石田 麻琴[執筆] 6/3 8:00

「EC事業を内製化する」――それは必ずしも、「Webサイトやコンテンツの制作スキルを身につける」「リスティング広告の運用を自社内で行う」「自社サイトのシステム改修をECチーム内で解決する」ことを意味しません。ECに関係する専門的な領域は、すでにいち担当者の努力でどうにかなる時代ではなくなっています。

この連載では、EC事業の内製化を目標に、ECマーケティングに関係するテーマを設定、その判断をするための「考え方」を伝えていきます。6回目もEC運営の永遠の課題「集客」の重要なポイントや実践すべきアクションについて解説します。

強いEC会社を支えるネットショップ担当者を作る人財育成講座
  1. ECのマーケティングとは? 「売り上げを伸ばす」ってどういうこと? EC事業の内製化に大切なポイントを解説!
  2. 客単価が2倍=売り上げも2倍!はウソ? 事例に学ぶ売上の公式の「真実」とは
  3. コンバージョン率が高い=良いECサイト? 「割り算」で算出する数値には注意しよう!
  4. ECサイトのアクセス数アップのポイントは、自社にとって「エンゲージメント」が高いユーザーを意識すること
  5. ユーザーが自社を「選んでくれた理由」「知ってくれた理由」を分析しよう! 商品作り&顧客作りに重要なポイントを解説
  6. 「生の声」「問い合わせ」の情報を蓄積して、ユーザーへの提案の「解像度」を上げることが大切!

ECのマーケティングは「ヒト・モノ・カネ・情報といった自社のリソース」と「外部のマーケティングソリューション」を組み合わせて、「結果としての売り上げと利益を最大限に伸ばす」ことが求められます。

つまり「EC事業の内製化」とは「業務の内製化」ではなく、「判断の内製化」なのです。ECの戦略・方針、日々のアクション・行動、そしてソリューションの選択が成果につながっているか、これだけは社内のネットショップ担当者でなければ判断ができません。

「強いEC会社を支えるネットショップ担当者を作る人財育成講座」では、ECマーケティング人財育成(ECMJ)が、こうした判断を行えるEC担当者育成に向けたポイントを解説します。

「現状把握」のデータはどう生かしたら良い?

石田麻琴(以下、石田)

ネッタヌ君、こんにちは。

前回お話しした集客戦略の見直しについてだけど、「現状把握」のための具体的なアプローチ(実践策)を伝えたこと、覚えている?

ネッタヌネッタヌ

もちろん覚えていますよ! お客さまがECサイトを「知ってくれた理由」「選んでくれた理由」を知る、そして「まずはデータを集めてみましょう」ですよね。

石田

そうそう、さすが! 加えて、実店舗がある事業者さんはお客さまの「生の声」を、ECサイトからはお客さまの購買行動の変化など「本当は集められる情報」を蓄積する習慣を作ってほしい。そんな話をしたよね。

ネッタヌネッタヌ

もしまだ「現状把握」のデータや情報を集めていないネットショップさんは、ぜひ集めていただいて。

石田

今回は「『現状把握』のデータや情報をどう生かすか?」について、重要なポイントを中心に説明していきますね!

「知ってくれた理由」を活用する方法とは?

石田

「知ってくれた理由」と「選んでくれた理由」を集客に生かす方法を考えていこうか。「選んでくれた理由」の活用方法については前回触れたよね。

ネッタヌネッタヌ

たとえば「選んでくれた理由」がネットショップの特定の商品だったとしたら、集客のアプローチが変わる……みたいな話でしたよね。

石田

うん。お客さまの選択動機(=選んでくれた理由)によって、新規のお客さまにアピールするポイントが変わる。そして、そのポイントを求めている「潜在的なお客さま」にいかに伝えて集客するか、という発想につながるよね。

ネッタヌネッタヌ

「商品作り」も「顧客作り」につながる、という話でした。

石田

じゃあ「知ってくれた理由」なんだけど、ここはどんな理由があげられると思う?

