楽天が法人向けECに参入した理由とは? グループシナジーで周知拡大+差別化する「ビジネス割」の戦略
楽天グループでは、昨年12月より仮想モール「楽天市場」において、ビジネス向けメンバープログラム「ビジネス割」を開始した。現在は半年間の実証期間中だが、新規顧客獲得などに成果が出ているという。グループとしてのシナジーを武器として、中小規模の事業者を対象に利用を促進したい考えだ。
事業者向けECのニーズを満たす「ビジネス割」
業務用品の買い物で役立つ情報を提供
ビジネス割は、コピー用紙や文房具、OA機器、OAサプライなどといった事務用品から、現場で使える工具や部品まで、業務用品の買い物において、特典や役立つ情報などを提供するというもの。職場情報を登録すると、約1日でビジネス割のメンバーシップページが閲覧可能となる。

マーケットプレイス事業アカウントイノベーションオフィス(AIO)事業企画課の加藤雅人マネージャーは「アスクルやアマゾンビジネスなど、事業者向けECの需要が高まるなかで、『楽天市場』としては対応できていないのが従来からの課題だった」と明かす。
ただ、あくまで個人向けである「楽天市場」において、新たに法人用アカウントの仕組みを導入するのはハードルが高く、さらに「楽天市場」の強みである「楽天ポイント」も消費者向けに付与しているもので、法人が利用する場合は扱いが問題になってくる。こういったハードルがあるため、サービスの立ち上げが思うように進んでいなかったという。
法人向けビジネス需要高まる
しかし、近年はAIOのクライアントであるメーカーから、「法人向け販促を強化したい」「法人向けに広告を打ちたい」という声が増加。また、「楽天市場」のなかには、法人利用が多い出店店舗も少なくなく、たとえば、あるチョコレートを販売する店舗は、売り上げのうち30~40%は法人からの注文となっている。こうした店舗から「法人向けビジネスに特化した場を設けてほしい」という要望も出ていた。
会社情報を登録させる仕組み
同社では「楽天市場」出店店舗のほか、「楽天市場」とは無関係な企業の総務などへのヒアリングも実施。「『楽天市場は個人として使い慣れているので、法人向けのサービスがあれば使うことを検討したい』という声が多かったので、実験的に“場”を設けてみることにした」(加藤マネージャー)。
まずは法人アカウントの導入はせず、会社情報を登録すると割引などが受けられるサービスとしている。
ターゲットは中小規模の事業者
ただ、法人アカウントではなく、稟議の機能なども設けていないことから、購買管理の厳しい大企業の利用は想定していない。ある程度融通がきく、中小企業や個人事業主がターゲットだ。

加藤マネージャーは「『楽天市場』が法人向けEC市場においてどれだけ戦えるのか。あるいはどういう人なら『楽天市場』で買ってくれるのかが明確に見えてないので、そこを明らかにしていくのが実証実験の目的。どのくらいの規模の、どういった業種の事業者が使ってくれるのかを明確にすれば、楽天としての勝ち筋なども見えてくる」と話す。
大都など4店舗で「ビジネス割」開始
現段階でビジネス割の対象となる「楽天市場」店舗は、オフィス用品・サプライ用品は、楽天が運営する「Business Supply Shop」、衛生・福祉用品は楽天運営の「Pro Lab. & Healthcare Shop」、オフィス家具はネットフォース運営の「LOOKIT」、工具・建設用品は、大都が運営する「DIY FACTORY」の4つとなる。

