以外にリーチしづらいため、オーディエンスが限られるといった課題もある。

たとえば、F1層をターゲットとする事業者の場合、10万人のフォロワーを獲得しても、それは人口の約1%程度。フォロワーだけで自社のサービスをプロモーションしていくには限界がある。

Instagramをオーガニックで活用していても、自社のフォロワー以外にリーチしづらいため、オーディエンスが限られるといった課題もある
インフルエンサーやフォロワーだけのリーチでは、限られたオーディエンスのみしかリーチできない

そこでリーチするオーディエンスを拡大し、より多くの利用者に商品やサービスを訴求するために活用したいのが広告だ。Instagramは、Facebook広告の配信メディアの1つで、フィード、ストーリーズ、発見タブ(虫眼鏡マーク「発見タブ」で表示)などで広告を配信可能。Facebook広告は“人”をベースとした膨大なデータから、リアルタイムで動く機械学習が利用者の興味・関心から最適な広告を配信できる。

Instagramは、Facebook広告の配信メディアの1つで、フィード、ストーリーズ、発見タブ(虫眼鏡マーク「発見タブ」で表示)などで広告を配信できる
広告を活用することでターゲットとする多くのオーディエンスにリーチできるようになる

さらに、先に説明した「Facebookショップ」などのEコマース関連機能を使っているなら、商品カタログを広告にも活用し、より精度の高い広告キャンペーンを実施することが可能だ。

Facebook社の広告はターゲットとなる利用者に最適なコンテンツを表示できるため、たとえばEコマース機能のために作成したカタログを活用し、ターゲットと関連性の高い商品だけを見せる広告(ダイナミック広告)を出稿することもできるFacebookやInstagram上のショップで商品の魅力を伝えたり、Eコマースサイトへの導線を作ったりしながら、同じカタログを活用して広告による露出増を行うことも可能だ。(丸山氏)

今後、「Instagramはショッピングの楽しさが体験できる場所としてさらに進化していく」と丸山氏は説明し、将来的にはアプリ内で決済ができるようにし、シームレスな購入体験ができるプラットフォームをめざしていくと話した。

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