ネッタヌネッタヌ

たとえば……「検索エンジンの検索結果に出た」「SNSの投稿をたまたま見た」「リスティング広告に出てきた」とか、そういうのが思い浮かびました。

石田

そうだね。ネット経由だと、検索、SNS、ネット広告などがメインになる。他には、ECプラットフォームのレコメンドに出てきたとかだね。ネット以外では「たまたま実店舗を知った」「イベント・催事に出ていた」なんて理由もあるだろうし、「友達から紹介されて」もありえる。

「知ってくれた理由」に対する自社のアプローチを強化しよう

ネッタヌネッタヌ

「知ってくれた理由」はいろいろありそうですが、これをどうやって次の施策に生かすんですか?

石田

それじゃあ、施策化するための考え方を整理するね。

まずは「知ってくれた理由(=流入)」に対して自社が行ったアプローチ(実践策)を調べたい。たとえばSNSからの流入があったとして、それに対するSNSのアプローチが少なかったとすれば、「SNSの投稿をより強化しよう」となる。同様に、自社のアプローチに対する「知ってくれた理由」の成果を検証していく。そうすると自ずと強化ポイントが見えてくる。

ネッタヌネッタヌ

たとえば、ネット広告を月100万円かけているにもかかわらず、「広告経由で知った」人よりも「友達の紹介で知った」人が多かったとしたら、「友達の紹介」を強化する施策を考える方がいいってこと?

石田

平たく言えばそういうことだね。シンプルでしょ!

もちろん「知ってくれた理由」のサンプル数にもよるけど、自社がかけたコスト(時間とお金)とその成果のバランスで判断すればスムーズに次のアクションは決まる。

ネッタヌネッタヌ

ほぉ……。なんだかサックリ施策が決まってしまった。

石田

「友達の紹介」がECサイトの流入と購入につながっている比率が高いなら、「すでに利用しているお客さま」のフォローアップを強化するべきで、その次には「お客さまに1回だけでも利用してもらうには?」という課題が出てくる。利用者からの紹介は十分強いわけだからね。

ネッタヌネッタヌ

なるほど。アプローチ(実践策)とその成果の両面から強化ポイントを整理するとわかりやすいかもしれないですね。

石田

一歩踏み込んで重要なことを伝えるね。

「知ってくれた理由」は先述した通り、いくつかの導線に集約される。たまに「Youtuberの○○さんが商品を紹介してくれていました!」みたいな、ネットショップの担当者さんも知らないような導線も出てくるけれどね。

ネッタヌネッタヌ

たしかに、広くカテゴリ分けすれば「検索」「メディア(SNS、動画、PR)」「広告」「リアル」のどれかな気がします。

石田

だから大切なのは「やり方」、つまり「How(どのように)」なんだよ。たとえば「友達の紹介」を強化するとして、「LINEで共有できるクーポンコードを発行する」というアプローチと、「友達と一緒にリアルイベントに参加できるチケットを送る」というアプローチでは成果がまったく異なるわけだ。

ネッタヌネッタヌ

それって、どっちを選ぶのが正解なの?

石田

ここはやってみないとわからない部分はあるんだけど、「自社のコンセプト(=お客さま)にはどのようなアプローチが合うか」「競合他社はどのようなアプローチで成果を出しているか」を考えれば「How(どのように)」の焦点は絞られるはず。

あと、ECのマーケティングは実践すればどちらが良かったのかをデータで「定量的」に判断できる。なので、ある程度「複数のアクションを小さく走らせて成果が出るものを探す」という心意気は必要だね。

EC内製化 自社の実践策の成果に対してかかったコストから施策を考える ECMJ 人財育成
自社の実践策の成果に対してかかったコストから施策を考える

集客のコツは「お客さまの解像度を上げる」こと

ネッタヌネッタヌ

石田さんが言っていたことで気になったのが、お客さまの「生の声」を集めましょうってところでした。実店舗がある会社さんなら店舗から「生の声」が集められるし、実店舗がない会社さんでもお客さまの「問い合わせ」は「生の声」だって言っていましたよね。

