日本ではアマゾンジャパンが生鮮食品などを注文から最短4時間で配送する「Amazon Fresh(アマゾンフレッシュ)」を4月にスタートし、生鮮食品の即配サービスに注目が集まっています。

米国では2007年に始まった「Amazon Fresh」ですが、食品などの即配サービスにGoogleも参入するなど、食品のネット通販利用が右肩上がりで増えているそうです。

2016年に530億ドルだった食品関連のEC市場は2022年に拡大すると予測されている米国の食品EC市場。米国で開かれた大規模ECカンファレンス「Shoptalk」の講演内容などを踏まえ、食品EC市場の現状などを解説します。

食品EC市場は2022年には2016年比3倍に拡大

米国では日用品や食料品の買い物がとにかく面倒。国内外の出張や旅行で出かけた際、地元のスーパーに出向くのが僕の趣味なのですが、米国の都市部では「嗜好品よりも日用品を手に入れる方が難しいな……」と感じます。

サンフランシスコに滞在した今回、住宅街に近いエリアでもコーヒーショップを5店舗通り過ぎてやっと小さなグローサリーストアを1店舗見つけることができたような状況。

しかも、その店で扱う商品は「全てオーガニック」「ちょっと高め」、もしくは「ベーシックで安め」かの二者択一状態。「これが本場の差別化戦略か……」と思ったほどです。

このような買い物環境の米国ですから、食品に関する「Shoptalk」のセッションは注目の的。僕も「食料品をECで購入するか」というテーマを興味深く聞きました。

日本でも「Uber Eats」(ウーバーイーツ、提携レストランのグルメを宅配するサービス)や「Amazon Fresh」が展開され、さまざまなメディアで記事が紹介されるなど、日米ともに食品の即配サービスには注目が集まっています

2016年は530億ドルだった食料品などのEC市場(米国)は、2022年には1770億ドルと2016年比約3倍まで拡大する見通しです。また、EC化率は4.3%(2016年)から12.0%(2022年)にまで増え、ECで食料品を購入するケースが拡大していくと予想されています。

アマゾンvsグーグルなど生鮮食品の即日ECサービスの市場規模が拡大する米国市場のいま
左の表が食料と飲料、右側の表が消耗品カテゴリを合計したECの売上予測(筆者がShoptalkの会場で撮影)

米国では即日配達サービスのECがしのぎを削る

「Amazon Fresh」がいち早くリリースされた米国では、さまざまな食料品の即配ECサービスがしのぎを削っています。

サービス名会員登録必須?メンバー費用生鮮食品配達費用
Amazon Fresh
(年会費299ドルで利用できる生鮮食品の即日配達サービス)
プライム会員月額$10.99 + Fresh会員月額 $14.99最短同日配送。$40以上で送料無料。それ以下は送料$9.99
Google Express
(マーケットプレイス形式の食品や日用品を数時間で当日宅配するサービス)
×月額$10もしくは年間$95×最短同日配送。各ストア会員は$15もしくは$35以上で送料無料。それ以下は$3追加。非会員は$4.99以上で配達してくれるが、送料は別途必要。
Instacart
(買い物をする人とスーパーマーケット、配達者をネット上でマッチングし、商品を最短2時間で届ける仕組みを提供する)
×月額$14.99もしくは年間$149(初年度$99)最短1時間配送。最低$10の注文から。会員は$35以上で送料無料。それ以下は送料$9.99別途必要。非会員は別途計算。また、注文が集中している時間帯は別途追加費用が発生
Shipt
(主要小売業者と連携し、アプリを通じて食料品を当日配送するサービス。友人宅など、配達先指定も可能)
月額$14もしくは年間$99(年間契約だと$25分の初回注文が無料に)最短同日配送。$35以上で送料無料。それ以下は送料$7別途必要

「Amazon Fresh」以外はショッピングモール形式を採用。サービス利用者の近くのスーパーから商品をピックアップし、手元に商品を届けてくれます。

気になるのは商品価格。以前、シカゴのTargetで購入したバナナ1本の値段は$0.19でしたが、「Instacart」内のTarget(ディスカウント百貨店チェーン「ターゲット」などを展開する大手小売業者)は1本$0.19で、実店舗と同じ値段。

