Digital Commerce 360 2021/6/10 7:00

AmazonはEC売上高トップの企業ですが、返品件数でもトップであることは、あまり知られていません。返品件数で群を抜いているAmazonが、返品のオペレーションでも常にリーダー的存在なのは、返品におけるカスタマーエクスペリエンスで、最も重要な3つの「C」を理解しているからです。

3つのC:「コスト」「コミュニケーション」「コンビニエンス」

1つ目の要素は、無料返品(コスト)です。「Doddle Parcel Services」(編注:返品システムを提供する英国の会社)の依頼を受け、2021年2月に「YouGov」(編注:英国のデータ分析会社)が実施した調査では、66%の消費者が「無料での返品を希望する」と答えています。加えて、返品時にEC事業者から提供してほしいサービスのなかで、「無料の返品サービス」がトップになりました。

また、消費者は無料返品を望んでいるだけではなく、返品手数料を請求されることを非常に不快に感じています。回答者の57%は、「商品を返送した際に返金額から手数料を差し引くような小売事業者での買い物は、今後考え直す」と答えています。

返品コストの次に多くあがった要素は、コミュニケーション(53%)と利便性(50%)。半数以上の人が「返品手続きの際の連絡や確認がしっかりしている(小包の追跡、受領確認、返金情報など)」ことと、「返品するのに便利な場所がある(近所の店、郵便局など)」を高く評価しています。

ここで、Amazonの返品手続きについて考えてみましょう。Amazonでの買い物は、理由に応じて無料で返品できます。便利な返却場所も用意されています。基本的に、返品のためにラベルを印刷する必要もありません。また、返品商品を送った後、オンラインで返品や返金の状況を簡単に確認できます。

Amazon.co.jpの場合の返品プロセス例
Amazon.co.jp専用アプリを利用した返品プロセス例(画像:アプリから編集部がキャプチャ)

さらに、今回の調査では33%の消費者が「今後の利用を考え直すほど煩わしい」と回答したカスタマーサービスへの連絡について、Amazonでは一切必要ありません。そして、返品プロセスはほとんどデジタル化されています。

「C」から「D」へ

消費者からの評価やレビューが可視化されることを考えると、あまり積極的になれないかもしれませんが、「コスト」「コミュニケーション」「コンビニエンス」という3つの「C」を活用するには、デジタルの「D」をめざす必要があります。

Amazonが成功した返品のオペレーションを、他の小売事業者はどのように再現できるでしょうか? ゼロから始める必要はありません。デジタルの返品プラットフォームを使えば、消費者が望む自動化されたコミュニケーションと可視性を提供することができます。

また、全米の輸送業者と提携しているデジタルプラットフォームを利用すれば、小売企業とその顧客は、何千もの便利な返品場所を活用できるでしょう。

その場合、返品は必ずしも無料である必要はありません。返品を無料にするかどうかは、商品ごと、あるいは顧客ごとに判断する必要があるでしょう。そして、デジタルプラットフォームのデータがあれば、無料返品の実際の価値とコストをよりよく理解することができます。

たとえば、無料返品を実施した場合、返品をした顧客は、返品費用を支払った顧客よりも再購入する可能性が高いのか、また、その差は小売事業者が追加費用を支払う価値があるほど大きいのか、といったことがわかります。このようなインサイトは、小売事業者が憶測で対策を練るのではなく、具体的なデータを用いて返品ポリシーを改善するのに役立ちます。

Amazonは素晴らしい返品オペレーションを提供していますが、もっと良い方法はないでしょうか? 今のところAmazonは、マーケティング、アップセル、顧客維持のために、返品時のコミュニケーションという重要なタッチポイントを活用していません。これは機会損失と言えるでしょう。

デジタルプラットフォームを活用すれば、あなたのビジネスもAmazonと同様の返品サービスを提供することができます。さらに一歩進んで、この種のプラットフォームが提供するインサイトとデータを利用して、返品を通じたさらなるコンバージョンと顧客のロイヤルティを促進することをおススメします。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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