Digital Commerce 360[転載元] 2022/9/29 9:00

米国のEC専門誌大手『Digital Commerce 360』と調査会社のBizrate Insightsによる共同調査では、オンラインショッピングを利用するユーザーにとって送料無料が重要であることが数年前からわかっています。

ECサイトを利用する理由トップは「送料無料」

送料無料がネット上で話題になった時期がありました。2011年にL.L.Beanが打ち出した「すべての注文送料無料」がきっかけでした。現在のL.L.Beanでは、50ドル以上購入するか、ロイヤルティプログラムに参加した場合のみ送料が無料になるので、送料無料を永遠に続けるというわけではありませんでした。

ただ、Nordstromが2011年に送料無料を拡大したことによって他の多くの小売事業者が追随。送料無料がオンラインショッピングに浸透していったのです。

実際、『Digital Commerce 360』発行のデータベース「北米EC事業 トップ1000社データベース 2022年版」を見ると、小売事業者の74.4%が何らかの形で無料配送を実施。20.4%はすべての注文を無条件で無料にし、45.1%は一定額を超えると送料無料になるようにしています。また、事業者の14.5%が、ロイヤルティプログラムに加入していることを送料無料の前提条件としています。

『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsの調査は、長年にわたって送料無料の重要性が示してきました。2022年1月には、オンライン通販利用者1108人に、小売事業者のECサイトで注文するきっかけとなる可能性が最も高い特徴条件について聞いたところ、

「送料無料」が76%でトップでした。これは、適正価格(73%)、在庫のある商品(54%)、商品の品ぞろえとブランドへの信頼(同率53%)よりもさらに高い数値です。

ECで商品を購入する際に決め手になるサイトの特徴や条件(出典:『Digital Commerce 360』/Bizrate Insightsがオンライン通販利用者1108人を対象に実施したしたコンバージョン調査)
ECで商品を購入する際に決め手になるサイトの特徴や条件(出典:『Digital Commerce 360』/Bizrate Insightsがオンライン通販利用者1108人を対象に実施したしたコンバージョン調査)

送料無料が、消費者の購入先を決める

2021年のホリデーシーズンを前に実施した調査でも、購入先の選択について同様の質問を行いました。「送料無料」がトップとなり(66%)、「価格競争力」(60%)、「商品の在庫」(53%)、「配送スピード」(46%)、「過去の全体的な体験」(42%)が続きました。

送料無料は、オンラインショッピングを利用するユーザーに深く浸透しており、小売事業者とオンライン通販利用者の双方にとって、商品購入を検討する上で重要な意味を持ちます。

『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsでは、Amazonプライムのサービスが会員になっている消費者の基準になっていると考え、オンライン通販利用者1097人を対象に行った送料無料に関する調査では、Amazonプライム会員の割合を調べました。その結果、回答者の67%がAmazonプライム会員でした。

加入しているロイヤルティプログラム(出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施したオンライン通販利用者1097人を対象に実施した調査)
加入しているロイヤルティプログラム(出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施したオンライン通販利用者1097人を対象に実施した調査)

消費者はプライム会員になると、ある種の期待を抱くようになるようです。興味深いことに、商品が数日以内に届くことを期待する配送スピードにユーザーの37%が期待を抱いています。

また、2つの小売事業者から買い物を選択する場合、より速く出荷する事業者を選ぶ傾向があります(35%)。3人に1人は、他のオンラインショップでより多くの商品が無料で配送されることを期待しています。

Amazonプライム会員になったことで起きた、オンライン注文の配送に関する認識や期待の変化(出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施したオンライン通販利用者1097人を対象に実施した調査)
Amazonプライム会員になったことで起きた、オンライン注文の配送に関する認識や期待の変化(出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施したオンライン通販利用者1097人を対象に実施した調査)

「過去6か月間のオンライン注文のうち、Amazon以外での注文で送料が無料になったのは何パーセントですか?」という質問に対し、過去の数字を再確認すると、消費者はオンラインショッピングの際、常に送料無料を求めることがわかりました。

Amazon以外で送料無料になった割合(2022年 vs. 2021年 vs. 2020年)

  • 50%以上:69% vs. 68% vs. 70%
  • 50%以下:31% vs. 32% vs. 30%

もちろん、すべての注文が送料無料になるわけではないことは、誰もが知っていることです。

しかし、オンライン通販利用者が、送料を払うべきと考える理由は限定的です。その理由を知ることは、小売事業者にとって有益であり、送料が許容されるタイミングを知る上で役立ちます。

ECサイトでの買い物で送料を負担しても良いと思える理由について、「送料無料でなくてもその商品が欲しい」と41%が回答しています。

注文に関する料金を見て納得がいくものであれば、購入を決めるユーザーは32%。26%は「カートのなかの商品数が足りないから」と答えました。

一方、ユーザーの19%は送料よりも大きい商品割引を受けたときに送料を支払っています。また、プライベートブランド商品では、商品を購入する際の選択肢が1つしかない場合もあります。スピードも重要であり、調査対象者の18%が当日配送を希望しています。

ECで送料を負担しても良いと思える理由(出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施したオンライン通販利用者1097人を対象に実施した調査)
ECで送料を負担しても良いと思える理由(出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施したオンライン通販利用者1097人を対象に実施した調査)

プライム会員と非会員を比較すると?

Amazonプライム会員と非会員を比較すると、当日配送の期待値に大きな差が見られました(35% vs. 6%)。一方、コスト面では、ほとんどの要素に大きな差は見られませんでした。

また、ある商品が1つのサイトでしか買えないという点では、Amazonプライム会員と非会員の間で13%の差がありました。

非会員は、商品購入の決め手となる「どうしても欲しい場合、送料無料ではない商品を買う」確率が、プライム会員より8%低いことがわかりました。

購買行動に影響を与える要因について(調査の母数は2022年のAmazonプライム会員737人、非会員355人、アンケート回答者1092人)
購買行動に影響を与える要因について(調査の母数は2022年のAmazonプライム会員737人、非会員355人、アンケート回答者1092人)

送料無料を求めるニーズは何年も前から大きな変化はありません。小売事業者は毎年、配送ポリシーを見直すことを強くお勧めします。この決定は、小売事業者の認知に影響を与えます。調査データを見てもわかるように、コンバージョンを促進する重要な要因となり得るのです。

認知はそう簡単には変わりません。ですから、準備を整え、シーズンを通して送料無料を戦術的に活用することで、収益を確保し、消費者の満足度を高めることができ、すべてにおいてWin-Winとなることができます。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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