石田

そうそう。ECのマーケティングを展開するとき、もちろんデータは重要だけれど、同じように重要なのが情報なんだ。「生の声」や「問い合わせ」など、情報は日常にあふれている。

ネッタヌネッタヌ

実店舗だと毎日お客さまと接しているわけですもんね。

石田

ただ、データのようにECのシステムが自動収集&集計をしてくれるわけじゃないので、情報は右から左に流れてしまうことが多い。これが非常にもったいない。きちんと「情報」として蓄積して、マーケティングに役立ててほしいんだ。

集客に活用する際は、商品を買う「利用目的」に着目する

ネッタヌネッタヌ

「生の声」や「問い合わせ」を集客に活用するとき、特に意識しておきたいポイントはありますか?

石田

お客さまが自社の商品を「何のために購入するか」だね。まず気にしたいポイントはここだ。

つまり、お客さまが商品を買う「利用目的」に注意したい。別の表現をすれば「用途」や「解決したい課題」だね。ECサイトの運営側からすると、単に「商品を売っている」部分もあるんだけれど、お客さまには必ず「利用目的」がある。ここを押さえたいよね。

ネッタヌネッタヌ

「ドリルが欲しいのではなくて、穴を空けたい」みたいな話ですね。

石田

自社の商品の「利用目的」がわかると、お客さまへの提案の「解像度」を上げられるんだよ。提案の解像度が上がれば、集客する対象顧客も明確になる。つまり同じ「利用目的」を抱えていると思われる顧客層にアプローチをすれば良い、という発想につながる。ターゲットに近いお客さまを効率よく集客できる可能性が高くなるわけだ。

ネッタヌネッタヌ

「集客のコツ」って、てっきり集客導線の話だと思い込んでいましたが、「お客さまの解像度」を上げる話なんですね。今やっと気づきました。

石田

そのとおり! さっきも重要なこととして伝えたよね。集客導線は結局いくつかに限られる。大切なのは「やり方」「How(どのように)」だということ。そして、そのためのキーワードになるのが「解像度」なんだよね。

ネッタヌネッタヌ

なんだかスッキリしました!

EC内製化 お客さまの解像度を上げる ECMJ 人財育成
ユーザーへの解像度を上げることで、集客すべき顧客層や提案が明確になる

まとめ

石田

最後に今回のコラムを少しまとめるね。

「知ってくれた理由」を活用する際、アプローチ(実践策)とその成果の両面から強化するポイントを絞ると施策が決まりやすい。結局、集客導線は集約されるので「やり方」が重要。自社の顧客や競合のアプローチを研究した上で、テストして成果を測りたい。また、「生の声」や「問い合わせ」から「利用目的」を探し、お客さまへの提案の「解像度」を上げることが大切。集客が強いネットショップは同じ媒体を使っていてもここが違う。

こんなところだね。

ネッタヌネッタヌ

今回も勉強になったぁ~。

石田

実は今回のコラムで一番大切なのは「情報を蓄積する」ってところなんだ。多くの会社さんがここを十分に実施できてない。たとえば、実店舗のお客さまの声がEC担当と共有されていない。逆にECサイトへの問い合わせが実店舗に共有されていない。

ネッタヌネッタヌ

実店舗の情報とECサイトの情報って、共有することで何か良いことがあるの?

石田

もしかしたらそれがマーケティングのポイントになるかもしれない。次は「情報管理」について話そうか。

ECマーケティング人財育成は「EC事業の内製化」を支援するコンサルティング会社です。ECMJコンサルタントが社内のECチームに伴走し、EC事業を進めながらEC運営ノウハウをインプットしていきます。詳しくはECMJのホームページをご覧ください。

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