このうち、2つは楽天の直営だ。「やはり(直営店は)こちらとしてもお願いしやすい部分があるので、実験期間中はそういう店舗があった方がいいと判断した」(加藤マネージャー)。
とはいえ、商品のバリエーションや価格帯、配送スピードなどを考慮すると、直営店だけではわからない部分も多いことから、請求書払いに対応した「LOOKIT」と「DIY FACTORY」も対象とした。ただ、家電がカバーできていないほか、飲食品なども商品数が足りないことから、実験期間中に対象店舗を増やしたい考えだ。
特に「DIY FACTORY」の大都とは「法人向けECについて、5年ほど前から話をしていた」(同)。同店は工具や塗料、建材などを扱っていることから、法人からの注文はもともと多いが、「ビジネス割」が始まってからの3か月で、新規顧客の割合がかなり増えており「これまでリーチできなかった顧客が獲得できているのではないか」(同)という。
グループ内の連携で周知拡大
「ビジネス割」で法人向けECに参入した楽天グループ。新規顧客獲得などに成果が出はじめているとはいえ、課題となってくるのはサービスの周知だ。
まず、進めているのが他のグループサービスとの連携。マーケットプレイス事業アカウントイノベーションオフィス(AIO)事業企画課の加藤雅人マネージャーは「たとえば、『楽天トラベル』には『総合出張管理サービスRacco』がある。これはいうなれば『B2B版楽天トラベル』なので、『出張は楽天トラベル、会社の備品も楽天市場』というような環境が作れれば」と話す。

楽天トラベルだけではなく、楽天銀行の口座を保有している個人事業主や、「楽天ペイ」決済端末を導入している飲食店にメールを送るなど、グループと互恵関係がある企業のなかでのターゲット層にリーチする。
外部企業とも連携
もう一つ検討しているのは、エアコンクリーニングやハウスクリーニングといった企業との連携。個人事業主や小規模事業者の顧客が多いことから、こうした外部企業とも連携し、ビジネス割を周知していく。
「法人版SPU」で差別化
強い競合サービスと比べるとビハインド
加藤マネージャーは実証実験の成果について、「メンバーの登録数は、目標に若干届いていないが、購買金額は高いので、メンバーを増やせばライフタイムバリュー(LTV)は期待できるのではないか。また、店舗に送客するなかでの新規率も思ったより高い数字が出ている」と評価する。
ただ、先行する法人向けECはすでに多くの顧客企業を抱え、サービスも充実している。たとえばアスクルの場合は、2000円以上の注文で送料が無料であり、最短当日に届く。1400万点以上の商材を備え、365日以内であれば返品・交換が可能となっている。
「楽天市場」の場合、「3980円以上の注文で送料無料」という「送料無料ライン」には多くの店舗が参加しており、さらには出荷代行サービスとして「楽天スーパーロジスティクス」を手がけてはいるものの、安い送料や短納期、返品・交換などのサービスはあくまで店舗に付随するもの。「楽天市場」でも「最強翌日配送」といった仕組みを整えてはいるが、たとえば「アスクル配送スピードを競う」となると、現時点では分が悪いのも事実だ。
楽天の武器はグループシナジー
では、楽天が手がける法人向けECの強みはどこになるのか。加藤マネージャーは「グループが手がけるサービスの多さだろう。同じ会社でグループのいろいろなサービスを使ってもらい、『法人版SPU』ができることだ」と話す。
たとえば、楽天モバイルで法人契約しているアカウントが「楽天市場」で商品を購入すれば、ポイントはプラス4倍になる。さらには、「楽天市場」で開催される「楽天スーパーセール」や「お買い物マラソン」との連携、AIOのクライアントであるメーカーとの連動、法人への販促を強化するなど、グループシナジーを武器に競合と差別化していきたい構えだ。
もちろん、価格も重要にはなってくるが、法人向け販売の場合は「多少高くでもいつも買っているところで買う」という傾向も強い。「顧客基盤を作るためのトラフィックビルダーが大事になってくる。つまり『何でも品揃えする』というよりも、高頻度で購入されるアイテムを、できる限り安価で買いやすい形で提供することで囲い込む。そうなれば、『ついで買い』も誘発できるのではないか」(加藤マネージャー)。

商品点数は10万点を見込む
商品数は約6万点。実証期間中には10万点まで増やしたい考えだ。加藤マネージャーは「業務用エアコンの設置や厨房機器の設置など、役務を手がける店舗も『楽天市場』にはあるので、そういったサービスを提供することで競合と差別化していきたい」と展望を語る。
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