「Shipt」は「店内と値段が異なる場合があります。代わりに利便性を提供しています」といった主旨の説明文を記載していますが、他のサービスと比較して格段に高いというわけではないようです。

アマゾンvsグーグルなど生鮮食品の即日ECサービスの市場規模が拡大する米国市場のいま
Targetは実店舗と価格を合わせていました(※シカゴで買ったバナナのレシートはこちらの記事をご参照ください)
アマゾンvsグーグルなど生鮮食品の即日ECサービスの市場規模が拡大する米国市場のいま
Instacart内のWhole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)のページ
アマゾンvsグーグルなど生鮮食品の即日ECサービスの市場規模が拡大する米国市場のいま
Instacart内のWhole Foods Marketで販売されているバナナなど
アマゾンvsグーグルなど生鮮食品の即日ECサービスの市場規模が拡大する米国市場のいま
Instacart内のWhole Foods Marketは、他と比べて値段は高いものの鮮度は抜群。レジは混雑しているので、運んでくれるとなると嬉しいサービスです

「米国に住んでいる人は外食が多いのでは?」と思っていたのですが、自宅で食事をするケースも多いようです。

食料品の買い物にどれだけお金を費やすかという調査結果では、25歳~34歳の年間平均買い物金額は3009ドル。同年代の平均年収は5万232ドル(National Association of Colleges and Employers調べ)なので、自宅での食事に費やす金額は小さな数字ではないと感じました。

また、25~34歳はすでに20%ほどがECで食料品を買ったことがあり、今後使ってみたいという回答を含めると約5割が食品EC利用の意向を示しています。

アマゾンvsグーグルなど生鮮食品の即日ECサービスの市場規模が拡大する米国市場のいま
白が実際に利用した割合、青が今後使ってみたいと回答した割合。25~34歳の利用意向が最も高い(筆者がShoptalkの会場で撮影)

「Shoptalk」では、「Amazon Prime Now」のサービス責任者も登壇。サービスを利用する消費者メリットを次のように説明していました。

「Amazon Prime Now」は、生活必需品を手に入れるのに生活者の時間を消費することなく、家まで商品を運んでくれる。「Amazon Prime Now」は自分の時間を買い、したいこと、しなければならないことに集中できる環境を作ることができる。

アマゾンvsグーグルなど生鮮食品の即日ECサービスの市場規模が拡大する米国市場のいま
「Amazon Prime Now」のサービス責任者によるセッション(筆者がShoptalkの会場で撮影)

アメリカ在住の知人に話を聞いてみると、休日の予定を詰め込んでしまった時、家で仕事に集中したい時、また雨の日や体調が悪く外に出たくない日などに、「Amazon Fresh」を利用するケースがあるとのこと。

また、小さな子供がいる、介護をしているといった家庭などの活用も進んでいきそうということです。

米国は広大な土地を有しているため、都市部の一部を除いては日本のように徒歩圏内にコンビニエンスストアが存在しているケースはほとんどありません。そのため、こうした食料品などの即日配達サービスを利用したいというニーズが高いのでしょう。

食料品や日用品の即日配達サービスに関するECは、地域性や実店舗の販売網などが大きく影響するため、日本とは異なる発展を遂げていくことかと思います。

また、米国では日本と同様に、コンビニの商品配達サービスが大都市を中心に展開されています。7-Eleven, Incが1年間で米国内店舗を207店も増やすなど、販売網も徐々に整備されつつあります。

今後どのようにコンビニや即時配送サービスのECが展開を見せるのか。生鮮食品はプレミア商品と普段使いの商品どちらが注文されるのか、ビジネスモデル自体真似しやすいだけに、どの点で勝敗が決まるのか――などなど、個人的に注目していき、日本のECの研究材料にしていきたいと考えています。

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野間 和知

株式会社フューチャーショップ 事業戦略部

野間 和知(のま・かずとも)

株式会社フューチャーショップ 事業戦略部

大阪府出身。早稲田大学人間科学部卒業後、通信会社に勤務。その後、クラウドブーム直前のデータセンタ事業者でサービス企画や政府に対する提案資料作成などを担当。

1年間台湾で過ごした後、2012年7月に株式会社フューチャーショップへ入社。マーケティングや広報、データ活用を担当。「いいコマースとは何か?」を考えるブログ「ヒトテクラボ」の運営も行っている。

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